素直な気持ち
進展させにくい
携帯が鳴った、あれほど言ったのに万知様だ。
「大君、大君。麗奈ちゃんへのバレンタインのお返しは買った?あっ私には何時もの手作りをよろしく」
「万知様、お電話は控えてくださいと言ったではないですか。きちんと麗奈の分も焼きましたよ」
「やっぱりその他の娘と同じ扱いをしている。きちんと麗奈ちゃんにはその他の物をつけなさい。これは命令だよ」
電話越しでも分かる万知様の呆れた態度。
「そう言われまして贈られた側の気持ちもありますし、その他と言われましても」
実際に俺からその他αを貰ったら麗奈は困惑すると思うんだが。
「大君、退魔だと大活躍なんだけどね。なんか麗奈ちゃんが欲しがっている物、大君があげたい物をあげればいいよ。これは命令忘れないよーに」
それだけ言い終えると万知様は電話を切ってしまった。
麗奈が喜ぶ物か。
確かに麗奈を喜ばせたいし、何だかんだで一番親しい異性ではあるんだけど。
―――――――――
我ながら思う。
何が悲しくてホワイトデイにバイトをしているんだろう。
「麗奈ー、山田さんに早く会いたいんでしょ。シフトからするともう少しだもんねー」
「み、美保な何言ってんの。山っちからのお返しなんて期待している訳ないじゃん」
「別に私はホワイトデイだからって言ってないよ。しかしあの麗奈が顔を赤くして否定するとはね」
むかつく、ニヤニヤと勘違いで笑っている美保がむかつく。
「よっ、お疲れさん。あっバレンタインありがとな」
山っちが私達に紙袋を手渡して来た。
なんだ、美保と同じか…。
「ありがとうございます。中見て良いですか?」
「ああ、だけどお客さんに見えない所で開けろよ」
美保がレジカウンターの下に隠れて紙袋を開けている。
「すごい、これって山田さんの手作りですか?」
「ああ、昔男の癖にお菓子作りが得意な後輩がいてソイツから習ったんだよ」
山っちの手作りクッキーは嬉しいけど、美保と同じ扱いか。
そりゃ私があげたチョコも美保があげたチョコも値段は似たり寄ったりの義理チョコなんだけどさ、なぜかその扱いが気に入らない。
そんな私に山っちがメモを渡してきた。
メモには"帰りにスクーターのメット入れを見ていけ"そう書かれていた。
バイトが終わり美保に適当な言い訳をして山っちのスクーターのサドルを開けるとそこには入っていたのは紙袋とメッセージカード。
カードには"麗奈だけ特別扱いをしたら気まずいからな。これを履いて頑張れ"って書かれていた。
「これって私が欲しいって言ってたスニーカーじゃん」
それは私がダンスする時に使いたかったスニーカー。
「もう山っちったら。照れ屋さんなんだから」
私がこのスニーカーを履いて早くダンスをしたい様な、でも履くのが勿体ない様な不思議な気持ちになっていた。
イ・コージ以上に進まないかも