使えない使い魔と新しいお願い
山田さんが1話だけなのに日刊8位になってました。
まぁ全員ザコを見た人なんでしょうがビックリしました。
「山っち、この虫は何?」
使い魔の卵に俺の血がついた所為で何かが召還されたらしい。
本来は喚びたい者に対応した魔法陣を構築した後に術者の血を垂らして召還するんだけれども
「この可憐で可愛い妖精の僕を捕まえて虫だなんて、マスターこの女は礼儀を知らなすぎます」
俺の頭の上で体長10㎝ぐらいの妖精が喚き散らしている。
「山っち、きっとこの虫は何の役に立たないよ。早く元の世界に戻したら?」
「また虫って言ったー。僕の名前はプリム。それに僕だけじゃなくマスターにまでそんな口を聞くなんて信じられない。僕がいたらタンスの裏とかに物が落ちた時に便利なんだぞ」
まあ、妖精種は基本的に力が弱いから仕方ないか。
「うわっダッサ。妖精なのに魔法とか使えないの?」
「う、うるさい。仲間さえいれば幻術でアンタなんか迷子にしてやるのに」
「でも虫は1匹じゃん。使い魔じゃなく使えねー魔に名前を変えれば」
「マスター、あの乱暴礼儀知らず女が僕をいじめます。マスター、送還なんてしないですよね」
妖精はわざとらしく俺の目の前で目を潤ませている。
「確か妖精って仲間と遊ぶのを好む種族じゃなかったっけ?元の世界に戻った方がいいんじゃないか?」
「嫌です、最近の人間界で僕達妖精は可愛いからって大人気みたいで召還される確率が高いんですよ。でもみんな変な服を着せられて変なポーズをさせられるんですよ」
妖精は力も魔力も弱い分、召還に必要とする霊力も維持に必要な精気も一般人レベルでも問題がない。
「うわっそれって着せ替え人形扱いじゃん。早くどっかのオタに召還されフィギュアにしてもらいなよ」
麗奈の言う通り、妖精種はある趣味の人達に大人気だ。
「みなさーんここにいる鬼女が僕の妖精権を剥奪しようとしていますー。助けて下さいー」
「とりあえず戻るぞ。こんな所で騒ぎを起こしたら面倒なだけだぞ」
坂崎は組織の仲間がうまく処理してくれるだろう。
――――――――――
「それで麗奈は何でそんなにその娘の事が気にくわない訳?」
「だってそいつ山っちに助けてもらっただけの癖に山っちに懐きまくってるんだよ、ありなくね?」
私が親友の美保に愚痴っているのは山っちの使い魔もとい役立たず妖精の事。
流石に妖精なんて言える訳もないから、山っちが強引にナンパされていた娘を助けた事にした。
「それを言ったら麗奈もただのバイトの後輩でしょ?まったく元彼が浮気した時は怒らないでさっさっと別れた癖に山田さんに他の娘が懐いただけで焼き餅を焼くかね」
「焼き餅じゃなく、そいつにむかついんたんだから仕方ないでしょ。第一山っちは誰にでも優しすぎるんだよ」
使えない使い魔なんて意味がないのに。
「やれやれ、山田さんに彼女が出来た日には麗奈はどうなるのやら。山田さんって結構人気あるんだよ」
山っちに彼女か…。
「まっ麗奈の理想はダンスがうまいイケメンだから山田さんは除外だしね」
確かにそうなんだけども、最近は妥協も考えているんだけど…
私が悩んでいると同じクラスの健児が声を掛けてきた。
健児は見た目はイケメンだけど性格が軽すぎて信用できない。
前に殺人事件があった廃屋で悪ふざけをして幽霊に取り憑かれたのを山っちに救ってもらっている。
「麗奈、お願いがあるんだけど」
「デートもそれ以上も却下。てゆうかアンタと話している暇ないの」
健児は誰にでも好きとか愛してるか言うタイプ、正確には女の体が好きってやつ。
「用があるのはお前じゃなく山田さんにだよ。山田の兄貴にお願いがあるんだ」
「山田の兄貴?健児この間山っちにフルボッコにされたじゃん」
まさに手も足もでないって感じだったし。
「良いだろ。お前こそ兄貴を山っちなんて呼ぶんじゃねーよ」
「私は山っち許可をもらってるからいいの。で用事ってなに?」
「俺の婆ちゃんを助けて欲しいんだ」
そう言った健児の顔は普段のチャラさがなく真剣そのものだった。
――――――――――
「いらっしゃいませ…麗奈今日はバイト休みだろ?隣にいるのは彼氏か?」
「山っち冗談でも止めてよね。この間山っちにボコられた健児が話があるんだってさ」
健児君の話をまとめると、隣町に繋がる道路には100キロ婆さんって呼ばれるお約束の都市伝説があるらしい。
そしてつい最近健児はそれを見たとの事。
「それって夜でしょ?見間違いじゃないの」
「見間違いじゃない。あれは…あの人は絶対に俺の婆ちゃんだっ!!優しくて俺の大好きなバアバだ」
健児君はそう言うと泣き出してしまった。
でも…そう簡単に救えないんだよな。
健児君のおばちゃんを救う為に山田がとる行動は?
感想とかお待ちしています