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だから私は、明日の約束をする。  作者: 刻詩銀。
そして、少女は呪われる。
18/22

18

――というわけで週末。

 この辺では割と大きいプールで、アトラクションに特化した施設が多いのが特徴。

 この季節だと温水に変わっていて、シーズンでもない。客足も微妙だ。

 とは言え、海パン一丁でプール際は冷える。先に泳いでおこうか。

 ゴーグルをセットした所で――

「相変わらず、特に特徴の無い体ね」

 長い茶髪を優雅に揺らしながら、大胆なビキニ姿で登場する。

「そういうお前は随分と気合の入った……」

「な、何よ? じろじろ見て」

「……少し、太ったか?」

 綺麗な回し蹴りが、俺の前髪をはためかせる。

「いや、前より肉付きよくなったな、と」

「この期に及んでまだ続けるの? これだから女っけの無い男は」

「事実だ」

「いい? 女の子は第二次性徴を迎えると体に凹凸が出るの」

 上から目線で講釈を垂れる姿に、二つの意味で成長を感じる。

「あんたの知るちんちくりんじゃないの」

 ふと思い出す。咲里花はやけに保健体育に強かったことを。

「つまり、よ? これは成長なの。バストサイズだってDカップてま――‼」

「まてまてまてまてまて」

無言でビーチチェアに手を掛けるな。

 顔を真っ赤にしながら涙目でキレている。

 だが言わせてもらう。俺は悪くない。

「酷いわ、こんな辱め」

「急に被害者面されてもな」

「助けてくれ、って頼んで来たのあんたなのに、こんな扱い……」

「わー! 崖君、橘ちゃん泣かしてる!」

 面倒臭い人が、面倒臭いタイミングで来てしまった。

 健康的な体つきで活発な女子だが、水着はパレオのある控えめな物。

「水着の感想を言ったらこうなりました」

「どんな感想を言ったらこうなるの……? 橘ちゃん大丈夫?」

「御園、慰めないでくれる?」

 ギロッと睨みつける。

「私がイジメられてるみたいじゃない。喧嘩売ってるの?」

「ええ⁉ この流れであたしが怒られることあるの⁉」

「当然よ。それじゃあ私がコイツより下みたいじゃない」

「そこ、拘るところなの?」

「また、デリカシーの無いこと言ったんですか」

 一方、少し遅れてきた少女はフリル付きスカートが可愛らしい水着。

 存外に可愛らしい趣味だが、華奢ながら、凹凸のある体に髪が相まって儚さがある。

 髪も祭りで見たお団子が二つ。お得セットだ。

「何ですか?」

「いや意外だと思った」

「あ、そうですか。どうせ感想言ったら悪態吐きますよーだ」

 ぶっきらぼうに言い捨てて二人の元に合流する。

 館内放送に合わせて律儀に準備体操まで済ませた。

「まずみんなでビーチバレーをやるよ! バレーコートあるし!」

「プールの場合もビーチバレーで良いんですかね?」

「ビーチバレーもルールが深いらしいが、水着でやるからいいんじゃないか?」

 確か、ビキニでないと駄目とかルールがあった気もする。

「甘いわね」

 あくどい笑みをしている。

「勝負事なら敗者には罰がないと。そうでしょう?」

「うーん、言われてみればその方が燃える、かも?」

「なら、丁度いいのがあるわ」

 首をクイっとした先には、天井近くから下に複雑に曲がった大きなパイプがある。

 ここに誘われた時に見た、ホームページの内容を思い出す。

『絶叫! そのスリリングは正に天にも昇る感覚!』

「いや、死んでるだろそれ」

「え、どうしました急に?」

「おお……結構高い……じゃあ、負けたチームはあのウォータースライダ―ね!」

「その条件は……」

「そうしましょう。女子相手に逃げる腰抜けなんていないでしょうし、ねぇ?」

「あ、彼芽さん凄いビビってますね」

「でしょうね。あんた絶叫系苦手だもの」

 あれは人が乗る乗り物ではない。

何が好きで臨死体験をしなければならないのか。

「え? え? ホントにビビってるの? 全然、わからないけど」

「目を見ればわかるわよ。キョドリまくりよ」

「はい。声のトーンと体が震えまくってます」

「ぜん! ぜん! わかんない! ずるいよ崖君! 二人と通じ合ってるみたいで!」

「この流れで俺が怒られるんですか」

「へー? なら、私はこの子とチームを組むわね?」

「なら私と彼芽さんですか。勝ちに行きますよ」

 俺のために、などでは決してなく。単純に負けるのが嫌らしい。

 闘志に燃える瞳。ノリノリの二人。嫌だとは言えなかった。

 サーブは咲里花から。運動神経は中学では上の下。

御園さんもスポーツには積極的に参加するタイプ。

 対して、中の上の俺と同じぐらいの巫代さん。勝つのは容易じゃない。

 それでも、咲里花がサーブなら拾うのは簡単だ。

僅かな仕草から軌道が読み取れる。打つ場所さえわかればボールは上げられる。

……待て。ならなぜ、咲里花がサーブなんだ?

「――当たれ!」

 ギラつきから放たれた一球は、顔面に直撃する。

 そう、根底から履き違えていた。こいつは最初からバレーをする気がない。

 これは――ドッチボール(顔面あり)だ。

「よし! 顔面一発!」

「すごいサーブ! あたしもスカッとした!」

「御園も?」

「うん! だって最近、巫代ちゃん独り占めするから!」

「意外と気が合うかもしれないわね、私たち」

 握手を交わし、奇妙な友情が芽生えていた。

 その横をストンとボールが落ちる。

「いいですよ彼芽さん。その調子でボールをあげてください」

 どさくさに紛れて、直撃から跳ねたボールを処理していた。

 試合(という名目)は続く。

 御園さんまで面白がって俺を狙い始める。避けたら避けたで味方に恨まれる。

 四面楚歌とはこう言うのだろう。

 ゲームの勝敗は当然こちらの勝ちだ。だって目的が違う。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」「やっほぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉい!」

 係員に押されて、三者三葉の声を出す。

 因みに、男子のような叫びが咲里花。女の子らしい叫びが御園さん。

「橘さん楽しんでませんか?」

「咲里花はこう言うアトラクション大好物だから」

 この勝負の致命的な部分は、咲里花に一切のマイナス無いことだろう。

 自分可愛さだけではなくそこを指摘しようとしたのだが、後の祭りだ。

 せめて、上から眺めてやろうと一緒に登ったが。

「――私には最初からタメ口でしたよね」

 いつかの会話を、思い出したように口にする。

「何ですか。最初から私のこと舐め腐ってました?」

「ただの一度も侮ったことはない」

「ではなぜ?」

「デジャブだ。前にも一度だけ勉強教えろ、って頼まれたことがある」

 会話が噛み合っていないと、怪訝そうにする。

「そいつに敬語を止めるように言われたのを思い出して、つい口調が崩れた」

 話しかけられた時に、姿がダブって見えたのだ。

「私以外にもいたんですね、そんな酔狂な人が」

「あいつ」

 びしょ濡れで、良い笑顔をする女の子を指差す。

「え、嘘」

「元々は大人しかったのに、学力つけたらあんな傲岸不遜女になった……」

 どこで教え方を間違えたのか。妙な自信が付いてしまった。

「俺は基本、家族以外は敬語だ」

 小さい子には砕けた話し方はするが。

「いや、あの、ぶっちゃけ衝撃の事実過ぎて話が入ってきません」

「ならいい。理由としてはそれだけだ。敬語に直すのも変だからな」

 だが、最初に会った自信なさそうな彼女よりも。

 笑顔を隠さない彼女の方が、俺は好きだ。

「悪い。そろそろ降りてもいいか?」

「……そんなに怖いんですか?」

 下を見ていたら、高さに恐怖心が募ってきた。

 視線を外したらそこには、悪戯を思い付いた子供のような巫代さんがいた。

 俺の知り合う女性はどうしてこう、悪い顔が似合うのだろう。

「すみません。次、私たちが乗ります」

「嫌だ。絶対に嫌だ」

「まぁまぁまぁまぁ」

 グイグイと腕を引っ張られる。

 振り払うのは簡単だが、下手に振り払うと怪我をさせてしまう。

 後ろの列が不満そうに睨んでくる。巫代さんはわかっていてやっている。

「さぁさぁさぁ」

「嫌だ嫌だ。やだやだやだやだや――」

無情にも押し出される二人乗りの浮輪。

 激流の恐怖に最早、悲鳴すら上げることができなかった。

怖くて自分のページを確認できていなかったのですが、ブックマーク? と評価? (仕組みをよく理解していない)をしてくれた方がいらっしゃるみたいで……有難い限りです。そのおかげで、一瞬ですがランキングに載れました! これからも、引き続きお楽しみいただければ幸いです。

追記、次から更新日時が変わり、金曜日と日曜の夜頃になります。なので、次は日曜日になります。投稿時間安定してなくてすみません……

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