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大和撫子からの依頼

「山っち、桜先輩なんとか退院できそうだって。怪我をした他のメンバーも順調に回復してるし。結局あの騒ぎって何だったろうね」


「偶然だろ?偶然同じチームの人が同じ時期に怪我をしただけだの話だよ」


もっとも順調に回復出来ているのは柘植さんが捕らえた子鬼を調べて呪を解いたのが一番の要因なんだけれど。


「あっ、黒宮萌華って覚えてるでしょ?今度はアイツが怪我したんだって、何もない所で転んで両足を骨折したらしいよ」


防がれた呪いは自分に跳ね返ってくる。

報告によると黒宮萌華は病院に入院したみたいだからベットの上で反省をして欲しい。


「それじゃ俺は帰るぞ。麗奈お疲れさん」


「山っち、今日体育の授業はマラソンだったんだよねー。可愛い麗奈ちゃんが疲労骨折とかしたら大変でしょ?だからー」


「ったく、そんな長ったらしく言い訳しなくても送ってやるよ」


麗奈の家に着くと玄関先に一目で高級車だと分かる黒い車が停まっていた。


「あっ、孝子姉ちゃん家の車だ。珍しいな…まさかね、山っちもう帰っていいよ。ほらっ早く帰って!!」


「おい、麗奈押さなくても帰るって」


何を思ったのか麗奈は俺が乗っているビックスクーターを押し始めた。


「相変わらずうるさい娘だね。孝子に爪の垢を飲ませてもらいなっ」


騒ぎに気付いたのか麗奈のお婆さんが玄関から出て来る、お婆さんの後ろから1人の女性が顔を見せていた。


「麗ちゃんは何時も元気なんですね。私も見習わなくてはいけませんね」


「た、孝子姉ちゃん、家に何か用事があったの?」


麗奈が孝子姉ちゃんと読んだ女性は雪の様に白い肌に長い黒髪。

服はクリーム色のジャケットにロングスカート、お淑やかな雰囲気を持った女性だ。


「ええ、ちょっとお婆様に用事がありまして。麗ちゃんにも会えたから来て良かったですわ」


「ほー、丁度いい所に坊さんがいるじゃないか。孝子あのお方がさっき話をしていたお坊さんだよ」


俺が軽く会釈すると孝子さんは深々と頭を下げてくる。


「ぜんっぜん丁度良くない!山っちはもう帰るんだし、孝子姉ちゃんも帰るんでしょ」


孝子さんは騒ぐ麗奈の脇をすり抜けて、俺の前に来るなり俺の手を握りながらこう言った。


「お坊様、どうか私にお力を貸して下さい」


不機嫌そうに頬を膨らませる麗奈、それを見てニヤニヤするお婆さん。


「孝子、お坊さんに家の中でゆっくりと話を聞いてもらいな。麗奈ちゃんとお坊さんにお茶をお出しするんだよ。分かったね」


――――――――――


藤川孝子さんは麗奈の従姉妹で都内の女子大の一年生との事。


「それで俺に何を頼みたいんですか?言っておきますけど小説やマンガみたいな真似は出来ませんよ」


「はい、実は私の友人の事でお願いがあるんです」


話をによると藤川さんと同じ女子大に通う友人が心霊現象に悩まされているらしい。

御祓いをお願いしたくても信頼のおける霊媒士や相場が分からないからお婆さんに相談に来たとの事。

そしてお婆さんは俺の事を無料で話を聞いてくれる僧侶がいると藤川さんに伝えたらしい。


「それでどんな心霊現象なんでしょうか?」


素人、特に若い女性が心霊現象と騒ぐ物は思い込みや作り話が殆ど。

話を聞けば本当の心霊現象かどうか分かるし、ここでそれが指摘出来れば一件落着となる。


「はい、その娘マンションで1人暮らしをしているんですが何時も誰かに見られている感じがしてたそうなんです。そしてこの間カーテンの隙間から部屋を覗き込む目を見たらしく、そのせいですっかり怯えてしまって」


「孝子姉ちゃん、それって覗き野郎かストーカーなんじゃないの?」


「でも麗ちゃん、そこのマンションは防犯体制がしっかりしているし、何よりその娘のお部屋8階にあるのよ」


窓には防寒や外を見る以外にも、あの世の者とこの世を隔たせる結界としての役割もある。


「うわっ、まじヤバッ!!山っち何か分かる?」


「その部屋と友達を見てみない限りなんとも言えないさ。宜しければ知り合いの僧侶を紹介しますが」


知り合いってと言っても組織の人間、この心霊現象は本物に違いないからだ。


「お恥ずかしながら私には自由に出来るお金があまりないんです。ですからご紹介頂いても満足な謝礼は出来ません」


麗奈の話によると、藤川さんの親御さんは大変厳しいらしくバイトを許していないらしい。


「それでしたら私のお札を差し上げます、窓の上に貼る様にお伝え下さい」


予想として考えられるのは、部屋が霊道つまり霊の通り道になっている、偶然会った友人を頼っているとかが考えられる。

それだけならあのお札で充分なんだけども。


「あ、ありがとうございます。絶対、友達に渡します。あの、もしご迷惑でなければ一度我が家にお茶を飲みにいらして下さいますか?」


そう言って藤川さんは折り目正しい所作で頭を下げてきた。


「なーんか山っち、孝子姉ちゃんに優しすぎじゃね?」


そして何が気に入らないのか不機嫌になる麗奈。


「お札ならお前にもあげただろ?それに麗奈の従姉妹だからあげたんだぞ」


「どうだか、孝子姉ちゃんと話す時の山っちデレデレしてキモイよ。さっき手を握られた時も鼻の下を伸ばしてたじゃん」


「そりゃそうだろうさ。孝子はどこかの礼儀知らずと違ってきちんとお礼を言うからね。この間、お坊さんから友達の分も頂いたんだろ?」


「初対面の孝子姉ちゃんと違って、私と山っちは仲良しなの」


「親しい仲にも礼儀ありって言葉を知らないのかい?お札をもらった上に焼き肉までご馳走になったんだろ?」


小気味良いぐらいに切り返してくるお婆さんの言葉に麗奈は二の句をつげないでいる。


「さて俺はこれでお暇しますよ。藤川さん何かあったら麗奈に伝えて下さい。微力ながらお手伝いをさせてもらいますので」


「山っち、話が長いー、ほらっ行くよ」



――――――――――


山田が麗奈に引きずられる様にして出て行った部屋には麗奈のお婆さんと孝子が残っていた。


「孝子、あのお坊さんをどう思う?」



「不思議な方ですね。暖かくて大きくて麗奈ちゃんが甘える訳が分かります」


その答えを聞いて麗奈のお婆さんは企む様な笑いを浮かべて孝子に問いかける。


「孝子、あの人とお見合いをしてみる気はないかい?」


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