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9話 新潟

 実は、富山駅を出発して特急電車で新潟駅に行くよりも、北陸新幹線を使い東京駅に行く方が所要時間が短い。


 だからなんだ、と言う話だが、僕はこれを見てひどく感心した。名古屋も交通の便はとても良いと感じていたが、それ以上の速度で東京は便利になっていくのだろう……


 しかし、あかねさんとぎこちなくなっている電車の車内でそれに気がついたため、結局このことは僕の中だけで留めた。



 新潟駅に到着し、僕らは昼食を摂るために駅前の蕎麦屋に入った。あかねさんはこういう、駅前の蕎麦屋をよく好んでいた。そして僕はそばを頼んだり、うどんを頼んだりと場所によって変えていたが、あかねさんは必ずかき揚げそばを食べていた。


 店内にはスーツ姿の男女が肩を触れ合わせながらそばを食べていた。駅前そばのお昼時はサラリーマンにとっての戦場。お互いの邪魔をしないように、素早く食べて素早く店を出ている。


 僕らもそれに倣い、食べるときは無言を貫いた。僕はかけうどん、あかねさんはいつも通りかき揚げそばを食べている。


 しばらく食べ進めたが、ただうどんを啜る何も飽きて僕は天井を見上げた。天井は簡素な木目が並んでいて、壁沿いには一人暮らし用の小さなテレビが設置されていた。


 お昼のニュース番組だ。


『今日は観測史上最強クラスの寒波の到来により、甲信越では大雪が予想されています。お出かけされる方は、路面の凍結や落雪にご注意ください。』


 僕らが旅に出て2週間ほど。12月に入り、寒さはより一層厳しさを増していた。特に日本海側の土地はほぼ毎日雪が降っていた。


 今日はこれから山奥の観光地に行くが、大丈夫だろうか……



 僕らはそこから5分もしないうちに店を出た。食べた後駅の外に出ると、ニュース通りの寒さに身を震わせた。


「山間部では大雪らしいですよ」


「さっきニュースでやってたね」


「予定変えますか?」


 新潟の旅程としては、初日と2日目は新潟の山間部を観光、3、4日目は新潟の市街地を観光するというものだった。


 僕が聞くと、数は先を歩くあかねさんはすぐに答えた。


「これまでも何度か雪の中で観光行ってたし、大丈夫でしょう」


 僕もそれに同意した。聞いてはみたものの、僕もこれまでの旅でも、雪で支障が出たことはなかった。


 今回も一緒の事だと、油断していた。


 しかし、それが結果的に惨事の原因となるのだった。

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