登って登ってダイブ
二手に分かれた。今はガムと逃避行中。
もう頼れるのはガムしかいない。
それにしても心配だな。王子たちは大丈夫かしら?
うん。ドッドなら必ず守ってくれる。 間違いない!
はあはあ
はあはあ
どんなに苦しくても走りを止めてはいけない。見えない追跡者は厄介。
「さあガム頑張って! 」
ガムの手を引っ張る。もう見るからに限界。
「きゃあ! 」
草に足を取られて勢いよく前へ。どうすることもできずに二人仲良く転がる。
後ろを振り返る。うん。どうやら着いてきてないようだ。
「もうこれくらいでいいんじゃない? 」
追手は未だに姿を見せない。
ドッドに教えてもらった方法を試す時が来た。
崖が迫る。行き止まりか……
本来ならここから崖下に繋がる道もあるのだが先日の大雨の影響で現在は繋がっていないとドッド。
他に道と言えば崖下をロープを使い降りる選択もあるにはあるがまどろっこしい。
目の前に広がる崖から恐れずに勢いをつけて思いっ切り飛ぶ。
崖下にダイブ。
これはここハッシャの者しか知らない上級テクニック。
飛ぶときに思い切りのよさと勇気がいる。下手に飛べば大怪我では済まない。
誰もいない今が絶好のチャンス。
「行きますよ! 」
空に向かってジャンプ。
こうしてハッシャの追跡をかわす。
本当に追跡されていたかはともかく。ようやく緊張から解放された気分。
これでひとまず一安心。
「ねえガム。ドッドは大丈夫かなあ? 」
「さあ…… ただ信じるのみです。心配しても始まりませんよ。我々は使命を果たすべきです」
我々の使命。囚われの太郎を奪還すること。
先に進む。
新たな世界へ。
崖の下に辿り着くと前方に山が聳え立つ。
この山をを登れば晴れてクールシチャット。
クールシチャットとの国境付近には常に見張りがついている。
だが彼は大人しくドッドには逆らえない。
「何だお前たち? 目障りだから消えろ! 」
随分と乱暴な物言い。
「あの実は…… 」
ドッドの名前を出す。
「失礼しました。兄貴のお仲間の方ですか」
さっきまでの失礼な態度はどこへやら。親切丁寧に接する。
「でしたらお通り下さい。こちらがクールシチャットです」
ついにクールシチャットに足を踏み入れる。
最後の町・クールシチャット。
まさかここまで来れるとは感慨無量。
さあ空飛ぶ馬車はどこ?
ガムと二人。もう残された時間はほとんどない。
「うん…… 」
「どうしたのガム? 」
「いえ大したことではありません。こちらに逃げたのがばれたようです」
「嘘でしょう? 」
どうやら足跡をたどってきたらしい。
「まずい! 急ぎましょう」
追手は慎重に足跡をたどっている。その分動きが鈍い。
見つかる前に隠れてしまうのがベスト。
だがどこに? 隠れる場所などない。
あるとすれば木の影ぐらい。
仮に木の影に隠れたとしてもすぐに見つかってしまうだろう。
やはりもう前に進むしかない。
目の前に隠れることのできない広い緑の道。
一見草むらに隠れられそうだが今はさほど茂っていない。
やはりすぐに見つかってしまう。
さあどうする?
走りながら次の手を考える。
うーん。やっぱり無理。
足だって痛くてしょうがない。
ガムの方が重症。
疲れからもつれて転びそうになる。
「もうダメ…… 」
弱音を吐くガム。らしくない。
「私のことは構わずに先に進んでください! 」
ガムはここで食い止める気だ。
だが疲れ切ったガム一人では危険すぎる。ハッシャの連中は甘くない。
簡単に手にかける。それがハッシャの恐ろしいところ。
奴らには関わってはならない。しかも脱走したからにはただで済むはずがない。
「ガム行きましょう! 」
ガムを起こし引きずっていく。
その間にも追手は距離を縮めている。
見つかったら最後。戦う力もない。武器も持ち合わせていない。もちろんガムだって同様。
あるとすればハッタリをかますこと。ここでガムの弁論術が通用するか。
一本道の山道をひたすら上る。ガムも私も気力だけで立っている。
ゆっくり一歩ずつ前に進む。
山と言っても歩いて約三十分。何とかなる。
追手はすぐ後ろに迫っている。
このまま逃げ切ることができるのか?
続く




