はじまり
赦さない。
私はこの世界を赦さない。
内心に渦巻くドス黒い感情。
それに如月 夕日はその身を任せる。
焼け落ちた我が家。
散らばった骨。
そして、共に戦った魔法少女たちに対するあまりに理不尽な仕打ちと残酷なる死。
「……っ」
ちいさな胸を抑え、夕日はその場に膝をつく。
復讐。
私はこの世界に復讐したい。
夕日は震え、踞り。
今まで感じたことのない憎悪に身を任せる。
如月 夕日。
その悪堕ちした魔法少女は、世界に対する復讐を心に誓った。
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夕日が世界に帰る一週間前。
"「魔女め。世界を救っただと? 腑抜けたことを抜かすな」"
"「魔法少女? 笑わせるなよ、クソ餓鬼共」"
"「あの得体の知れぬ化物を倒したのは現代兵器。貴様らの力などなくとも人類は勝利をモノにすることができたのだ」"
"「しかし、その得体の知れぬ力は世界は混乱をもたらすものに違いない。よってお主らをーー」"
世界は少女たちに残酷だった。
魔法少女の使命。
それを果たし力を失った少女たち。
その年端もいかない6人の少女たちを、世界は"魔女"と断罪し徹底的に貶め辱しめ、"世界を混沌に陥れた罪"を犯したとして処刑を言い渡した。
「古代では魔女に対し串刺しや火炙り。はりつけといった刑が課されたようだ」
「うむ。ではその時代に倣い、この魔女たちもそのように取り計らおうではないか」
「刑の執行は3日後。それまでにこやつらの痕跡をこの世界から消しさっておこう。よし、各国政府に連絡を入れておけ」
「承知いたしました」
冷たい牢屋。
その中で獣のように繋がれ、震える五人の少女たち。
薄汚れた白色の布服。それを少女たちは着せられていた。
その少女たちを見つめーー
「ふんっ、人の皮を被った魔女共め」
「そうだ……うむ、試しに一人。皮を剥いで人かどうか確認しておこうではないか」
そう言い、権力者たちは嗜虐に満ちた笑みを浮かべる。
少女たちは身を寄せ合い、声をすらも出せずに怯えるのみ。
開かれる牢屋の扉。
そして、足を踏み入れる大人たち。
「ふむ。どの娘にーー」
しようか。
そう言い終える前に。
「なッ、舐めるな!! わたしたちはあんたたちの玩具じゃない!!」
一人の気の強い赤毛の少女ーー赤城 瑠璃が勢いよく男たちに食ってかかる。
しかし嵌められた首輪と鎖がそれを拒み、「ぅ……ぐっ」と喘ぎ、瑠璃はその場に膝をつく。
その瑠璃を見下ろし、男たちは笑う。
「よし、こいつにしよう」
「おい。暴れないようにしておけ」
「かしこまりました」
権力者の命。
それに従い、屈強な男が瑠璃の側に歩み寄る。
そしてーー
一人は瑠璃に蹴りをかまし、そして馬乗りになり、淡々と拳を振り下ろしていく。
「ぃ……ぐっ」
「力を持たぬ分際で粋がるな、クソ餓鬼」
「……っ」
拳を止め、ペッと瑠璃に唾を吐きかける男。
瑠璃は顔を腫らし、ぴくぴくとちいさく痙攣するのみ。
その瑠璃を担ぎ、満足げにその場を去る男と権力者たち。
再び閉められる、牢屋の扉。
そして、怯える少女たちに権力者は声を残した。
「安心しろ。お前たちも3日後、すぐにあの世にいける」
「「……っ」」
そして、10分後。
つんざく、瑠璃の発狂に似た悲鳴。
それを少女たちは聞きながら、力のない自分たちを呪いそして絶望に堕ち泣きじゃくることしかできなかった。
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3日後。
少女たちは、予告通りに処刑された。
少女たちの処刑は三時間にも及び、最後は火炙りで締められることになった。
人々は嗤い、少女たちの死を喜んだ。
これで本当の意味で世界が平和になると心から喜んだ。
火がつけられる瞬間。
少女たちは自分たちの倒した"魔王少女"たちに心の中で謝罪を述べた。
ごめんなさい。
やっぱり、貴女たちが正しかった。
ごめん。本当に、ごめんなさい。
"「人類こそ悪。貴女たちはなぜそれがわからないの?」"
魔王少女たちの悲壮に満ちた表情。
それを思いだし、少女たちは涙を流す。
その虚ろな瞳。
それを青く澄んだ空に向けて。
燃え上がる、悪意の焔。
その中で。
少女たちは未だこの世界に戻らぬ"もう一人の魔法少女"に思いを託す。
如月 夕日。
"「ごめんね、みんな。わたし後一週間はこっちの魔法世界に残る」"
夕日のように儚い笑顔。
そんな気弱で純粋な少女に、裏切られた魔法少女たちは全てを託した。
「ゆう……ひ」
「……っ」
「ご……ごめんね」
「せかいを…へいわ…にできな……っ」
言い終える前に。
その少女たちは猛る焔に完全に包まれた。
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