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本編

     Ⅰ.自爆テロ


波の音が響いている。ここは東京を水没から護る巨大堤防の上。ここに完成した環境サミット会場を視察するために総理大臣(以下総理)がやってきた。総理、ビシッとした歩き方で入場。斉藤と温室効果ガス排出監視員(以下監視員)、総理大臣を護衛して入場。パンク、ナイフを握ってカミ手のすみで息を潜めている。


パンク「(恐怖を抑えつけるように)悪魔の業を棄てぬ者どもよ、目を開け」

総理「なるほど、どうやら間に合ったようだな」

斉藤「先進12カ国環境サミット。総理、このテのイベントの施設なんて、余裕を持って間に合う方が珍 事と言えます」

パンク「我、この身の犠牲をもって汝等愚民の目を開かせんとする者なり」

総理「両極の氷床崩壊による海面上昇、東京の海抜マイナス地帯化。東京水没の危機が叫ばれてからもう 10年か。この東京ゆめ堤防が余裕を持って完成したことを我々はもっと感謝せねばならないだろう」

パンク「愚かなる者どもよ、文明を棄てよ!偉大なる天使ガブリエルは、汝等を審判の後の世界にあって  も、寛容に迎えるであろう」

監視員A「いつか、堤防無しで人々が暮らせる地球を取り戻したいですね」

総理「できるだろうとも。そのための君達「セイブジアース推進委員会」だろう?」

斉藤「死力をもって対処しているところです、総理」

パンク「我は先に逝く。だがとも盟友よ悲しむな。炎と風に破壊された我の身体は、大天使ガブリエルの手 で一足先に審判の後の日に運ばれるのだから」


アナウンサー(以下アナ)とカメラマン、入場。総理を見つけて駆け寄ってくる。


アナ「今総理が出てきました。総理、環境サミット会場の視察を終えたところだと思いますが、いかがだ ったでしょうか?」


カメラマン、カメラを回す。


総理「多くの国に日本の「エコ」を知らせるのに充分なものと感じています」


パンク、ナイフを一旦しまって胸のロケットを開く。


パンク「め、(別の名前を声に出しかけてやめる)天使様、行ってきます」


パンク、すっくと立ち上がる。


パンク「(力いっぱい)人よ!文明を捨てよ!我、汝らの目を開かせん!」

カメラマン「なんだ?!」

アナ「テロリストよ!回して回して!」


場、瞬間的にパニックに。だが斉藤だけ冷静。即座にアサルトライフルをセミオート(単発)で発射。パンク、胸から血を吹いて堤防(舞台)から落下する。堤防のコンクリートにぶつかりながら死体が落ちていく音。


斉藤「危なかった」

監視員A「追ったほうが良いでしょうか」

斉藤「高層ビルから落ちたようなもんだ、死ななかったら私は天使の存在を信じるよ。

 (周囲を警戒して)それよりもまだテロリストが居るかもしれない。急いで総理をお連れしよう」


斉藤と監視員A、総理を立たせる。全員退場。

OPテーマ。雰囲気に合わないノーテンキなのがイイな。

ブリッツァーソニックMk.2(以下ぶそま)、入場。中央に正座してキャスト以外のスタッフロールが書かれたスケッチブックをめくっていく。

OPテーマ終了したらミンチに引っ張っていかれる。二人、退場。


Ⅱ.パンク誕生


パンクが落ちた先。錆びたバイクやいじりかけの機械が散乱する汚い部屋の中。手術台の上に、胸からマフラー(バイクとかのアレ)が生えたパンクが横たわっている。ミンチとぶそま、パンクを囲んで何やら作業をしている。


ミンチ「よし、こんなもんかな?」


ぶそま、頷いてパンクにガソリンを飲ませる。ミンチ、パンクの胸元でコックをひねりチョークを引く動作。スターターを引く。が、エンジンがかからない。


ミンチ「あっれ?おかしーなー」


ミンチ、パンクのエンジンをかけようと四苦八苦。その間にぶそま、足元に部品が一つ落ちているのに気付く。が、それを伝える前にパンクのエンジンがかかる。


ミンチ「おっしゃ!あたしったらリューセキね!」


パンク、飛び起きる。


パンク「鳥だァーーー!(辺りを見回して)どこだ?ここは」

ミンチ「ジャンクストリートよ」

パンク「ジャンク、セサミじゃなくてか。そうか、俺はテロに失敗して、落ちたのか」

ミンチ「いやぁ君は実に運が良いよ。天才外科医にして工学博士のこのミンチに発見されてなかったら、今 頃オカカモメの餌だったよ?」

パンク「あんたは?」

ミンチ「言ったでしょ?天才外科医にして工学博士のミンチよ。こっちはぶそま」

ぶそま(以降ぶそまの台詞は全てスケッチブックの文字)『正確にはブリッツァーソニックMk.2です』

パンク「使命を果たし損ねた。(シリアスに)ミンチさん、ここから出る方法を教えてくれ。俺はこんなス ラムでボケっとしていられる身じゃないんだ」


ミンチ、しばらくパンクの目を睨みつける。が、突然コブラツイストをかけはじめる。


パンク「ィテテテテテテテ!ギブギブギブギブ!」

ミンチ「審判だかチンパンジーだか知らんけどその前に言うことが有るでしょお?!」

パンク「分かった、分かった!」

ミンチ「(噛んで含めるように)助けてくれてありがとう、ぐらい言いなさいよ?!」

パンク「た、助けてくれてありがとうございますミンチさまァ!」


ミンチ、パンクを解放する。


ミンチ「よくできました、パンク・ザ・アイアンハートさん」

パンク「パンク?」

ミンチ「名前よ、あんたの」

パンク「何だよ、その音速ハリネズミみたいなの」

ミンチ「パンクが名乗らないからあたしが良い名前を決めてやったのよ。感激しなさい」

パンク「誰が」

ミンチ「じゃあ感謝に負けといたげる」

パンク「いいから出口を教えてくれ」

ミンチ「ムリムリ、ここは二重構造の堤防の丁度谷底。ま、諦めてジャンクストリートの一員になっちまう ことね」

パンク「話にならない。俺は自分で出る方法を見つける。止めるなよ」


パンク、退場。ミンチとぶそま、その姿を見送る。


ミンチ「(楽しそうに)やめといた方が良いと思うけどなァ」


(SE)ガラクタをかき分ける音

 パンク、ロケットベルトを背負って出てくる。


パンク「よし、なんとか行けそうだ」


ぶそま、焦って止めに入るが聞いてもらえない。パンク、助走をつけて反対の袖に飛び込む。


パンク「アーイキャーンフラァーイ!」


ジェットエンジンの噴射音が聞こえてくる。だが不意にプスプスと失火。ひゅ~、と落ちて地面に激突するあの音が響く。

パンク、よたよたと再入場。


パンク「俺は、諦めないからな!(力尽きて倒れ込む)」


Ⅲ.ジャンクストリートの住人達


ガラクタをよけて作られた、ジャンクストリートのメインストリート。ジャンクストリートの住民達(以下住民)がビールケースを椅子にして路上に溜まっている。


住民A「(新聞を読んでいる)フムフム、またテロがあったのか」

住民B「また大して興味も無いのに日経なんか読んでインテリぶりやがって。(住民Aから新聞を取り上 げ、別の新聞を持たせる)お前にはサンケースポーツがお似合いだ」

住民A「(不機嫌そうに)俺には向上心てモンが有るんだよ(日経を取り返す)」

住民C「(住民Aから日経を取り上げて)しかしこの記事によるとだよ、環境サミット会場は二重になって る堤防に板を渡してその上に造るわけじゃないか。となると下を覗けばジャンクストリートが丸見えだぞ。イ メージ的にいいのか?」

住民B「なんでも上から見える範囲のジャンクストリートはみんな綺麗にされちまうらしいぜ。あっちに住 んでた連中はツイてねぇよな」

住民D「環境サミット会場で思い出したけどさ、ミンチさんが拾ってきたあの、会場を丸ごと爆破したって ガキ?まだ生きてんの?」

住民C「昨日目が覚めたらしいけど、なんか妙なことしてベッドに逆戻りしたとか」

住民A「ミンチさんの機械いじりの腕は認めるが、生物の扱いに関してはヤブだよ」

住民B「違いねぇ。前にも一回男を拾ってきたことあったけど、そいつも「ああ」だしなぁ。頭のどっかが イカレちまったんだろうさ」


住民達、爆笑しながら退場。


Ⅳ.あの堤防を越えられない


ミンチの家。ミンチが錆だらけのスクーターをいじっている。

パンク、ヘリコプターパックを背負って彼女の前を横切っていく。

袖に消えた後ローターの音が聞こえてくるが、すぐに落下、地面に激突する。

ぶそま、入場。舞台の隅に立ってスケッチブックをめくる。


ぶそま『次の日』


パンク、ピッケルを両手に持って二人の前を横切る。袖に消えた後、コンクリート壁を登っていく音が聞こえてくるが、すぐに落下、地面に激突する。


ぶそま『その次の日』


パンク、今度は風船を腰にくくりつけて二人の前を横切る。袖に消えた後、しばらく無音。やがてがっくりと肩を落として戻っていく。


ぶそま『そのまた次の日』


パンク、今日は便所のスッポンを両手に持って登場。袖に消えた後、スッポンを吸い付けてコンクリート壁を登ったようだが、すぐに落下、地面に激突する。


ぶそま『そのまた次の日の次の日』


パンク、懲りずにホッピング(わかるかな?)で跳ねながら登場。袖に消えた後、ガラクタに突っ込む派手な音。舞台に向かってホッピングとガラクタがいくつか、飛んでくる。

パンク、ふらふらになって戻ってきて、ミンチの前で倒れ込む。


ミンチ「(バイクいじりをやめて)よっしゃ完成!てアレ?あんたまだ居たの?」

パンク「(なげやりに)うるせぇ」


ぶそま、スケッチブックのページをパラパラとめくり、適当なところで止める。


ぶそま『○×日目(開く場所が適当なので日付も適当になる。二十日くらいがいいか?)』


ぶそま、退場。

早朝。パンク、あくびを噛み殺しながら入場。いそいそとちゃぶ台を引っ張ってきて舞台中央で開き、朝食の用意(寸胴の味噌汁とでっかい炊飯器、たくあん数本分も有ればなお可)を済ませる。それからナベをおたまで叩きつつ舞台を歩き回る。


パンク「朝だぞ!いい加減起きろ!」


ミンチとぶそまと住民達、まだ眠そうにしながら出てきて、ちゃぶ台を囲む。


一同「(眠そうに、でもデカイ声で)いただきまーす」


一同、ガツガツと食う。できるだけ旨そうに。ぶそまの食事は電池、パンクの飲み物はガソリンで。


ミンチ「パンクくーん、お醤油切れたー」


パンク、面倒くさそうに醤油を取ってくる。


住民D「味噌汁濃いぞー」

パンク「あ?お湯か?」

住民B「薄い!味噌取ってこい!」

パンク「動脈硬化で死ぬぞ」

住民C「梅干しどこだ?」

パンク「ちょっと待ってろ」

ミンチ「パンクくーん、あたしも食べるラー油!」

ぶそま『(つながったたくあんを持ち上げて)使えねぇなぁ』

住民C「ご飯おかわり」

一同「(堰を切ったように)おかわり!おかわり!」


以後アドリブ適当に。

パンク、しばらく我慢していたがついにキレる。エンジンがフケ上がる音。奇声を上げてちゃぶ台返ししようとするが他の面々に全力で阻止される。

パンク、息切れ。


ぶそま『きわどかった』

住民A「そういや今日の朝刊は?」

ぶそま『!?』


パンク、怒りが再燃。他の面々が茶碗を持って逃げ出したあと、盛大にちゃぶ台返し。糸が切れたように大人しくなる。

やがてパンク、一旦退場。新聞を持って戻ってくるが、ふと目を落とした記事に釘付けになる。その間に住民A、パンクから新聞をかっぱらう。


住民A「(新聞を読む)フムフム、またテロか。緑の杜も飽きないなぁ」


パンク「ちょっと出かけてくる」

ミンチ「晩ご飯までには帰ってきてねー」

パンク「ここを発つんだよ」

住民C「(不思議そうに)最近おさまってきてたのに」



一同、しばらくパンクを見送っていたが、また賑やかに食事を始める。


Ⅴ.夜の会話


ミンチの家。パンクが夜遅く帰ってくると、ぶそまとミンチは既に寝ている。ミンチはいびき。

パンク、ミンチのそばにあぐらをかく。


パンク「なぁ、ミンチ」


ミンチのいびきが止まる。


パンク「真剣に聞いてくれ。俺はどうしても、ジャンクストリートを脱出しなきゃならない。本当は有るんだろ?出る方法が。教えてくれ、お願いだ」


ミンチ、応えない。


パンク「俺は「緑の杜」の一員だ。ミンチも大体どんな教団かは知ってるだろ?

 「緑の杜」の総本山にはめ(名前を言いかける)じゃない、大天使ガブリエルが居る。彼女がその気になれ  ば、その瞬間に世界は逃れようのない洪水に襲われる。その審判の洪水から逃れるためには、文明を棄てるし かないんだ。今教団は、全力を挙げてそれを訴えてる。そのために、俺の両親も、友達も、死んでるんだ。

 なのに俺だけがのうのうと生きているわけにはいかない。与えられた使命を全うしたいんだ」

ミンチ「バッカじゃないの?天使も審判も、教皇気取りのじーさんの妄言じゃない」

パンク「かもしれない。いや、きっと、そうだ。でもこのままいけば、ガブリエルが手を下さなくても海面 上昇で似たような事は起こる。「セイブジアース推進委員会」はそれを起こさないために行動してるけど、あ んなんじゃ生ぬるいんだ。みんなそれを分かってない。文明を棄てるくらいの気で取り組まないと、地球の温 暖化はおさまりやしないんだ」


ミンチ、笑い始める。はじめはクスクス、次いでゲラゲラ。しまいには大爆笑。皮肉ではなく、腹の底から笑っている。


パンク「(腹を立てて)笑うな!(ややトーン落ちる)人の行動を否定するのは簡単だ。だけど、あんた  は、否定されるだけの事をしてるのか?地球のために何かやってるのか?」


ミンチ、それでも笑っていたがやがておさまる。


ミンチ「でも、時間が流れるのを止めようとしている人がいたら、あんたは笑うでしょ?」

パンク「意味が分からない」


ミンチ、急に起き上がる。至近距離で見つめ合う、あるいはにらみ合う二人。


ミンチ「メメント・モリ。だから、あたし達は限られた時を生きていく」


突然ドアをノックする音。ぶそま、飛び起きる。パンクもドアの方を見やる。


斉藤「(ドアを激しくノックして)温室効果ガス排出監視員だ。ドクター・ミンチ、いや、みつもと三本 音紗!貴様には温室効果ガス排出規制法違反で逮捕状が出ている!」


ミンチ、躊躇いなく立ち上がり、困惑するパンクの頭をわしゃっと撫でる。


ミンチ「あたしの洋服ダンス、上から三番目」


パンク、うなずいて駆け出す。退場。

ミンチ、ドアノブに手を掛ける。止めに入るぶそま。しかしミンチは目で逃げろと促す。


パンク「(袖から顔だけ出して)ぶそま!行くぞ!


ぶそま、ためらいつつもパンクの後を追う。退場。

ミンチ、ドアを開ける。向こうから斉藤を先頭に監視員たちがなだれ込んでくる。内監視員BとCはミンチに銃を突きつけ、他は家を荒らし回る。


監視員B「目標B及びC、見当たりません!」

斉藤「(冷静に)先に逃がしたか。(ミンチに目を向け、皮肉って)拾った命は最後まで責任を取るか。 泣けてきますな。ネロとパトラッシュが死ぬシーンを見せられた時くらい泣けてくる。

 単なる二酸化炭素の排出源に、よくそこまで肩入れできますな」

ミンチ「(しみじみと)りゅーせき、セイブジアース推進委員会の狂信家の言う事は違いますなァ」

斉藤「(少し不機嫌になる。舌を打って)連れて行け」


監視員BとC、ミンチを立たせる。三人、退場。


斉藤「まだ近くに居るはずだ!目標BとCの捜索に全力を挙げろ!」


斉藤と残りの監視員、退場。


Ⅵ.取り調べ


薄暗い取調室。斉藤がミンチを取り調べている。机の上のライトスタンドはミンチの側を向いている。


斉藤「(取調室を歩き回りながら)三本音紗。住所不定無職。12年前、父三本えんじ円児の影響で当時 まだ規制されていなかったガソリン及びディーゼルエンジン車の整備免許を取得。10年前温室効果ガス排出 規制法が施行されると同時に失踪、以後現在まで行方不明(足を止めてミンチを見る)10年ぶりだな、音  紗」

ミンチ「(あごひじを突いて聞いていた)もう二度とあんたの演説を聴かなくて済むと思ってたんだけど、 甘かったわ」


監視員D、部屋に入ってくる。


監視員D「失礼します。隊長、容疑者の所持していた二酸化炭素排出源のリストが完成しました」


斉藤「自動二輪25両、エンジン完動のみで18機、さらに非環境対応型の扇風機が一台にブラウン管テ レビ、二層式洗濯機にチェーンソー一本。これほどの温室効果ガス排出源を溜め込んでいたとはな。政府と国 民が一致団結して取り組んできた温室効果ガス排出削減の努力を踏みにじる行為だ。これは全国民が平等に負 担して実現した発電の再生可能エネルギー化を否定する脱税行為であり、未来の子供達の命を温暖化の影響で 無くしてしまう殺人行為でもある。

 温室効果ガス排出規制法違反は裁判員裁判になる。今の民意を顧みれば、死刑判決が出る可能性は極めて高い だろう。その態度を改めない場合は特に」


ミンチ、鼻くそをほじりながら斉藤の話を聞き流していたが、斉藤の話が終わると不意に笑い出す。


斉藤「何がおかしい」

ミンチ「ところでカツ丼出ないの?」

斉藤「お前はいつもそうだ。10年前から何も変わってない。真剣な人間を笑うだけで、自分は何も話そ うとしない」

ミンチ「(独り言のように)あたしはあんたほどお喋りじゃないからね」


ミンチ、言いつつ視線を天井付近の小さな窓にやる。


          Ⅶ.戦闘計画


ジャンクストリートのメインストリート。住民達、舞台中央に集まってうなだれている。パンクとぶそま、入場。パンクはフックショットを抱えている。


パンク「くそ、こんな良い物有るのに出し惜しみしやがって」

住民C「(立ち上がって)ミンチさんは?!」


住民達、口々にミンチのことを尋ねる。アドリヴ。


パンク「(毅然とした態度で)ミンチは、今警察だ」

住民B「てめぇ、よくも自分だけノコノコと!」


住民B、パンクに殴りかかる。が、他の住民とぶそまに取り押さえられる。


住民C「無茶言うな。相手は温室効果ガス排出監視員だ。銃だって持ってる。俺たちは丸腰なんだぞ。かな うわけない」

住民B「だけど!」

住民A「(住民Bに同意して)社説で読んだことがある。今の世の中、エコじゃないってことはロリコン犯 罪者と同じくらいの悪なんだって。ミンチさん、古くてエコじゃない機械をよく直してたろ?助けなきゃ死刑 かもしれない」

住民C「仕方ない、か」

住民D  「なんか武器になりそうなものを探してこよう。こんだけ色々有るんだ、銃の一丁くらい落ちてるだ ろ」

パンク「いや、多分そんなもんは要らない」


住民達、パンクに注目する。


パンク「俺たちはジャンクストリートの人間だ。玉砕覚悟なんて似合わない。もっと気楽に、したたかに行 こうぜ。(住民達に円陣を組ませる)いいか、まずはこうだ」

ぶそま『(パンク達の前にスケッチブックを突き出して)聞かせられないよ!』


        Ⅷ.パンク、帰る


「緑の杜」の本部。客席と向き合うように祭壇がそびえ、その中央にベール。中にガブリエルの姿がシルエットになって見えている。カルト宗教には元となる宗教が有る場合が多いが、緑の杜はそういったものは無い(日本のアニメで宗教的なモチーフがぞんざいな扱いを受けているあのイメージ)。その前で総帥が熱弁をふるい、緑の杜信者(以下信者)がそれを聴いている。


総帥「(厳かに)大天使ガブリエルの子らよ!

 本当に、よくやってくれた!文明を棄てさせ、より多くの命を審判の洪水から救うためとはいえ、家族を、友 を、恋人を失う日々に耐えた汝等は、必ずや、審判の後の世界で彼等と再びまみえるであろう!

 そう!大天使ガブリエルの、審判がついに始まるのだ!」


このあたりで鼻をすする声。感動して泣いている信者も居る。


総帥「はじめは我等が今立っているこの地、文明の鉄に覆われた地、東京だ!

 そして我等は、そのための力を、既に手に入れている!」


信者A、翼を外した米軍のミサイル「トマホーク」を台車に乗せて押してくる。信者の中からどよめき。


総帥「我等はこれより、大天使ガブリエルの導きにより、あの忌まわしき「東京ゆめ堤防を破壊する!」


信者達の歓声。


総帥「では、最期まで彼の地に残り、大天使の力に火を入れる者を選びたい!」


その時、ドアが開け放たれる音。

パンク、堂々と入場。フックショットは捨て、(バイクの)マフラーを(首に巻く)マフラーで隠している。


パンク「私にやらせてください、総帥」

総帥「(驚き、目を剥く)かたな方奈くん」

パンク「はい。内閣総理大臣殺害に失敗したものの、辛うじて命は取り留めました」

総帥「(優しい表情を作って)よく帰ってきた。大天使ガブリエルも、君の意志は汲み取って下さるだろ う」

パンク「しかし!(食らいつく)大天使ガブリエルに仰せつかった使命を果たせぬままでは、たとえ大天使 がお赦しになられるとしても私の気が収まりません。どうか、名誉挽回を、審判の先頭を切るという形で、果 たさせてはいただけないでしょうか!」

信者達「賛成!方奈に名誉の先鋒を!」


アドリヴで全員、パンクを絶賛。


総帥「(折れる)そうか、分かった。ではこの大役を、ここにいる信心深き青年に託そう!」


場、熱狂する。


緑の杜幹部(以下幹部)「皆の者!出発の準備だ!」


幹部、総帥と共に退場。幹部に率いられ、信者達、踊るように退場。パンク、彼等の後で退場しかけて、ガブリエルを振り向く。が、すぐ歩き出す。


Ⅸ.イタズラ


スピード感を出すために背景は片付けないまま。照明を落とす。

斉藤、歩いている。それをスポットライトが追う。掃除のおばちゃん(以下掃除)が斉藤を追いかけてくる


掃除「斉藤さん、今朝見た?堤防」

斉藤「堤防?(不思議そうに)いや、見ていないが」

掃除「なんかね、堤防の上に変な棒が一杯立ってるんだって。面白いイタズラする人も居るもんねぇ。今 日は天気良いから、署からでも見えるんじゃない?」


斉藤、遠くを見ようと目を懲らす。その間に掃除、退場。やがて斉藤、愕然とする。


斉藤「あんなイタズラが有ってたまるか。あいつは、ミサイルじゃないか!」


斉藤、全力で退場。


Ⅹ.クライマックス!


再び堤防の上、環境サミット会場前。大量のミサイルが堤防の峰に埋め込まれている(七人の侍の刀のイメージ)作業をしている信者達。その中央で作業を見守る総帥と幹部とベールの向こうのガブリエル。パンクはトマホークによりかかって起爆スイッチをおもちゃにしている。

斉藤「(声だけ)居たァ!奴等を取り押さえろ!」


クライマックス用BGM。疾走感の有るヴォーカル曲がイイナ。

斉藤、監視員を引き連れて花道から(有れば)舞台の信者たちに突撃していく。


幹部「感づかれたか」

総帥「我等には大天使ガブリエルがついている!迎え撃て!」


監視員たちと信者たち、激突。舞台が飽和するほどの大混乱。さりげなく舞台の中央を開けていく。

パンク、(首に巻く)マフラーを投げ捨て、(バイクの)マフラーを見せつける。

エグゾーストノートが響く。パンク、混乱に乗じて総帥と幹部を殴り飛ばし、ガブリエルのベールを張り倒す。

ガブリエル、驚きで声も出ない。胸元にはパンクのものと同じロケット。


パンク「めくろ!迎えに来た!」

ガブリエル「方奈!」


抱きしめ合う二人。

戦っていた信者Cが気付く。


信者C「天使様が!」


信者のいくらかがパンクに襲いかかる。パンク、ガブリエルを護りながらトマホークの付近を死守する。


住民A「やってるじゃねぇか!」

住民B「着替えは済んだか?!突撃ィ!」


住民達とぶそま、監視員たちと同じ服を着て花道から突っ込む。


ぶそま『遅くなったな!』


更なる大混乱。その住民達、信者と警官隊双方に攻撃しつつパンクの周囲を固めていく。

最後の信者はパンクが倒すこと。

嵐の後、監視員が若干残り、信者が全滅しているように調節すること。住民は被害ゼロ。BGM丁度ここで終わるように。


斉藤「(憎悪一色)貴様」


死屍累々の中、斉藤、パンクに銃を向ける。パンクは起爆装置を斉藤に突きつけている。


斉藤「一体、何が望みなんだ。何が願いなんだ。お前、緑の杜の信者だろ?東京を壊滅させたいんだろ? なら何故仲間を裏切った。(怒鳴る)理解できないんだよ!お前のやってることは何も!」

パンク「的外れだよ。全然。緑の杜がどうとか、セイブジアースがどうとか、どうでもいいんだよ。

 少しでも冷静になって、考えてみれば分かるはずだ。もうどうしようもない。見つけ損ねたガンは、直そうっ たって人は死ぬんだ。メメント・モリ。人はいつか死ぬ。だから飲み、食い、踊れ。明日に悔いの残らぬよう に。だから俺はそうした。緑の杜に取られた大切な人を、取り返すために踊ったんだ。(住民とぶそまを見渡 す)そして彼等もそうした。

 (一際大きな声で)セイブジアース推進委員会に要求する。ドクター・ミンチを今すぐ釈放し、この場所に連 れてこい。さもなくば、俺は東京を海に沈める」


斉藤、パンクを狙ったまま動かない。

長い間。

その後、斉藤、ゆっくりと銃を降ろす。


斉藤「私には国民の意思に従う義務がある。一人の女のために、都民全員の命をかけるワケにはいかな い。(命令する)ヘリをよこせ。三本音紗を釈放する」


斉藤、残った監視員を引き連れて退場。その間に一度立ち止まる。


斉藤「(パンクに背中を向けたままで)今回は見逃してやる。だが私は、もう一つのメメント・モリに殉 じるつもりだ。次に会ったとき、お前の心臓がまだ温室効果ガスを出していたら、私は迷わずお前を撃つから な」


監視員の一人、突然戻ってくる。


監視員?「いやあ、ホント愛されてるよねぇ、アタシ!」

全員「え?!」


さわやかなBGM、フェイドイン。

監視員、変装を解き、正体=ミンチを見せる。

ミンチ、パンクとガブリエルに歩み寄る。


ミンチ「それにしてもカッコ良かったねぇ、「待たせたな!」なんてヒーロー直球ヴァリヴァリ!ってカン ジでさ」


パンクとガブリエル、赤面する。


住民B「(事態が飲み込めていない)じゃあ、俺たちは一体何のために」

ミンチ「(無視して)さ!ジャンクストリートに帰るわよ!可愛い新入りの歓迎会しなきゃ」

パンク「(ちょっと怒って)何でめくろまでお前の仲間にされてんだよ!」


以後アドリブ。地球は死にかけていても、日常は続いていく。

BGMの区切りが良いところで終わるように。

暗転。直ぐにBGMエンディングテーマ。キャスト紹介。


「フルメタル生徒会長~地球SOS~」の第三話は7月5日(月)更新予定です

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