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退魔士と使い魔の石

反響が大きかったの山田先輩の連載を開始です。

ザコを読んだ事がない人でも楽しめる様にがんばります

携帯に届いたメールを見て思わず溜め息を漏らした。


「使い魔の卵か。また面倒臭い物が入って来たな」


俺は都内の大学1年生であり実家は密教系の寺。そしてもう一つの顔は退魔士、悪霊化した霊を鎮めたり妖怪を退治するのを主な役割。

そして国際化が進んだ昨今、人や物と共に外国から人ならざる者も入って来ている。

故に俺達、退魔士も好むに関わらず外国の怪異とも向き合わなければいけない。


そして俺が所属する組織から届いた依頼が使い魔の卵と呼ばれている石の回収。

使い魔の卵が非公式のネットオークションに出品されある男性が落札をしたとの事。

使い魔の石、その石に所有者の血をたらすと使い魔が生まれてくる、それだけなら良いんだが…


「それでこれを落札したのは…教師か。ったく教師が、こんな胡散臭い物に手を出してどうすんだよ」


俺も教育学部に籍を置いている為、何やら情けない気持ちにさせられてしまう。


「それで、どこの学校の先生なんだ。…聖マリアンヌ学園って確か麗奈達の高校だよな」


藤川麗奈、バイトの後輩で高校1年生。

ヒップホップダンスが趣味でB系の服を好んで着ている。

どちらかと言うとお洒落とは無縁な俺とは縁遠い存在であるのだが何故か妙に懐かれていた。



――――――――――


「山っち、チース。今日も山っちの可愛い後輩の麗奈ちゃんと一緒に元気に働こー」


麗奈はバイト先のコンビニに顔を出すなり満面の笑顔で俺に挨拶をして来た。


「藤川さん、お客様がいらっしゃいますから言葉には気を付けて下さいね」


「うわっ、山っち乙女の健気な挨拶に酷くね?」

麗奈が子供みたいに頬を膨らませてむくれる。


―――――――――


バイトが終わると麗奈がいそいそと俺に近づいてきた。


「山っち、家まで送って行ってー。ほら暗い夜道を私みたいに可愛い女の子が1人で帰るのは危ないじゃん」


麗奈はダンスをしている事もあり引き締まった体をしているし、顔も美少女と言っても差し支えない。

ただ、目つきも性格もきつめな為に暗闇で襲われる可能性は極めて低いと思うが。


「ったく、自分で言うか?そういや麗奈お前の学校に坂崎って先生いる?」


「坂崎?化学の坂崎?山っち、止してよ。アイツは思い出すだけでもキモいんだから」


「おいおい、自分の学校の先生だろ?言い過ぎじゃないか?」


「だってアイツ女子を嫌らしい目で見てるんだよ。実験の時にわざと手を掴んできたりするしさ」


「やれやれ、俺も教育実習に行ったらこんな風に好き勝手に言われるんだろうな」


「山っち、うちの学校に来てよ。私が誰にも文句を言わせないからさ」


「実習中にお前が俺を山っち呼ばわりしないんなら考えとくよ」

「分かりました山田先生…プッ、ダメ山っちが先生なんて考えただけでも可笑しい」


「こらっ置いてくぞ。ったく一回乗せたら癖にしやがって」


数週間前に緊急事態があり、その時に麗奈を愛用のビックスクーターに乗せた事があったのだが、それ以来麗奈はバイトが一緒の時は俺に送りをせがむ様になっていた。


「ねえ山っち、坂崎って幽霊絡み?アイツ何かやらかしたの?」


麗奈も関わった緊急事態とは麗奈の友達が心霊スポットで悪ふざけをした所為で霊に取り憑かれてしまい、俺がそれを祓った事だ。


「違うよ。…その坂崎って先生に何かあったら教えてくれ、お礼に飯でもおごるよ」






「飯?山っち、そんなに私とデートしたいんだ。仕方ないなー」


言葉だけ聞けば可愛いんだがケラケラと笑う姿からは本気のほの字も感じさせない。


――――――――――


それから数日たったある日、やけに真剣な表情で麗奈が話し掛けてきた。


「山っち、変なんだよ。最近、坂崎の奴がモテているんだよ」


今まで嫌われていた先生がいきなりモテだしたか。


「坂崎先生は最近やつれてないか?」


「あっ、そうそう顔色は青白いし頬なんてコケちゃってさ。ますますキモいのに信じれない」


ビンゴだな、坂崎は使い魔の卵をかえしたんだ。

恐らく使い魔にチャームを使わせているんだろう。


「まずいな。この時間なら坂崎はアパートか。麗奈、今日は歩いて帰れ」


「坂崎は何をやらかしたの?山っち私を除け者にしようとしてもダメだかんね。それに普通知らない男が突然訪ねて来てもドアを開けないでしょ?」


「仕方ないか。坂崎は使い魔の卵をかえしたんだよ。モテているのは使い魔がチャームを使っている所為だ。そして使い魔は所有者の精気を餌とするんだよ、力の使い方を知らない奴がかえすと精気を吸いまくられて…衰弱死しちまう」


「でも山っちお坊さんだよね。その使い魔にお経とか効くの?」


「俺が結縁…縁を結んだ仏様は金剛夜叉明王様なんだ。元々はインドで鬼神と恐れられた存在、大丈夫だよ」


――――――――――


「今晩はー、坂崎先生いますかー?」


麗奈は妙に取り繕った顔で坂崎の部屋をノックした。


「あん?藤川じゃないか?こんな夜遅くにお前も先生の家に可愛がってもらいに来たのか?」


「悪いが使い魔の卵を回収させてもらいに来ました。…麗奈、俺の背中に隠れてろ」


「何だお前は誰がこんな素晴らしい物を渡すか。これがあれば俺を馬鹿にしていた生徒が俺に尻尾を振って近づいてくる、女子高生を食べ放題なんだよ」


「ったくその所為で死んだら意味がないでしょ。それに先生は生徒に手をだすんじゃなく、手を引いて導くのが役目じゃないですか」


「ふん、餓鬼が生意気を言いやがって。アリス殺っちゃいないさい」


「山っち、あれなにヤだ。怖いよ」


坂崎の背後から現れたのは青いエプロンドレスを着た金髪の少女。

ただし目はつり上がり口は耳元まで裂けていた。


「使い魔だよ、坂崎の欲望を吸って変異したんだ。悪いな、俺は背中に大事な後輩がいるんで手は抜きませんよ」


瞬間、山田が身にまとっている優しく温かな雰囲気が一変する。


「我、破の力を持ちて悪を砕かん。金剛夜叉明王呪 オン バザラヤキシャ ウン」


金剛夜叉明王の破魔の雷が坂崎の使い魔に直撃する、使い魔はただの石に変わり果て、坂崎も倒れ込んだ。




山っちは怪我もなく坂崎の使い魔を倒した。

それよりもショックだったのはいつも優しい山っちの厳しく怒った顔。


「山っち、嫌だよ。そんな顔しちゃ、山っちは笑顔が似合うのに」


何故か分からないが哀しくて涙が溢れ出す。

でもそんな私の頭を暖かい温もりが包んでくれた。

いつもの山っちが私の頭を優しく撫でてくれている。


「怖がらせて悪かったな。でも優しさだけじゃどうしようもない時があるんだよ。さて使い魔の石を持って帰るぞ」


山っちが使い魔の石に手をかけようとした瞬間、気絶していた筈の坂崎が包丁で山っちに切りかかってきた。


「渡さない、その石は俺のもんだ。学校の女も俺の物なんだー」


坂崎の包丁が山っちの指先を掠めたかと思うと、山っちの指から血が一滴、使い魔の石にこぼれ落ちる。

次の瞬間、石は温かな光を発した。


「はーい、呼ばれて飛び出てジャンジャーン。マスターこれからよろしくね」


これが私と山っちの間に割って入って来た小憎たらしい使い魔との出会いだった。


予定では妖怪退治や祓い話を中心にしていきます

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