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勇者ド・ラボー

追手はすぐ後ろ。こちらを捉えたらしく騒ぎ出している。


はあはあ

ふうふう


息が苦しくても立ち止れない。一休みしている余裕などない。



「居たぞ! 捕まえろ! はあはあ…… 」


威勢は良いが体力の限界と見える。


これはラッキー。逃げ切れるかもしれない。


「おい! 止まれ! 」


「待て…… 肝心の王子の姿が見当たらない。くそ! やられた! 」


せっかく捕まえた第五王子を逃したばかりか見失う大失態。一気にやる気をなくす面々。


「さあいい加減大人しくしろ! 本当はお前らなんかどうだっていいんだ! 」


苛立っている。ドッドも王子もいない。捕まえる意味があるのか?


どうだっていいなら見逃してよね。



「動くな! もうそこでじっとしてろ! 」


投げやりで興奮状態の追手。疲れのせいかかえって危険な状態。


徐々に距離を詰められていく。これはもう無理。


投降を覚悟したその時だった。


騒いだ影響からか落石が発生。


「きゃあ! 」


どうにかかわすことに成功。


ホッとしたのもつかの間第二陣がやってくる。


「ガム! 」


「こっちです。 早く! 」


ガムの判断で何とか落石地獄から逃れる。ふう。危ない危ない。


「もう嫌! 疲れた! 」


限界! これ以上は疲れて動けそうにない。ガムも辛そう。


体力の回復を待つしかない。



はあはあ

はあはあ


小石が落ちてきた。


「痛い! 痛い! ちょっと…… 」


「ステーテル! 」


避けるだけの力はもう残されていない。体を命一杯使って必死に耐える。


それは後ろのハッシャの連中も同じ。いやそれ以上だ。堪えきれずに逃げ出す。


自然の驚異に驚きつつもその力によって危機を脱した。


これで当分は追ってこれないだろう。


第五王子がいないことにも気づいたようだし無駄な追跡はしないかなあ。


楽観的過ぎるかしら?



さあもう少し。息を整え歩き出す。


落石に備え慎重に慎重に登る。


あとちょっと。


登りきれば晴れて自由の身。ああもう追いかけられることもない。走る必要も歩く必要もない。


空飛ぶ馬車に乗って一っ跳び!


目指すはイーチャット。



はあはあ

はあはあ


ガムの手を引っ張ること十分。頂上がよく見えてきた。


あと少し。もう目の前。


「あと少しよガム! 」


「うおおお! 」


命知らずのハッシャの連中が迫ってくる。


「まずい! 」


「まったくしつこいんだから。ガム急ぐよ! 」


「お任せください! 」


もう体力も残っていないガムが最後の最後の力を振り絞って引っ張って行ってくれる。


もうすぐ。もう少し。もう僅か。あと一歩。


最後の一歩でようやく頂上に到着。



はあはあ

はあはあ


ガムと二人大の字で横たわる。


ド・ラボーらしからぬ大胆な行動。


疲れてるんだからこれくらい許してよね。



「ははは! どうした疲れているようだな」


男が話しかけてきた。


「あなたは…… 」


「俺はここクールシチャットの唯一の生き残りさ」


「はああ? 」


「クールシチャットは昔は本当に栄えていた。しかしもう俺しかクルーシチャットには人間が存在しない。全てはこの地に舞い降りた魔王のせいだ。魔王は全てを焼き尽くすとここを自分の住処とした。こうして魔王城ができたのだ」


大きなお城。この城は陽の差すことが無い呪われた城。魔王の力が強大だった為と言われている。


「さあ勇者よ。魔王から城を奪い我が国を取り戻すのだ! 」


ああ…… あれね。


城らしき不気味な建物が見える。近づくのもためらわれる。



「さあ勇者よ。何をしている? ためらっている時間は無いぞ! 」


確かに後ろから諦めの悪い方たちが迫っている。


「あの…… 私たちイーチャットに行きたいんです」


「そうか。ならば余計に魔王城に行く必要がある。イーチャットはこの魔王城の先にあるのだからな! 」


どうしても魔王討伐に行かせたいようだ。


まったく興味ないんだけどなあ。



「さあ勇者よ! 」


「私はド・ラボー。理想の王子を求め諸国を巡る旅をしています」


「ほうド・ラボーなど伝説だと思っていたがこれはやはり神の思し召しか」


大げさな…… 何か面倒臭いのよね。


「是非とも魔王城へ! 」


どうしても魔王城に討伐に行かせたいらしい。


もう困ったなあ。


「失礼! 私たちは急いでいます。できればその空飛ぶ馬車に乗せてくれませんか」


ガムが毅然とした態度で臨む。


「まったく分かったよ…… 」


                 続く

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