坊主と占い師
久しぶりの更新ですけど短いです
30分ぐらい待って、ようやくシスター・アーミーのテントに入る事が出来た。
(アラビアの風のテントにシスターの格好をした女性がいるとは何ともシュールだよな)
シスター・アーミーの着ている修道着は素材からして所謂パーティーグッズだと思う。
つまりシスター・アーミーは見る人が見ればかなり胡散臭い格好をしていた。
「山っち、私達の番だよ。それじゃ行こ」
「それで何を占ってもらうんだ?」
シスター・アーミーの店はアミューズメントパークにある為か基本的な料金はきちんと表示されている。
恋愛運、相性占い、仕事に人間関係からペット占いなんてのもあった。
「ダチに頼まれてさ、相性占いを試したいんだよね」
「相性って誰と誰のだよ?第一相性なんて占いで分かるのか?」
ぶっちゃっけ、相性なんてのは本人次第だから占いじゃ分からないんだけど。
「私と山っちの相性に決まってるじゃん」
「今更かよ。バイトの先輩、後輩に相性占いはいらないだろ?」
それにシスター・アーミーからは人の運命をリーディング出来る程の力は感じられない。
「違う!!恋人としての相性。本当に鈍いんだから」
「鈍いってなんだよ。それで占いには何を使うんだ?…タロット?」
アラビアの風テントでシスターがタロット占いって宗教とか背景とかを無視しまくってるよな。
占いで連想する物をかき集めてたって所か。
「それでは次のお客様、椅子に腰を掛けて下さい」
アミューズメントパークの係員に促されて俺と麗奈は椅子に腰を掛ける。
シスター・アーミーは20代前半ぐらい、切れ長の目の美人だった。
お約束の様に名前、生年月日、星座を確認して占いへ。
「お2人の相性は恋人としても友達としても最高のものですね」
まあ、占いで悪い事を告げる占い師ってのは以外に少なかったりする。
実際に占い師に求められるのはリーディング能力よりもコミュニケーション能力、悪い結果を告げても相手を不快にさせない能力があればリピーターがつくらしい。
「何か気を付ける事とかありますか?」
珍しく敬語の麗奈が真剣な表情で質問をしている。
「気の強い貴女と包容力の強い彼氏の相性は抜群です。ただ貴女は我が儘で彼氏を振り回し過ぎない様に気を付けて下さいね」
そりゃテントに入ってからの麗奈と俺の絡みを見れば分かるって。
「はい、ありがとうございます。山っちもアーミーさんに聞きたい事とかある?」
「シスター・アーミーさんはカトリックですか?それともプロテスンタトなんですか?どちらの宗派の方ですか?」
キリスト教は宗派によって過激な所もあるので関わる上で確認は大切。
「私はただのシスターですからプロテスンタトもカトリックもありませんよ」
(分かってたけど本物のシスターではないと。背景に宗教組織がいる確率は低くなったな。まっ本物のシスターがアミューズメントパークで占いをする訳がないか)
「そうですか。麗奈行くぞ!!次の人が待ってるみたいだしな」
「山っち待ってよ。占いの結果嬉しくなかった?それともアーミーさんを疑ってるの?」
「ある程度のリーディング能力はあるな。でもちゃんとした修業をしてないから力の使い方を分かってないな。…麗奈、俺の側から離れるなよ」
次の客からだろうか。
俺はかなり濃い霊障を感じた。
―――――――――
突然、山っちが真剣な表情になって私の前に立った。
いつもの優しい顔とは違う怖いぐらいに厳しい表情、初めて見る筈なのに、何時かどこかで見た事がある。
「山っち、いきなりどうしたの?」
「どうやら噂の占いで余計なモノまで呼び寄せたみたいだ」
山っちが見つめる先には人形を抱えた女の人がいた。
「早く!!あの球をちょうだい!!この娘が泣いてねだってるの!!」
女の人は髪を振り乱して離れた所からでも普通じゃないのが分かる。
「山っち、あの人、何かやばくね?」
「人形ってのは霊が憑きやすいんだよ。読み方を変えればヒトガタだからな。あの人は人形に憑いてる霊から霊障を受けてるんだよ」
そう言えば、山っちもお坊さんな筈。
「アーミーさんなら何とか出来るんじゃないの?」
「リーディング能力と祓う力は別物なんだよ。麗奈、気分は悪くないか?」
山っちが真剣な表情で私を見つめてくる。
「少し寒気はするけど。…山っち目が大きく開いた所初めて見た」
いつも山っちは細い糸目で優しく微笑んでいるけど、今の山っちは細い目を思いっきり見開いていた。
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