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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『陰影』

作者: 柚依

 「鬼決め、鬼決め、誰が鬼かな」

鳴り響くアナウンスとともに今日の主役が決まった。十秒後に始まるこのゲームでは、開始前に行われる`鬼決め`によってその日の主役(鬼)が決まる。このゲームが始まってから、主役以外の役に選ばれた者が帰ってきたことはないという噂を聞く。つまり、主役に選ばれなかった者にとって、この遊びは「死」である。このゲームのルールは二つ

‘日没まで鬼に捕まらないこと‘

‘鬼を殺して主役を奪うこと‘

 「君は見てるだけでいいよ。僕があの鬼殺すから。」

日没までの残り約一分、そう言ってこのゲームが開催されてから唯一の生き残りの少年が走り出した。

「何も、残り一分で仕留めなくても」僕がそう言ったその時だった、彼はあっけなく死んだのだ。僕の声をかき消すように彼は消えた。その瞬間、日没を知らせるチャイムが鳴った。僕以外みんないなくなった。みんな死んだ。

 翌朝「鬼決め、鬼決め、誰が鬼かな」

鳴り響くアナウンスとともに今日の主役が決まった。十秒後、今日もまたこのゲームが始まる。ゲーム開始と同時に僕は、自分の目を疑った。昨日死んだはずの彼がそこに居たのだ。彼だけじゃない、みんないる。その時、昨日死んだはずの彼が走り出した。

「だめだ!」咄嗟に僕が叫んだ時だった。彼は死んだ。昨日と同じ光景が繰り返している。そう思ったとき、塀の向こうに人影が見えた。昨日と同じようで、同じじゃない光景に驚きつつもその人影にどこか安堵し、走り寄った。すると塀の向こうの人影も僕の方に向かってくる。

「よかった。僕だけじゃない。」そう感じたのもつかの間、塀の向こうにいた人影は、にやりと笑い僕を殺した。僕は死んだのだ。

目が覚めると「鬼決め、鬼決め、誰が鬼かな」

鳴り響くアナウンスはいつもと同じ音声だった。昨日死んだはずのぼくが、またこのゲームに参加させられている。十秒後、ゲームが開始した。

「もう死にたくない。」

そう口にした時だった。いつもなら走り出すはずの彼が走り出さず、にやりとこちらを向いた。

―今日は彼が鬼だった―

気が付いたときにはもう遅かった。僕は死んだのだ。昨日、人影に安堵し走り寄って殺された僕以上にあっけなく死んだのだ。

 気が付くと僕は通学路にいた。死んだはずの僕が生きていて、死んだはずのあいつらも生きている。また、ゲームが繰り返しているのかと感じた。

「早く逃げないと。またみんな死んじゃうよ。」

そうゆうと、横にいた友達は不思議そうな顔をしている。

「きっとこのことを理解しているのは僕だけなんだ。」

そう思い、今までのことを説明すると、

「みんな死んだ?そして、何度も繰り返された?ここの所みんなでしていたのは、ただのかげふみじゃないか、そんなことあるか。ああ、捕まったのが死んだように見えたのか。死んでなんかいないよ。だって、みんなここにいるじゃないか。なあ、それって、すべては言い方だと思うよ。」

日没のチャイムが鳴った。

「もう日は出ていないから、かげふみはできないよ。早く帰ろう。」

そういわれて僕は家に向かった。


作品タイトルである「陰影」とは、ニュアンスの語源であるフランス語のnuance(陰影)から来ており、そこから作品へと絡め、繰り返し行われている「かげふみ」へと導いた。

ニュアンスという言葉は、日本語ではよく、「ニュアンスの問題」といったように使われ、「言い方の問題」を指していることが多い。そのためラストシーンでは、「すべては言い方の問題だと思うよ」という友達の一言で、行われていたデスゲームはただのかげふみであり、主人公の言い方の問題であった。という作品となっている。

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