蹂躙③
撃ち放たれた銃弾。
散る火花と、漂う硝煙。
屋敷の前。そこに広がる、日本庭園。
そこは本来なら、古きよき四季の風景を愉しむ場所。
しかし、今そこは。
如月 夕日による蹂躙の場と化していた。
首を折られ転がる、多数の亡骸。
腹部に拳大の穴が空いた数人の遺体。
そして、生き残る三人の男の姿。
「応援がくるまで持ちこたえろ」
「くっ……化け物め」
「……っ」
焦燥に満ち、しかし男たちはなおも"如月 夕日"に対し抵抗を試みた。
男たちは、権力者の護衛。
皆、黒服に身を包みいかにも強そうな雰囲気を漂わせている。
だが、銃弾を撃てば撃つほど。
その存在は幼い嗤い声を響かせた。
「くすぐったい」と表し、銃弾をモロともせずに。
そして足元に転がる銃弾を拾いーー
「なにこれ? おもちゃ?」
そう声を発し、愉しそうに銃弾を握りつぶす夕日。
明らかに小バカにしたような笑み。
それをその顔にたたえながら。
「ほ……ほざけ!!」
「舐めやがって!!」
虚勢を張り、後退していく面々。
そして弾切れを起こし、男たちは屋敷の中へと撤退を図ろうとした。
踵を返しーー
しかし。
如月 夕日は、その眼前に現れる。
にこりと微笑み。
「ねぇ、にげるなんて卑怯だよ」
そう呟き、間髪入れず。
目の前の男を見上げ「しね」と意思を表明する、夕日。
瞬間。
首が吹き飛び、血を噴射し。
よろけながら倒れる、男。
その血を浴び、呆然とする残り二人。
夕日はその二人を一瞥。
そして淡々と、足元に転がった血に濡れた拳銃を拾い上げる。
「魔弾装填」
そう小さく呟きながら。
そして流れるように、二人に向けられる銃口。
二人は正気を取り戻し、「ひいっ」と声をあげ尻餅をつく。
だが夕日に、躊躇いなどない。
憎悪をたぎらせ。
その引き金をーー
「しね」
と吐き捨て、容赦なく引いた。
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「くそ……っ」
「なにがどうなっている」
慌ただしく、屋敷の裏口から逃走を図ろうとする権力者たち。
その顔には今までかいたことのない焦燥の汗が滲んでいる。
"「お逃げください!!」"
"「如月 夕日を名乗る者が屋敷に襲撃。既に十数人、殺られました」"
そんな報告を受け、権力者たちは側近の案内と共に慌ただしく撤退を企てた。
「車の準備は?」
「はっ。既にご用意しております」
「それにしても。なんたる、不意討ち」
「全くだ。準備さえ整っておれば、あのような餓鬼一人に我らが撤退などーー」
裏口。
そこを抜け、権力者たちは我先にと停車した防弾車に乗り込もうとする。
だが、その頭上。
そこからーー
「おにごっこするの? えーっと。夕日が鬼さんでいいのかな?」
そんな、如月 夕日の愉しそうな声が降り注ぐ。




