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王女様からの呼び出し

 結局その後、特にお咎めもなく普通に過ごしていました。


「ねぇセリーヌ、来月イザベル様のご成婚があるじゃない?ご家族もこちらへ来られるのでしょう?シルヴァン君と始めてのご対面かしら?」

「そうなるわね」


産後手紙を書いて飛ばしました。両親はビックリしてひっくり返ったそうです。


「そういえば聞いた?イザベル様のお相手よ。今まで全く国交がなかった国の王子らしいのよ。この前の建国記念日にいらしてたそうなのだけれど、セリーヌは夜会で見た?」

「いいえ見てないわ。ローストビーフが美味しそうだったけど」

「あらいいわねローストビーフ。そうじゃなくて、ご成婚前にお二人が揉めてるらしいのよ」

「へぇ?確か王子が入り婿になるのよね?この国の家具の様式が合わなかったのかしら?」

「どうかしらね?まぁご成婚の延期はないとは思うけど。図書館はお休みね。セリーヌは夜会かしら?」

「でもシルヴァンいるのよね。実家のお手伝いさんに頼もうかしら?昼のご成婚パレードは見たいわね」

「そうね、中々見る機会ないし特等席でみたいわ。でももうパレードで通過予定の大通りのレストランやパブなんかは予約で満席らしいわよ」

「そうよね。でもシルヴァン連れての立ち見は難しいわ。私背高くないし」

「⋯⋯あれ?セリーヌの部屋って大通りに面してるわよね?見えるんじゃないかしら?」

「あら?盲点だったわ。だったらエステルも一緒に家で見ましょうよ」

「やったぁ!」



「ファブリスさん、王宮からの使者がいらしてます。すぐに行ってください」

「えぇ?!」


仕事をしていると王宮の使者から呼び出しを受けました。まさか⋯⋯


「あの、私がセリーヌ・ファブリスですが」

「お仕事中申し訳ございません。私はイザベル王女様の秘書官をしているイヴェス・ロジャーと申します。イザベル様がファブリス様にお越し願いたいとの事でお迎えに参りました。図書館の館長には許可を頂いておりますのでご安心下さい」

「は、はい」


ロジャーさん、さすが王女の秘書官。逃げ道ゼロです。


私は絶望的な気持ちでロジャーさんの後ろを歩きます。きっとシルヴァンが立ち入り禁止空間を領空侵犯したのでしょう。最近音速ですから。きっと燕獣人です。


「失礼します。ファブリス様をお連れしました」

「どうぞ」

「し、失礼します」


どうやらここはイザベル様の談話室の様な場所です。裁判所や牢獄ではありませんでした。

少し安心しましたが、初めての王女様との対面に緊張が高まります。


「ごめんなさいね、仕事中に。お茶をどうぞ」

「ありがとうございます」


それから当たり障りのない会話をして、ついに本日の核心に迫ります。


「お子さんがいるわよね?シルヴァン君だったかしら?」

「申し訳ございません。領空侵犯ですね。きつく言い聞かせますからお許し願えないでしょうか?」

「え?領空侵犯?」

「もしかしてそれ以上でしたか?それとも領土に侵入しましたか?」


「「⋯⋯⋯⋯」」


「ファブリスさん、あなた少し変わってるって言われない?」

「ご存じでしたか?近頃そう評価されている様です」


出産騒動から私の評価が「変わってる人」になりました。羽の生えた子の親ですからそうもなるでしょう。


「⋯⋯最近なのかしら?まあいいわ。シルヴァン君の父親について教えて欲しいの。私的な事だし、話にくい事はわかるわ。一人で育ててると聞いたし。でもこちらも少し思う所があるの」

「申し訳ございません。知らないのです。ゾウリムシだとは思いますが、燕なのかと最近決めかねておりまして」


「⋯⋯⋯⋯ファブリス語の通訳者が至急必要だわ」

「ファブリス語ですか?私の姓と同じ名の言語ですね。私は古語にはそれなりに通じておりますが⋯⋯」


 それから王女様に私が逆朝チュンした事、パンツの忘れ物があって、そのパンツを物置に隠した事、三か月後に出産した話、産後一月で職場復帰した事、今息子が燕並みだとお話ししました。


「まとめると、ゾウリムシは下着の柄ね?燕はシルヴァン君が飛ぶ速度の話ね?では父親の名前も顔もわからないと言う事でいい?」

「ワラジムシだった気もします。ですがシルヴァンは銀髪で金の目をしています。父親の容姿はきっとその様な感じなのでしょう」


「そう。では違うわね」


「変わった下着でしたし、きっと美的感性に問題があるのかもしれません」

「⋯⋯⋯⋯あなたを一晩でも求めた人なのよね?あなたそれでいいの?」

「なんと?!」


可笑しな感性のワラジムシに選ばれた私もワラジムシ並みだったのですね。


「イザベル王女様は俯瞰的(ふかんてき)ですね。目から鱗でした」

「はぁ⋯⋯もうイザベルと呼んで。あなたに気を使われると疲れるわ。私も王女としての仮面を外させてもらうわね。こんな経験初めてだわ」

「初体験ですか?それでお疲れなのですね」

「はは⋯⋯⋯⋯そうだここにあるお菓子シルヴァン君に持って行ってね。今度シルヴァン君連れて遊びに来なさいよ。私子供は好きなの」

「ありがとうございます」


私は咎められることもなく、お菓子を頂いて談話室を後にしました。



「ちょっと!セリーヌ何があったのよ?王女様から呼び出しを受けたのでしょう?」

「エステル、私こそがゾウリムシだったのよ。それに王女様は気づかせてくれたの」

「はぁ?何用だったのよ?」

「ファブリス語って知ってる?通訳が必要らしいわ。」

「⋯⋯⋯⋯?」


「それに王女様は初体験でお疲れなのよ」

「え~?!ご成婚前じゃない」

「王女様は子供がお好きらしいの。高級なお菓子を沢山もらったわ」

「子供?!マズイわよ?!口封じにお菓子をもらったの?」


「親から子への遺伝について関心がおありなのよ。髪の色とか」

「父親誰よ?!お婿さんこの国にまだ来てないわよ⋯⋯髪の色同じならいいけど⋯⋯」


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