少しリーズナブルで、少し高い夏。
千鶴
・子供っぽい性格をしている。
・そこそこの知識があり、頭が良い。
・普段の言動から頭が余ります良くないと思われがちだが、わざと馬鹿を行っている。
隼人
・少し落ち着いてるように見えるが、子供っぽい性格。
・会話にたまに冗談?ユーモア?を入れる事がある。
・千鶴がわざと馬鹿を行っている事を知っており、一緒になって楽しんでいる。
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千鶴
それじゃあ、ジャンケンね。ほら、いくよ?
千鶴
最初はグー!ジャンケン、ポン!
千鶴
よしっ。勝ちぃ~~♪
何度目かの、屋台の待ち時間。
残り人数がわずかになった時の恒例時間。
隼人
はぁ…またかぁ…、お前ジャンケン強すぎない?
千鶴
フッフッフ……、私はこういうジャンケンでの勝率は高いのだよ!
千鶴
その勝率、なんと33.333333…おっとっと、危ない危ない。これじゃあ永遠に続いてしまう…。
隼人
つまり、勝率は普通ってことか。
千鶴
うん。ただ、君との勝負に限ってはその限りじゃないけどね。
隼人
その心は?
千鶴
だって君、ジャンケンで最初にチョキ出しがちなんだよね。
千鶴
だから、君との勝負に限っては勝率大体…70%くらい?
隼人
何だそれ、俺そんなにチョキ出してたっけ?
ジィーッという音と、バッグから財布を出す動作。
周りの喧騒に、人混みを掻き分けて進む通行人。列を割って何処かへと勇む人々。
これこそ夏祭りだ!そう感じられる。
隼人
ほら、たこ焼き買ってきたぞ。
隼人
どうぞ、お納めください。お嬢様。
千鶴
うむ。苦しゅうない!ご苦労であった。
隼人
…にしても、お前たこ焼き好きな。
隼人
俺は夏祭りとかで買うほどじゃ無いけど…。どうしてそんなに好きなんだ?
千鶴
う~ん…、何でだろう……お酒に合うから?
千鶴
確かに、あんまり考えた事無かったなぁ…。
隼人
要は、前言ってた焼きそばと同じって事か。
千鶴
それじゃあ、君はどんな基準で屋台で買ってるんだい?
隼人
なんだろうな…。
隼人
……、雰囲気か?何となく祭りっぽいモノが基準…。かも知れないなぁ。
千鶴
ん?その言い分だと、たこ焼きはあんまりお祭りっぽくないって聞こえるんだが?
千鶴
結構お祭り!って感じしない?たこ焼き。
隼人
確かに、『祭りといえば』ってランキングが有れば、かなり上位に入ってくると思うぞ?
隼人
ただ食べにくいからあんまり買わないってだけで。
千鶴
ふ~ん。なるほどねぇ。
千鶴
まぁ、確かにこんな風にタッパーに入ってるけど、食べにくいっちゃあ食べにくいかぁ。
隼人
あと、単純に猫舌だからってのも有るかもだけどな。
「なるほどねぇ~。」なんて空返事しながら、たこ焼きを1つ頬張る。
千鶴
……!?アッッツっい!!
隼人
はぁ…。1個丸々頬張るからそうなるんだぞ…。
隼人
ほら、お茶飲め。お茶…。
千鶴
うん…ありがと。
隼人
はぁ…。落ち着いたか?じゃあ、そろそろ移動するか。
隼人
もうすぐ始まるぞ。
千鶴
へぇっ?もうそんな時間?
千鶴
時間経つの早いなぁ~…。
隼人
それが祭りの良いところだろ?
隼人
そういう、名残惜しい所に情緒ってのがあると思うんだよ。
千鶴
えぇ~~そうかなぁ…、こういう楽しいことは長く続いてほしいじゃないか…。
隼人
確かに、それも一理ある。
千鶴
だよねぇ~。
千鶴
それにしても、子供は元気だねぇ~
隼人
うん?どうした?
千鶴
う~ん…、こうして意識して見てみたら、スッゴいはしゃいでるなぁ…って思ってね。
千鶴
さっきすれ違った子がね、金魚すくいの金魚を持って走ってたのを見たから。
隼人
あぁ、なるほど。
隼人
だけど、金魚すくいか…。あれ、掬うだけ掬って、結局は親が育てるんだよな。
千鶴
あ~、確かにねぇ…。
千鶴
だからこそ、最近は金魚じゃなくて、スーパーボールになってるんじゃない?
千鶴
アレって、元々……ではないけど、昔はミドリガメを掬う屋台があったくらいだから。
隼人
ミドリガメ?
千鶴
うん。
千鶴
分かりやすく言うと、ミシシッピアカミミガメっていうのかな。
隼人
あぁ~、あの特定外来種とかいうヤツ?
千鶴
うん。条件付だから飼う事はできるけどね。
千鶴
放流して、生態系云々があったから無くなったんじゃない?
隼人
要は、それと同じような理由で金魚すくいが減ってると?
千鶴
うん。
千鶴
違うところは、生態系にあんまり影響を与えないから、禁止されないで、減ってるだけって事かな。
隼人
はぁ~ん…そういう背景もあるのか。
千鶴
いや、知らないよ?
千鶴
だから、殆どが私の予想と考察だね。
隼人
なんだそれ。(少し笑い気味に)
千鶴
…なんて、下らない話をしてたら着いちゃったね。
千鶴
はいっ♪到~着っ!っと。
あらかじめ置いといたレジャーシートの前でクルっと1回転して振り返った。
隼人
あんまりはしゃぐなよ、周りにも人が居るんだから。
千鶴
うぅ…、わかってるってぇ…。それにさぁ、彼女が可愛く振り返ったんだから、そこは可愛いって言わなきゃだろうに…。
隼人
いや、俺が言わないって分かっててやっただろ?
千鶴
それはそう。
千鶴
しかし、君はそういう所を直せばスゴく女の子からモテると思うよ。
隼人
いや、いきなり可愛いって言ったら、それはそれでキモいだろ…。
千鶴
あぁ~、確かに。そういう事もあるか。
バサッとレジャーシートに乗ってた落ち葉を払って、座る。
千鶴
んっ、しょっと。ほら、座らないの?
隼人
俺に食べ物持たせてるお前がそれ言うか?
千鶴
うむ、ご苦労であった。
隼人
はぁ……。ほら、たこ焼き。
千鶴
ありがと~。
千鶴
フッフッフ…。
千鶴
ここに座ったな?座ったという事は、それはつまりお酒を飲むという事だ!
鞄のボタンを外して、中から缶を2本取り出し、隼人に一本差し出した。
千鶴
ほいっ。君の分。
千鶴
しかし、パイナップルのチューハイとは…。こういうのもあるんだねぇ~。
隼人
気になるなら、一口要るか?
千鶴
おぉ~殊勝な心がけだね。それなら私も一口あげよう。
隼人
いや、確かお前のって、ハイボールだったよな?
隼人
それならいいよ。
隼人
というか、断るの分かってて言ってるな?
千鶴
そりゃあ、勿論。……でも、申し訳ないから、一口あげたい気持ちは本当だよ。
千鶴
…という事で、私がたこ焼きを食べさせてあげよう。
隼人
いやっ、大丈夫だから…
千鶴
そうはさせない!ほら、口開けてっ。
プラスチック製のタッパーを開き、1つに爪楊枝を刺して、隼人の方へ運ぶ。
そのままの勢いで、開いた口に向かってたこ焼きをねじ込んだ。
千鶴
ほら、あ~~ん。
千鶴
流石にもう冷めてるから一口でいけただろう?
千鶴
これなら、猫舌な君でも大丈夫だと思うけど…。
隼人
まぁ、確かに冷めてたよ…。
千鶴
うん。美味しかったなら良かった。
隼人
不本意ながらにも貰っちゃったし、ほら。
千鶴
おぉ~!パイナップルチューハイ。初めて飲むな…。
隼人
案外美味しいぞ?
隼人から手渡された、パイナップルチューハイを一口飲んでみた。
千鶴
ほぉ、果汁20%でこんなにもパイナップル感…これは…。
隼人
な?美味しいだろ?
千鶴
そうだねぇ…。たまに飲むにはいいかもね。
隼人
たまにか…。
千鶴
普段飲むには、ちょっと甘いかなぁ…。
千鶴
やっぱり私は、ハイボールとか日本酒みたいな甘くない……なんだろう、あえて悪く言うなら、ジュースみたいなのじゃない方が好きかなぁ…。
千鶴
ただし、ビールは除く。
隼人
相変わらずビールは苦手か。
千鶴
うん…あの苦い感じがね…。
千鶴
私はやっぱり、ハイボールかな。
『カシュッ』という音と共に、缶の圧力が抜ける。
千鶴
…なんというか、パイナップルの時も思ったけど…温いね。
隼人
そりゃあ、会場に来る前に薬局で買ったんだから。
隼人
屋台で買うよりも、多少安く買えるからって、先に買うべきじゃ無かったかもな。
千鶴
それ、去年も言ってなかった?
千鶴
なんかデジャブを感じたよ。
隼人
あ~、確かに。言ってたかもな。
千鶴
ふふっ。あれだ!君風に言うなら、こういうのを情緒があるって言うんじゃないかい?
千鶴
醍醐味ってヤツだよ!
隼人
醍醐味ね…。確かに、そうかもしれないな。
千鶴
でしょ?
千鶴
こうやって、たこ焼き食べて…お酒飲んで。待ってる時間が情緒とか、風情ってモノなのかも知れないね。
隼人
まあ、その飲んでるお酒は温いけどな。
千鶴
あ~っ!そういう風に水を差して!本当に…。
後に続く言葉を紡ぐ前に、夜空が軽く明るくなった。
その後すぐに大きな、お腹に響く音が響く。
隼人
っ!?…。ビックリしたぁ。
千鶴
ね。いきなり始まったから驚いたよ。
隼人
その割には全然ビックリしてる感じしないけど?
千鶴
確かに、そんなに驚いてはいないね。
千鶴
君が驚きすぎって事じゃない?
隼人
いいや!俺は普通だね。むしろお前がビビらなすぎだと思う。
千鶴
う~ん、そうかなぁ…。周りを見てみても君ほど驚いてる人は居ないけど?
隼人
……、確かに、ビックリしやすい体質かもしれない。
隼人
でも、お前には言われたくないね!
千鶴
ほう。その心は?
隼人
ホラゲーで驚いてる所を見たこと無い。
隼人
むしろ、ビックリポイントで笑ってるんだぞ?
千鶴
えぇ~。
千鶴
あれは笑いどころじゃん!現実で考えると、そうは成らないじゃん、ってところとか。
隼人
そういうのが怖いんだろ?
千鶴
うぅ~ん…、わかったよぅ…。
千鶴
ほら、花火見よう。
「誤魔化したな…?」何て言う隼人を無視して、たこ焼きを食べていく。
…、暫く花火を観賞しながら談笑をして、最後のたこ焼きに爪楊枝に刺した。
((アドリブしてもいいよ~!歓迎。)(寧ろみたい!))
千鶴
う~ん!美味しかったぁ。
隼人
…、ハハッ。
隼人
花より団子なんな、お前。
千鶴
うん。まぁね、雰囲気を楽しんでるんだよ。
千鶴
お酒とぉ~、おつまみ。それから、花火ですよ。
隼人
いや、こんなに綺麗な大輪の花が咲いてるのに、出てくるのは最後なのか…。
千鶴
でも実際、大昔と違って現代は科学が発展してる訳ですよ。
千鶴
だから、娯楽が多い。…飽きが来るのが早いんだよ。多分。
隼人
要は、飽きてきたと。
千鶴
うん。
千鶴
綺麗だけど、動いてない期間…拘束時間が長いんだ。
隼人
それじゃあ、そろそろ行くか?
簡単に荷物を纏めて、立ち上がって歩き始める。
隼人
それにしても、人が多いな。
千鶴
これでも、まだマシな方なんだけどね。
隼人
だな…、ちょっと遠い所から見てたから良いけど、近くとか景色が良い所だったらスゴいだろうな。
千鶴
ね~。
隼人
しかし、離れても耳がちょっと変だな。
千鶴
あ~。大きい音に慣れてたからね…。
千鶴
ひょっとして、これも醍醐味ってヤツなのでは。
隼人
かもな。
千鶴
…して、隼人くんや。君、この後のご予定は?
隼人
この後は何もないから、全然付き合えるぞ?
千鶴
そう?すごく助かる。
隼人
それで、どうした?
千鶴
うん。ちょっと緊急事態でね。
千鶴
蚊に刺されちゃったみたいで、スゴい痒いという重大事件が起こってるんだよ…。
隼人
じゃあ、帰りにまた薬局寄ってから行くか。
千鶴
うん。ありがとぉ~…。
千鶴
……、あ~あ…。っ…はぁ…。
千鶴
いやぁ~っ、終わっちゃったね…。夏祭り。
隼人
楽しかったか?
千鶴
そりゃあ、もちろん!
千鶴
でも、やっぱり早く終わっちゃうね…。
千鶴
……、う~ん…。
千鶴
君はお祭りは、早く終わるのが風情があって良いっていってたけど、やっぱり私はそうは思えないや。
隼人
えっ?
千鶴
だって、私はもっと君と一緒に遊んでたい。
千鶴
もっと一緒に居たいから。
フフッって笑いながら続ける。
千鶴
絶対、また来ようね!
早足で前に出て、笑顔でそう問いかけた。