錬金術士の視点
錬金術とは、何かを作り出す技術だ。
人々はそれを「魔法のような奇跡」と呼ぶこともある。
だが、それは誤解だ。
奇跡ではない。これは理だ。
火が燃え、水が流れ、大地が形を成すように——
物質は、あるべき変化を遂げるだけ。
そこに魔法のような幻想はなく、あるのはただの必然的な結果。
私たち錬金術士は、その理を理解し、意図的に変化を生み出す者に過ぎない。
◆調合とは、可能性を編むこと
たとえば、一握りの薬草。
ただの草と見れば、それは何の役にも立たない。
だが、適切な処理を施せば——
それは傷を癒やし、毒を中和し、命を繋ぐ力へと変わる。
同じ素材でも、混ぜ方ひとつで効果はまるで違う。
加える順番、温度、触媒の選び方……それらの組み合わせが、無数の可能性を生み出す。
(だが、それを「知識」と呼ぶのは安っぽいわね。)
知識とは、既にあるものを知ること。
錬金術とは、まだ見ぬものを生み出すこと。
だから、私は調合をする。
誰も知らない、新しい可能性を見つけるために。
◆錬金術は「解決の技術」
ポーションひとつとっても、求められる形は状況によって違う。
・即効性が求められる戦場の回復薬
・病人の負担を減らすための医療向けの処方
・長期保存が可能な、誰もが扱える常備薬
ただ「回復する薬」ではなく、「どの状況に最適か」を考えるのが錬金術士の役目。
目の前の問題を解決する。
ただそれだけのために、私は調合をする。
◆錬金術士とは、作る者であり、理解する者
世の中には、まだ知られていない素材が無数にある。
薬草、鉱石、魔石、動植物……。
それらが何に使えるかは、誰にもわからない。
だからこそ、私は試す。
・既存の理論では説明できないものを、試して理解する。
・未知の素材を、安全に扱える方法を考える。
・最も効果的な形で、世に還元する。
(でも——それがすべてではない。)
◆錬金術の先にあるもの
すべてを理解し、すべてを作れるようになったとき——私は何を求めるのだろうか。
ただの技術者ではなく、研究者でもなく、創造者としての錬金術士とは何か?
この問いに答えが出る日は、まだ遠い。
でも、それを考えること自体が、きっと錬金術なのだろう。
だから、私は今日も調合する。
知識の先にある「まだ見ぬ可能性」を求めて——。