如月夕日②
「~~♪」
「ゆ、ゆうひ……ちゃん?」
「なーに?」
「わ、わたしは貴女の味方よ。だ、だから……その、なんでもする。なんでもするから。たす、た、たすけて」
畏れながら、女性は夕日へと懇願する。
その身は震えを通り越して痙攣し、その瞳も涙を流すことさえ忘れ赤く充血していた。
「んー。なんでもしてくれるの?」
夕日は無邪気に、女性に問いかける。
その問いかけに女性は何度も何度も頷く。
命より重いものはない。そんな思いをもって。
「そう? じゃあねじゃあね」
愉しそうに。女性へと歩み寄る、夕日。
しかしその目は一切笑ってはいない。
そして、女性の眼前で立ち止まりーー
「いますぐ。100人分の魂を夕日にちょうだい。夕日はともだち100人より魂100人分がほしいの」
そう声を発し、夕日は冷酷な眼差しをもって女性を見下ろす。
100人分の魂。
その言葉に、女性の顔から血の気が失せる。
「……っ」
「なに? できないの? ふーん、そっか」
不機嫌になる、夕日。
「お、おねがい。私、まだしにたくーーッ」
「しね、嘘つき」
声が響き、同時に女性の命は終わりを迎える。
がくりと身を倒し、魂を抜かれた女性。
夕日はそれをゴミを見るように見つめ、流れるようにその亡骸を足で踏みつける。
そして順番に指を四本たて、「いち、に、さん、よん」と数字を数え、満足げに頷く。
"えーっと。まだ後、何人だっけ? 魔王少女の復活に必要な魂の数って"
内心で呟き、夕日は思考する。
だが、答えは出ない。
前に聞いたことがある、夕日。
しかし、覚えていないのなら仕方がない。
そう割りきり、夕日は踵を返す。
"何人でも関係ない。何人でも、関係ない"
みんなの為に、自分の為に。
如月 夕日は復讐をする。
"「夕日ちゃん。たのしー」"
新庄 司。
"「おい、夕日。わたしのケーキ食っただろ」"
赤城 瑠璃。
"「夕日さん。食欲だけは立派ですね」"
五条 玲子。
"「平和の為に。頑張ろうね、夕日」"
神谷 咲。
"「ありがと。ゆ、ゆうひ。ちゃん」"
白木 美空。
笑い合い、共に魔法少女として世界を救った大切な親友たち。 それを思い出すだけでも、夕日の幼い心はチクリと痛む。
だが、夕日は決して折れることはない。
世界を救った魔法少女たちを「魔女」と罵り、そしてその命を弄び奪ったこの世界と人々。
それに対する復讐という名の焔。
それは、なにがあっても消えることはない。
膨れる憎悪は力となり、如月 夕日を闇へと染める。
その悪堕ち魔法少女の復讐。
それはまだ、序章にもたどり着いてはいなかった。




