第十二話 危険な一夜が始まる予感
「つまり今すぐ魔王そのものが襲ってくる危険性はないのか。しかし、配下の大攻勢がないとは言い切れないだろう?」
「それも恐らくは大丈夫です。剣一様の前の勇者様との激闘で向こうも疲弊していますから。大攻勢には時間がかかるはずです。」
「・・・・なるほど。」
どうやら俺達はこの世界でも学生としての生活を送れるらしいことが判明した時、アビゲイルが扉の向こうから「剣一様、美野里様。ウルティアが一女アビゲイルでございます。お食事中、失礼いたします。」と、宣言してから部屋の中に入って来た。
アビゲイルは俺達の部屋に入ってきた瞬間、リリアンとヴァイオレットがともにテーブルに着いているのを見て、一瞬、驚いた表情を見せた。彼女の事だ。自分が躾をし、信じている部下二人がまさか身分をわきまえずに勇者たちと一緒に食事している光景に理解できないのだろう。
そのことに美野里が察して「アビゲイルさん。どうぞ、アビゲイルさんもご一緒しませんか? ボク達だけじゃ寂しいから彼女達にもご一緒してもらっているんだ。」とフォローを入れると、アビゲイルは事情を察して安心したようにホッと息をつくと「では、お言葉に甘えて私もご一緒させていただきます。」と言って快諾してくれた。
アビゲイルが歩くたび、たわわに実った果実のように育った乳房が揺れて、それを支えるブラが辛そうに引っ張られる。ピンと張った肩紐に生まれる緊張感と通常の女性なら地肌に接触する箇所がまったくつかずに宙に浮いている姿は圧巻である。
「おお。す、すげぇ・・・・」
俺は感動してつい、乳房を凝視しながら感動の言葉を呟いてしまった。
それを見たアビゲイルは困ったような笑顔を見せながら、「あら。お嫁にもらって下さるなら、その御言葉有難く頂戴いたしますのに・・・・。私、21歳の行き遅れなんです、ごめんなさいね。」などとおどけながら俺の隣に座った。
「21歳で行き遅れっ!? ええと、て、ことは俺の4つ上・・・・?
いや、全然射程圏内ですっ! ぜひ俺と結婚を前提にオッパイ揉ませてくださいっ!」
「アホか~~っ! 君はっ!!
オッパイに目がくらんで、なんてこと言うんだっ! セクハラだぞ、セ・ク・ハ・ラっ!!」
美野里はそう言いながら俺の頭にジュースの入っていたカップを投げる。カンっと高い音が鳴った。。
はっ! いかんいかん。つい、オッパイのせいで自我を失った!!
く、くそー、俺の自我を奪うとは、おのれオッパイめ。なんてけしからんオッパイだっ!! 本気で揉ませてほしいっ!! その豊満な乳房に顔をうずめながらタプンタプン揺すらせてほしいっ!!
などと、未だ俺をトリップに誘うオッパイは・・・・もとい、アビゲイルは困った顔で話題をウルティアの話に変えた。
「それで、父の事なんですが、お陰様で山を越えました。本当にありがとうございました。」
「「・・・おおっ!! 」」
俺と美野里はアビゲイルの報告に歓喜し、無事を祝った。
「おめでとうございます、よくご無事でっ!」
「ありがとうございます。おかげで治癒魔法が仕える者15名、精根尽き果てるかと思うほど魔力を使い切りましたが、何とか命を取り留めました。」
アビゲイルは俺達のお祝いの言葉に感謝の言葉を述べたのち、少し表情を暗くしてから報告を続ける。
「ですが・・・・父の両目は失明したままで・・・・ですから申し訳ございません。皆様をこのパノティアを召喚した張本人でありながら、ここで引退を余儀なくされました。」
アビゲイルはそう言うと立ち上がって俺たち二人に頭を下げた。
「よ、よしてください。お父上は俺を救おうと思って大怪我をしたのです。謝っていただく必要はありません。」
「そ、そうだよ。それよりも落ち着いたら剣一君と御挨拶させていただくので、お父上にどうぞ、ご自愛くださいとお伝えください。」
俺達がそう言うとアビゲイルは俺達の心遣いに感謝して涙をこらえきれずに肩を揺らして泣き出した。しかし、彼女は気丈にも自分の役目を完遂しようと、引きつきながらも報告を続けた。
「ぐすっ・・・・お二人のお心遣い、重ね重ね感謝申し上げます。
それで、父の後任につきましては神殿の長老会が話し合って決めさせていただきますが、後任が決定するまでのしばらくの間は私が父の名代を務め、お二人のお世話を預かることになりました。不調法者ゆえ、至らぬことも多々ありましょうが、よろしくお願いいたします。」
涙ながらの丁寧なあいさつに高校2年の俺達はどうしてよいのかわからずに「あ、はい。よろしくお願いします」と、言うのが精一杯だった。それで、とりあえずアビゲイルには一旦座ってもらうとして、当面の話を聞かせてもらう事にした。
話を進めやすいように美野里が金属製のカップにジュースを注ぎ、それを手渡しながら尋ねる。
「それで、その。先ほどリリアンとヴァイオレットと話をしていた続きを聞きたいのだけどね。
なにか、ボク達を学校へ入れる予定らしいね?」
うまい。俺は美野里が意外と社会性が高い事に感心するばかりである。
その誘導にアビゲイルもようやく平穏を取り戻したのか、穏やかに説明を始める。
「左様にございます。
お二人は勇者様と聖女様として召喚されましたが、この世界の理については何もご存じない状態です。それでは戦う事も世界を清浄にしていただくことも叶いません。
ですから、お二人には先ずはこの世界の理を学んでいただくと、こういうわけでございます。
幸い、この世界にもお二人ぐらいの年齢の王侯貴族の子が通う学問所がございまして、そこで様々なことを学び習得します。その中にはお二人の世界に無かった魔法の使い方などあるのです。この世界で戦わなければいけないお二人には必須科目ですね。
早速ですが、明日から通って頂きたいと思います。」
俺と美野里に異論はない。むしろ、わけの分からない世界でいきなり実戦に放り込まれるよりは何倍もいい。俺達はアビゲイルに「よろしくお願いします。」と言って頭を下げた。
その後、入学の手続きやら、日程の説明を受けてから、時間も時間となり宴は終了となり、俺達は明日に備えて眠ることになった。
だが、この客室の寝室には巨大なベッドが一つしかない。
俺達は顔を見合わせてから、アビゲイルに異議を申し出る。
「美野里と同じベッドで? そ、それってマズくないか?」
「はあっ!? 何を言っているんだ、君は。男同士で寝て何の問題があるというんだい?」
訂正。意義があったのは俺一人で美野里の方は全く問題ないらしい。
だがっ!! しかしっ・・・・・!!
セーラー服姿でも破壊力抜群だった美野里は、今はお姫様のようなナイトドレスのために破壊力三倍ましの美少女になっている。男だけど。
俺は・・・・俺は、正直、困るっ! 理性を保てる自信がないっ!!
俺はアビゲイルの乳揺れを見て理性を失ってしまう程度にちゃんとノーマルだっ!
だが、こいつは女にしか見えない。というか、裸を見た今でも男だと信じられないほど可愛いっ!
そんな可愛い子と一緒のベッドで寝て、道に迷わぬ男子がいるだろうかっ!?
俺がこんなうら若いうちにこんな美少年の色香に迷って、性癖が歪んでしまったら、どうしてくれるというのだっ!? だれが責任を取ってくれるというのだっ!!
俺はすっかり困り果ててアビゲイルにすがるように「だ、だけど、やっぱりマズくないか・・・」というのだったが、その申し出はアビゲイルの右手によって制止されてしまった。
「今宵はどうあってもお二人きりでご一緒に寝ていただきます。
理由は、後になったらお二人にも必ず理解できます。
ですから、どうぞ。お二人一緒に寝てください。決して悪いようにはなりませんので私を信じてください。」
アビゲイルは強い意志を秘めた声でそう言った。




