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少しリーズナブルで、少し高い夏。

作者: 鬼灯菜月

千鶴チヅル

 ・子供っぽい性格をしている。

 ・そこそこの知識があり、頭が良い。

 ・普段の言動から頭が余ります良くないと思われがちだが、わざと馬鹿を行っている。



隼人ハヤト

 ・少し落ち着いてるように見えるが、子供っぽい性格。

 ・会話にたまに冗談?ユーモア?を入れる事がある。

 ・千鶴がわざと馬鹿を行っている事を知っており、一緒になって楽しんでいる。


________________________

千鶴

 それじゃあ、ジャンケンね。ほら、いくよ?

千鶴

 最初はグー!ジャンケン、ポン!



千鶴

 よしっ。勝ちぃ~~♪


何度目かの、屋台の待ち時間。

残り人数がわずかになった時の恒例時間。


隼人

 はぁ…またかぁ…、お前ジャンケン強すぎない?

千鶴

 フッフッフ……、私はこういうジャンケンでの勝率は高いのだよ!


千鶴

 その勝率、なんと33.333333…おっとっと、危ない危ない。これじゃあ永遠に続いてしまう…。

隼人

 つまり、勝率は普通ってことか。


千鶴

 うん。ただ、君との勝負に限ってはその限りじゃないけどね。


隼人

 その心は?


千鶴

 だって君、ジャンケンで最初にチョキ出しがちなんだよね。

千鶴

 だから、君との勝負に限っては勝率大体…70%くらい?


隼人

 何だそれ、俺そんなにチョキ出してたっけ?


ジィーッという音と、バッグから財布を出す動作。

周りの喧騒に、人混みを掻き分けて進む通行人。列を割って何処かへと勇む人々。

これこそ夏祭りだ!そう感じられる。


隼人

 ほら、たこ焼き買ってきたぞ。

隼人

 どうぞ、お納めください。お嬢様。


千鶴

 うむ。苦しゅうない!ご苦労であった。

隼人

 …にしても、お前たこ焼き好きな。


隼人

 俺は夏祭りとかで買うほどじゃ無いけど…。どうしてそんなに好きなんだ?


千鶴

 う~ん…、何でだろう……お酒に合うから?

千鶴

 確かに、あんまり考えた事無かったなぁ…。


隼人

 要は、前言ってた焼きそばと同じって事か。


千鶴

 それじゃあ、君はどんな基準で屋台で買ってるんだい?


隼人

 なんだろうな…。

隼人

 ……、雰囲気か?何となく祭りっぽいモノが基準…。かも知れないなぁ。


千鶴

 ん?その言い分だと、たこ焼きはあんまりお祭りっぽくないって聞こえるんだが?

千鶴

 結構お祭り!って感じしない?たこ焼き。


隼人

 確かに、『祭りといえば』ってランキングが有れば、かなり上位に入ってくると思うぞ?

隼人

 ただ食べにくいからあんまり買わないってだけで。


千鶴

 ふ~ん。なるほどねぇ。

千鶴

 まぁ、確かにこんな風にタッパーに入ってるけど、食べにくいっちゃあ食べにくいかぁ。


隼人

 あと、単純に猫舌だからってのも有るかもだけどな。


「なるほどねぇ~。」なんて空返事しながら、たこ焼きを1つ頬張る。


千鶴

 ……!?アッッツっい!!


隼人

 はぁ…。1個丸々頬張るからそうなるんだぞ…。

隼人

 ほら、お茶飲め。お茶…。


千鶴

 うん…ありがと。


隼人

 はぁ…。落ち着いたか?じゃあ、そろそろ移動するか。

隼人

 もうすぐ始まるぞ。


千鶴

 へぇっ?もうそんな時間?


千鶴

 時間経つの早いなぁ~…。

隼人

 それが祭りの良いところだろ?


隼人

 そういう、名残惜しい所に情緒ってのがあると思うんだよ。


千鶴

 えぇ~~そうかなぁ…、こういう楽しいことは長く続いてほしいじゃないか…。

隼人

 確かに、それも一理ある。


千鶴

 だよねぇ~。



千鶴

 それにしても、子供は元気だねぇ~

隼人

 うん?どうした?


千鶴

 う~ん…、こうして意識して見てみたら、スッゴいはしゃいでるなぁ…って思ってね。


千鶴

 さっきすれ違った子がね、金魚すくいの金魚を持って走ってたのを見たから。

隼人

 あぁ、なるほど。


隼人

 だけど、金魚すくいか…。あれ、掬うだけ掬って、結局は親が育てるんだよな。

千鶴

 あ~、確かにねぇ…。


千鶴

 だからこそ、最近は金魚じゃなくて、スーパーボールになってるんじゃない?

千鶴

 アレって、元々……ではないけど、昔はミドリガメを掬う屋台があったくらいだから。


隼人

 ミドリガメ?

千鶴

 うん。


千鶴

 分かりやすく言うと、ミシシッピアカミミガメっていうのかな。


隼人

 あぁ~、あの特定外来種とかいうヤツ?

千鶴

 うん。条件付だから飼う事はできるけどね。


千鶴

 放流して、生態系云々があったから無くなったんじゃない?


隼人

 要は、それと同じような理由で金魚すくいが減ってると?

千鶴

 うん。


千鶴

 違うところは、生態系にあんまり影響を与えないから、禁止されないで、減ってるだけって事かな。

隼人

 はぁ~ん…そういう背景もあるのか。


千鶴

 いや、知らないよ?

千鶴

 だから、殆どが私の予想と考察だね。

隼人

 なんだそれ。(少し笑い気味に)


千鶴

 …なんて、下らない話をしてたら着いちゃったね。

千鶴

 はいっ♪到~着っ!っと。


あらかじめ置いといたレジャーシートの前でクルっと1回転して振り返った。


隼人

 あんまりはしゃぐなよ、周りにも人が居るんだから。


千鶴

 うぅ…、わかってるってぇ…。それにさぁ、彼女が可愛く振り返ったんだから、そこは可愛いって言わなきゃだろうに…。


隼人

 いや、俺が言わないって分かっててやっただろ?

千鶴

 それはそう。


千鶴

 しかし、君はそういう所を直せばスゴく女の子からモテると思うよ。

隼人

 いや、いきなり可愛いって言ったら、それはそれでキモいだろ…。

千鶴

 あぁ~、確かに。そういう事もあるか。


バサッとレジャーシートに乗ってた落ち葉を払って、座る。


千鶴

 んっ、しょっと。ほら、座らないの?


隼人

 俺に食べ物持たせてるお前がそれ言うか?

千鶴

 うむ、ご苦労であった。


隼人

 はぁ……。ほら、たこ焼き。

千鶴

 ありがと~。



千鶴

 フッフッフ…。

千鶴

 ここに座ったな?座ったという事は、それはつまりお酒を飲むという事だ!


鞄のボタンを外して、中から缶を2本取り出し、隼人に一本差し出した。


千鶴

 ほいっ。君の分。


千鶴

 しかし、パイナップルのチューハイとは…。こういうのもあるんだねぇ~。


隼人

 気になるなら、一口要るか?

千鶴

 おぉ~殊勝な心がけだね。それなら私も一口あげよう。


隼人

 いや、確かお前のって、ハイボールだったよな?

隼人

 それならいいよ。


隼人

 というか、断るの分かってて言ってるな?

千鶴

 そりゃあ、勿論。……でも、申し訳ないから、一口あげたい気持ちは本当だよ。


千鶴

 …という事で、私がたこ焼きを食べさせてあげよう。

隼人

 いやっ、大丈夫だから…

千鶴

 そうはさせない!ほら、口開けてっ。


プラスチック製のタッパーを開き、1つに爪楊枝を刺して、隼人の方へ運ぶ。

そのままの勢いで、開いた口に向かってたこ焼きをねじ込んだ。


千鶴

 ほら、あ~~ん。


千鶴

 流石にもう冷めてるから一口でいけただろう?

千鶴

 これなら、猫舌な君でも大丈夫だと思うけど…。


隼人

 まぁ、確かに冷めてたよ…。

千鶴

 うん。美味しかったなら良かった。


隼人

 不本意ながらにも貰っちゃったし、ほら。

千鶴

 おぉ~!パイナップルチューハイ。初めて飲むな…。

隼人

 案外美味しいぞ?


隼人から手渡された、パイナップルチューハイを一口飲んでみた。


千鶴

 ほぉ、果汁20%でこんなにもパイナップル感…これは…。


隼人

 な?美味しいだろ?

千鶴

 そうだねぇ…。たまに飲むにはいいかもね。

隼人

 たまにか…。


千鶴

 普段飲むには、ちょっと甘いかなぁ…。


千鶴

 やっぱり私は、ハイボールとか日本酒みたいな甘くない……なんだろう、あえて悪く言うなら、ジュースみたいなのじゃない方が好きかなぁ…。

千鶴

 ただし、ビールは除く。


隼人

 相変わらずビールは苦手か。

千鶴

 うん…あの苦い感じがね…。

千鶴

 私はやっぱり、ハイボールかな。


『カシュッ』という音と共に、缶の圧力が抜ける。


千鶴

 …なんというか、パイナップルの時も思ったけど…温いね。


隼人

 そりゃあ、会場に来る前に薬局で買ったんだから。

隼人

 屋台で買うよりも、多少安く買えるからって、先に買うべきじゃ無かったかもな。


千鶴

 それ、去年も言ってなかった?

千鶴

 なんかデジャブを感じたよ。

隼人

 あ~、確かに。言ってたかもな。


千鶴

 ふふっ。あれだ!君風に言うなら、こういうのを情緒があるって言うんじゃないかい?

千鶴

 醍醐味ってヤツだよ!

隼人

 醍醐味ね…。確かに、そうかもしれないな。

千鶴

 でしょ?


千鶴

 こうやって、たこ焼き食べて…お酒飲んで。待ってる時間が情緒とか、風情ってモノなのかも知れないね。

隼人

 まあ、その飲んでるお酒は温いけどな。


千鶴

 あ~っ!そういう風に水を差して!本当に…。


後に続く言葉を紡ぐ前に、夜空が軽く明るくなった。

その後すぐに大きな、お腹に響く音が響く。


隼人

 っ!?…。ビックリしたぁ。

千鶴

 ね。いきなり始まったから驚いたよ。


隼人

 その割には全然ビックリしてる感じしないけど?

千鶴

 確かに、そんなに驚いてはいないね。

千鶴

 君が驚きすぎって事じゃない?


隼人

 いいや!俺は普通だね。むしろお前がビビらなすぎだと思う。

千鶴

 う~ん、そうかなぁ…。周りを見てみても君ほど驚いてる人は居ないけど?


隼人

 ……、確かに、ビックリしやすい体質かもしれない。

隼人

 でも、お前には言われたくないね!


千鶴

 ほう。その心は?


隼人

 ホラゲーで驚いてる所を見たこと無い。

隼人

 むしろ、ビックリポイントで笑ってるんだぞ?


千鶴

 えぇ~。

千鶴

 あれは笑いどころじゃん!現実で考えると、そうは成らないじゃん、ってところとか。


隼人

 そういうのが怖いんだろ?

千鶴

 うぅ~ん…、わかったよぅ…。

千鶴

 ほら、花火見よう。


「誤魔化したな…?」何て言う隼人を無視して、たこ焼きを食べていく。


…、暫く花火を観賞しながら談笑をして、最後のたこ焼きに爪楊枝に刺した。

((アドリブしてもいいよ~!歓迎。)(寧ろみたい!))


千鶴

 う~ん!美味しかったぁ。


隼人

 …、ハハッ。

隼人

 花より団子なんな、お前。


千鶴

 うん。まぁね、雰囲気を楽しんでるんだよ。

千鶴

 お酒とぉ~、おつまみ。それから、花火ですよ。

隼人

 いや、こんなに綺麗な大輪の花が咲いてるのに、出てくるのは最後なのか…。


千鶴

 でも実際、大昔と違って現代は科学が発展してる訳ですよ。

千鶴

 だから、娯楽が多い。…飽きが来るのが早いんだよ。多分。


隼人

 要は、飽きてきたと。

千鶴

 うん。

千鶴

 綺麗だけど、動いてない期間…拘束時間が長いんだ。

隼人

 それじゃあ、そろそろ行くか?


簡単に荷物を纏めて、立ち上がって歩き始める。


隼人

 それにしても、人が多いな。

千鶴

 これでも、まだマシな方なんだけどね。


隼人

 だな…、ちょっと遠い所から見てたから良いけど、近くとか景色が良い所だったらスゴいだろうな。

千鶴

 ね~。


隼人

 しかし、離れても耳がちょっと変だな。

千鶴

 あ~。大きい音に慣れてたからね…。

千鶴

 ひょっとして、これも醍醐味ってヤツなのでは。

隼人

 かもな。


千鶴

 …して、隼人くんや。君、この後のご予定は?

隼人

 この後は何もないから、全然付き合えるぞ?

千鶴

 そう?すごく助かる。


隼人

 それで、どうした?

千鶴

 うん。ちょっと緊急事態でね。


千鶴

 蚊に刺されちゃったみたいで、スゴい痒いという重大事件が起こってるんだよ…。


隼人

 じゃあ、帰りにまた薬局寄ってから行くか。

千鶴

 うん。ありがとぉ~…。


千鶴

 ……、あ~あ…。っ…はぁ…。


千鶴

 いやぁ~っ、終わっちゃったね…。夏祭り。

隼人

 楽しかったか?

千鶴

 そりゃあ、もちろん!


千鶴

 でも、やっぱり早く終わっちゃうね…。


千鶴

 ……、う~ん…。

千鶴

 君はお祭りは、早く終わるのが風情があって良いっていってたけど、やっぱり私はそうは思えないや。


隼人

 えっ?

千鶴

 だって、私はもっと君と一緒に遊んでたい。


千鶴

 もっと一緒に居たいから。


フフッって笑いながら続ける。


千鶴

 絶対、また来ようね!


早足で前に出て、笑顔でそう問いかけた。

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