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職場復帰

「少し買い物が必要かしら?明日からの仕事はどうしましょう?」


 私は職場の図書館へ事情を説明した手紙を書き、魔力でそれを飛ばしました。人間には皆、大小の違いがあれど魔力があります。町学校で皆習うので簡単な魔法が使えます。

はて?この子は魔力があるのでしょうか?獣人は魔力が無いと聞きます。

まだ赤ちゃんですし、気にする事はないですね。



「ちょっと!!セリーヌいるの?!開けなさい!」

「はぁい?」


ベッドで寝ているとエステルがやってきました。


「あ、あんたね!変な手紙送って来るからみんなビックリしちゃったのよ!代表して私がセリーヌに会いに来たの。状況を説明して!出産しましたとか、育児休暇申請できますか?とかいきなり何事!?」


「そのままなのよ?」

「フェフェエ~」

「あら起きちゃったわよ。エステルみて?可愛いでしょ?」

「?!えぇぇ?どこから赤ちゃん盗んできたのよぉ!それはダメよセリーヌ、お母さんの元に戻して来なさい!犯罪よ!」


動転しているエステルに説明しました。腹痛を起こし、そのまま産まれたと。


「あ、あなたねぇもう最強よ?出産は本来命がけなのよ?お産婆さん無しに一人ですべてこなしたの?」

「人間じゃなかったのよ。だからだと思う」

「⋯⋯あ、ごめん。セリーヌの思考についていけない」

「鳥なの」

「⋯⋯」

「あ、ごめん言葉が足りなかったかしら?ゾウリムシは鳥だったのよ」

「⋯⋯」

「エステルどうしたの?大丈夫?エステルー?」


エステルが動かなくなってしまいました。ちょうど消毒に使った火酒があるので気付けに飲ませましょうか。


「ち、ちょっと!何飲ませようとしてるのよ!そうじゃない、すべてがおかしいでしょ?ワラジムシの男が父親だとして、妊娠期間も合わないし、鳥って何よ?鳥獣人なんて聞いたことないわよ?狼系とか猫科は聞くけど」

「そう言われても⋯⋯獣人だから妊娠期間が短かったり、お産が楽だったり、小さく産まれたのかなぁと。エステル見て背中、羽があるのよ」


「は⋯⋯羽⋯⋯本当だわ。これは鳥かもしれない。私の人生で一番驚いた一日だわ。もう無いわよね?これ以上は?」

「分かるわ。私も驚いたもの。今朝獣医さんに駆け込んだのよ」

「獣医?!あなた⋯⋯もう一度私を驚かせたわね。うん。もういいや。とりあえず体調はどうなの?困ってる事は?」


優しいエステルは私に代わり、買い物や掃除をしてくれました。

職場にも説明してくれるらしく、エステルに頼り切りで申し訳ないです。今度エステルの好きな舞台のチケットでも贈りましょう。



そして一月後


「シルヴァン、今日から王宮保育所へ行くのよ。母はお仕事に復帰ですからね」

「んー」


出産から一月、私は職場に復帰します。働かざる者家賃は払えません。体も元気一杯ですし、息子のシルヴァンの恐るべき成長で保育所に預けても大丈夫だと思えたので。



「おはようございます。シルヴァン・ファブリスです。今日からよろしくお願いいたします」

「おはようございます。お預かりしますね!シルヴァン君おいで」

「ん」


では一月ぶりの職場へ


「館長今日から復帰いたします。またよろしくお願いいたします」

「お!元気だったか?何だか大変だったみたいだな、これからも頑張ってな」


とても理解のある素敵な職場です。

さて、古文書の翻訳の続きを進めましょう。一月分の遅れを取り戻すために集中します。


「コツコツ」


「コツコツコツ」

「ん?誰ですか?」


先ほどからコツコツ音がしますね。でも部屋には誰もいませんし、扉にはベルがあります。あれですか?お化けでしょうか、見て見たいですね。弟達に自慢出来ます。


「チリンチリン」

「どうぞ」


すると扉のベルが鳴りました。


「すみません!保育所の者ですが、息子さんのシルヴァン君が見当たらないんです!ってあぁぁ!!後ろ!」

「はい?あらら、シルヴァンダメでしょう?保育所では大人しくするお約束ですよ?今日は桃買いませんよ?」

「んん⋯⋯」


私の背後の窓にシルヴァンがいました。最近飛ぶようになって困っています。

鳥獣人的には普通なのかもしれませんがここは王宮です。騎士団にスパイ容疑で捕まっても困りますし。


「すみませんでした。逃げそうになったら桃は買わないよ?と脅してください」

「はぁ驚きました。ここ三階ですもの。でも何もなくて良かったです。ではシルヴァン君行きましょうね?ママはお仕事ですから。桃買ってもらえませんよ?」

「ん⋯⋯」



そんな少し騒がしい日々が続き、シルヴァンが産まれてから3か月程経ちました。


「シルヴァン君可愛い~!桃食べる?」

「ん」

「シルヴァン君マジ天使!」

「もうエステルそんなに甘やかしちゃダメよ?世の中は世知辛いのだから」

「でも本当に可愛いもの。この銀の髪も金色の目も綺麗な白い羽根も。ワラジムシはいい仕事したわ」

「そうねぇ私は金髪に緑の目だから、ゾウリムシ由来よねぇ」


そんなある日


「あの、今日保育所にイザベル王女様がいらしてシルヴァン君を熱心に見ていらしたのですが、お知り合いでしょうか?イザベル様は保育所見学とおっしゃっておりましたが、あきらかにシルヴァン君のみを見ていらしたので⋯⋯」

「いえ⋯⋯もしかするとシルヴァンが何かしてしまったのでしょうか?王宮を飛んでいたとか」


夜会などでイザベル王女様を遠くから拝見した事はありますが、個人的な会話も付き合いもありません。多分、いや確実に王宮の立ち入り禁止空間を飛んだのだと思います。


「いえ、最近は保育所から出ていませんよ。先生の背より高く飛んではいけないと決めたので」

「それはいいですね。家もそうします」


一体シルヴァンは何をしてしまったのでしょうか。

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