山田さんとクラブ
作者はあまりクラブを知りません
「山っち、こっちこっちー。このショップで服を買うから」
何時もよりテンションが高い麗奈に連れて来られたのは雑然とした雰囲気の服屋。
「山っち、私が選んであげるからどんな感じの服がいい?」
どんなと言われても俺は服を買うときの条件さえ合えばサイズしか気にしていない。
「動きやすくてポケットが多ければ何でも良いよ」
不慮の事態に備えてお札や金剛杵は常備しておきたい。
「もうそんなんだからモテないんだって。それなら腿履きじゃなく…」
麗奈はバイトの時以上に真剣な目で服を選んでいる、当の本人である俺は完璧に蚊帳の外になっていた。
「麗奈ちゃんいらっしゃーやい。メンズコーナーで何してるの?」
麗奈に話し掛けてきたのは革ジャン、皮パン、鼻ピアスにモヒカンと迫力のある見た目とは裏腹にナヨナヨとした歩き方の男性。
「邦ちゃんおはよっ。今日は山っちの服を選びに来たんだ。山っちお洒落と無縁だからさ」
「お邪魔してます。藤川さんとバイト先が一緒の山田です」
軽く会釈すると邦ちゃんと呼ばれた男性が見つめていた。
「あら?あらあらー?良い男じゃないー。体格もがっかりしてるし…すごーいムキムキー」
何故か、邦さんは俺の体に触ってはしゃぎ始める。
「く、邦ちゃん!!何してんの?」
「だってーこの子、ムキムキで私好みなんだもーん。麗奈ちゃんの好みと違うんだから別に良いでしょ?」
「邦さんでしたよね、服を選んでもらうのは次の時にお願いします。それにレジでお客さんが待ってますよ」
その後、何故か不機嫌な麗奈をなだめながら買い物を続けたんだけども
「麗奈、このダボッとした服を着ろってか。似合わねえと思うんだけど」
麗奈が選んでくれたのは黒いパーカーにタボダボした黒いスウェット。
「大丈夫、ちゃんと動きますいしポケットが多いの選んであげたから。とりあえず試着、試着」
―――――――――
良いじゃん。
試着を終えた山っちを見た感想はそれだった。
「山っち、これでライブに来てよ」
着慣れないのか山っちは、どこか所在なさげ。
帰り際、邦ちゃんが私を手招きしてこう言ってきた。
「麗奈ちゃん、好みだなんだ言ってたらあの子とられちゃうわよ。ほら私みたいなのは初対面の人に白い目で見たり変な理解心で接してくる奴が殆どなのよ。でもあの子は普通に受け入れてくれて普通に話してくれたの。中々あんな良い男いないわよ」
山っちて、女の子以外からの評価は高いんだよね。
―――――――――
ライブ当日、クラブでの行動が不自然にならない為に俺は八木と待ち合わせをしていた。
「山田、山田か?なんだその格好は?お前にしちゃ趣味が良いけど違和感ありまくりだぞ」
「文句なら選んだ麗奈に言え。ったく誰が好き好んでこんな格好をするか」
違和感なら試着室で鏡を見た時から分かってんだよ。
「ちょ、ちょっと待て。お前麗奈ちゃんとはタダのバイト仲間だって言ってたじゃないか?何時の間にデートなんかする仲になったんだ?」
「仕方ねえだろ、麗奈の奴がダサい格好で来るなってうるさいんだよ。ったく自分でチケット押しつけて来た癖に」
俺が来て恥ずかしいなら知らない振りするれば良いと思うんだが
「お、お前だけなんでそんなに優遇されてるんだ?俺がどれだけこのライブチケット取るのに苦労したか分かるか?」
「知るか、それも事前調査班の役割だろうが。騒いでないで店に行くぞ」
「ちきしょー。チケットは必要ないなんて余裕こいてると思ったら…いやクラブこそ俺のマイホーム、違いを見せつけてやる」
八木がビシッと音がしそつな勢いで指をさしてきた。
「分かった、分かったから店に案内してくれ」
相変わらず騒がしい八木に連れて来られたのは普段なら絶対に興味すら持たないであろうクラブ。
「なんつーか騒がしい店だな。って八木どこ行くんだよ!!」
「知り合いの娘がいたからちょっと挨拶をしてくるわ。事前調査班には人脈が大切だからさっ」
ウロウロしていてたら不審に思われるので薄暗い店内を歩いて人気のない場所に移動する。
「あれ山田さん?クラブに来るなんて珍しいですね…あー、それで麗奈の奴、妙に気合いがはいってたんだ」
俺に話し掛けてきたのは同じコンビニでバイトをしている坂本美保、麗奈とはクラスメイトでバイト先も一緒にする仲。
「麗奈がダンスに気合いを入れるのは何時もことだろ?」
「その服、麗奈が選んだんですよね。メールや電話で散々聞かされましたよ」
何を思っているのか美保はニヤニヤしている。
「どうせ似合わないとから笑えるとかだろ?それで肝心の本人はどうしてんだ?」
「どうでしょうね、麗奈は多分違う部屋で待機してると思います。麗奈かなりの人気者なんですよ」
「あの我が侭娘がね。もう少し大人しいなら分かるんだけどな」
「麗奈は山田さんに甘えてるんですよ。それにあの子気を許した人以外には素っ気ないっていうか、山田さん以外の男の人とはあまり喋らないんですよ」
「それは俺を男扱いしてないだけだろ?」
「おい、山田…ナンパか?」
挨拶がうまくいったのか失敗したのか八木が1人で近づいてくる。
「馬鹿、バイト仲間だよ。美保それじゃ後からな」
山田が離れて行ったのを確認して美保が大きなため息をつく。
「素直じゃないのと鈍感か…中々難しいかもね」
美保は親友の恋が前途多難な物のに思えてきた。
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