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政略結婚させられる王女を盗みに来た泥棒と、護る近衛隊長! 幼い頃の約束を守るため命を懸ける

作者: 甘い秋空
掲載日:2023/09/11



「結婚式は、予定どおり行う。ギンチヨは、ここに幽閉されたままだがな」


 いやらしい顔で栗毛の中年男が笑います。この王国の大公です。


 私は、国王の唯一の子供、銀髪のギンチヨです。留学から帰ってきてすぐに、この北の塔に幽閉されました。


 赤く塗られたリップは、逆に寂しさを醸し出します。


 両親である国王夫妻は、別荘で火事に遭って、亡くなりました。


 大公は、唯一の王族である私と結婚し、国王を名乗る計画です。


 学園では魔法の天才と言われたのに、貴族社会では何もできない自分が、とても悲しいです。




 日が沈み、静寂に包まれます。


 ここは4階、王宮の北側に張り出した、幽閉のための孤立した隠し部屋です。


 窓の外は湖、コロシアムがすっぽりと入るくらいの、大きな人工の水面が広がります。


「花嫁さん……」


「だれ?」


 暗闇の中から男の声がしました。


 この部屋に忍び込むとしたら、国宝の転移の魔道具を使うくらいしか思いつきません。


「花嫁を盗みに来た泥棒ですよ」

 全身黒ずくめで、黒猫の仮面をつけた男が言います。


「残念ですが、私を盗んでも、影武者がいるので明日の結婚式に影響はないそうですよ」


 私は、お飾りですから。


「貴女の心を盗みに来たのです」


 泥棒の、このセリフ、昔、どこかで聞いたような、懐かしい気がします……




 突然、部屋の照明が明るく灯りました。


 入口から、大公と護衛兵たちが入り込み、私たちを取り囲みます。


「よく来たね泥棒君。これまで王宮を騒がしてきたようだが、ここでゲームセットだ」


 勝ち誇った顔で栗毛の中年男が笑います。なぜ大公がここに来たのでしょうか。


「これは王族を血に染めた大公君ではありませんか」

 泥棒が言い返します。


「黙れ!」

 大公が、胸のブローチを触りました。


 泥棒の足元に魔法陣が広がり、床の中へ泥棒が吸い込まれていきます。


「これは地獄の扉を開く魔法陣、そのブローチは国宝の魔道具、なぜ貴方が……」


 私は、泥棒が落ちた魔法陣へ駆け寄ります。


「フハハ、私の家は、お前ら王家の命じるまま、人を地獄へ落とす裏の仕事を行ってきたのだよ。知らないとは言わせないぞ」


 大公が鋭い目つきで睨んできました。


「ギンチヨ姫様! ご無事ですか」

 近衛隊長が飛び込んできました。


「「あ!」」

 勢いあまって、魔法陣の中に、私を巻き込んで、二人で、地獄へと落ちていきます。



    ◇



「ギンチヨ姫様、申し訳ありませんでした」

 近衛隊長が土下座して謝ってきます。


 魔法陣によって飛ばされたこの場所は、大きな地下室のようです。コロシアムくらいの広いドームです。


 魔力を吸って光ると言われているヒカリゴケが自生しているようで、なんとか視界が確保できる程度の薄暗い空間です。


「灯よ」

 魔法で、照明を点けます。


「「あ!」」

 ゴミと思っていた数多くの塊は、人の亡骸でした。


 二人で一緒に出口を探します。




「やはり、出口は無いようですね」

 近衛隊長が、あきらめ声で言います。


「最後は、このブローチを使います」

 胸のブローチを手に取って見せます。


「それは?」

「爆薬です。この地下ドームなら、簡単に吹き飛ばすことができます」

 これは国宝級の自爆の魔道具です。


「却下です。姫様が助からないでしょ」

 近衛隊長が私の手から、ブローチを取り上げました。




 亡骸から、何かないか、遺品を探します。


「服装を見ると、位の高い貴族の方々ですね」

 私の声に、近衛隊長は答えません。


「父上……」

 近衛隊長がつぶやき、ヒザをつきました。


 状況を察して、私も手を合わせます。


 この方の衣装は、伝統ある大公の衣装ですよね。


 私の両親である国王と、本来の大公様とは従兄弟の関係です。私も幼いころ、屋敷へ遊びに行っていました。


 しかし、屋敷に賊が入り、本来の大公様は行方不明、家族は全て亡くなりました。


 国王も大公も亡くなったことから、別の従兄弟が、大公を名乗り、この王国を支配したのです。


「これは?」

 近衛隊長が遺品から何かを見つけました。ブローチのようです。



「転移の魔道具です。これがあれば外に出れます」

 私の知識をフル動員して、魔道具を調べます。


「一人用の転移魔道具ですね。誰かを外に逃がすために使ったようで、魔力がカラになっています」


 私の説明を聞きながら、近衛隊長が大粒の涙を床に落としました。転移で逃がした誰かを知っているのでしょうか。



「この魔道具に、私の魔力を注ぎ込みます。それで、一人は外に出れます」


「では、姫様、どうか脱出してください」


 近衛隊長が即答してきます。


「何日か経てば、魔力が貯まりますので、私はその時に脱出しますので、貴方が先に脱出しなさい」


「ウソなんでしょ、魔力は、ヒカリゴケから吸われるので、貯まらないのですよね」


「姫様が脱出して、救援を寄越してください。私の部下の近衛兵は姫様の命令は、必ず実行します」


「……わかりました、必ず助け出します」



    ◇



「ここは……」


 転移で脱出した場所は、私が幽閉されていた部屋でした。


 窓から、朝焼けに染まる人工の湖が見えます。


「動くな」


 突然、後ろから、私の首にナイフが突きつけられました。


「やはり、転移の魔道具を持っていたのか。待っていた甲斐があった」


 この声は、あの大公です。


「転移のブローチを持っているのだろ。それがあれば、どこへでも出入りが自由だ。なんでも盗むことができるのだよ」


「我が家のブローチは、地獄へ落とすことしかできないからね」


 私のノドに、冷たい金属が触れました。



「その花嫁さんを離せ」


 部屋の暗闇から、黒猫の仮面をつけた泥棒さんが現れました。


「ほぉ、私が後ろを取られたのは、初めてだよ。転移の魔法でも使ったのかな」


「お前の欲しがっているブローチは、これかな」

 泥棒が、ブローチを見せます。


 あれは、私のブローチによく似ています。



「動くな、花嫁さんと交換だ」

 彼は、部屋の中央にブローチを置き、短剣を抜いて、後退しました。


「この女よりも、そのブローチの方が価値が高いのに、愚かな奴だな」


 私を引きずり、大公がブローチを拾いに、歩み出ます。



 ブローチを拾ったと同時に、床に魔法陣が展開しました。


 私は、魔法陣の外に逃げます。


 魔法陣から誰かが浮き出てきて、大公を地獄へ引きずり落とします。


「父上!」泥棒が叫びます。


「くそ、転移だ」


 大公が、手にしたブローチを作動させますが、そのまま床の中に吸い込まれました。



「ドーン!」


 窓の外で、ものすごい音がしました。


 湖に巨大な水柱が立ち、朝日を浴びて水しぶきが輝き、虹を作っています。



「あの地下空間は、湖の下にあったのか」

 泥棒がつぶやきました。


 爆音で、王宮が騒がしくなってきたためか、泥棒が、部屋の闇へと歩き出しました。


「待って、私を盗んで行ってください」

 私は走って、泥棒に抱きつきます。


「貴女には、陽の当たる場所が似合う」


 私を押して、影の中に溶け込み、彼は消えていきました。


 まるで、影から影に渡り歩いていくように……



「ギンチヨ姫様! ご無事ですか」

 近衛隊長が飛び込んできました。


「隊長さん!」

 彼の胸に飛び込みます。


「どうしました、姫様?」

 彼が動揺しているのが分かります。


「思い出しました、大公様の一人息子、クロガネ様のことを」


「私、クロガネ様に話しましたよね、国宝の、影から影へ渡り歩ける魔道具のこと」


 全てがつながりました。



「隊長さんは、私の心を盗む泥棒さん、クロガネ様だったのですね」


「な、なにを証拠に」


「さっき、泥棒さんに抱きついたとき、首にリップを付けたのですよ」


「隊長さんの首にも、同じ赤いリップが付いていますよ」



 あきらめたのか、彼は私を抱きしめてくれました。


 幼いころと同じ、広い胸です。




 ━━ FIN ━━



お読みいただきありがとうございました。


よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。


面白かったら星5つ、もう少し頑張れでしたら星1つなど、正直に感じた気持ちを聞かせて頂ければ、とても嬉しいです。


いつも、感想、レビュー、誤字報告を頂き、感謝しております。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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