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目覚めのキス 記憶の中の太郎

寝息を立て安心しきって眠る幼き王子。王子がどれだけ眠っているのか知れない。


まるで眠り病にでもかかったかのようだ。


「王子…… 」


無防備な王子。まるで赤子のよう。


「ふふふ…… かわいい」


「ちょっと何してるんですか? 一国の王子を捕まえて破廉恥な! 」


「おはようの挨拶かな…… 」


「ド・ラボーはそんな軽はずみな行動しませんよ! 」


顔を真っ赤にして恥ずかしそうに吠えるガム。


「だって…… かわいかったからつい…… 」


「おおお…… お前って奴は…… 」


様子を見に来るなりドッドは固まってしまう。


「どうしたの二人とも? 」

 

「私と言うものがありながらそのような幼い者にまで…… ああ何てことでしょう! 」


興奮状態のガム。


「お前ら…… そんな関係なのか? いやいいんだ。ははは…… 」

 

ガムもドッドも大げさなんだから。


重苦しい空気が漂う。


誤解なんだけどな……



外の様子を見る。


「うん。問題ない」


好きなところを使っていいと言われたので二階に陣取る。


「ならスティーには見張りを頼もうかな」


「えええ? 」


「だって二階からの方が外の様子が良く分かるからよ。動きがあったらすぐに伝えるように」


「ちょっとドッド…… 」


ドッドは行ってしまった。


王子の世話はガムに任せるとしても心配だ。


王子はまだ子供。いつまでもこのままにしておくわけにはいかない。我慢も限界に近い。




「どうだ。変わったところは無いか? 」


ドッドが様子を見に来た。


首を振る。


「そうか」


「ねえドッド。本当に太郎知らない? 」


「ああ。お前の子分だろ。俺が知る訳ないじゃないか! 」


太郎王子の消息は不明。生きているのやら死んでいるのやら。


「もう一度聞くけど太郎王子本当に知らない? 」


「まったくしつこい奴だな。俺が知るはずがないっていってるだろ…… うん? 」


「太郎? 王子? 」


ドッドが食いつく。


「まさかイーチャット第三王子のことじゃ? 」


「そうそう。それそれ」


「何だよ。初めからそう言ってくれよ。困ったなあ」


ドッドは分かるかと憤る。



『太郎』


それは私が勝手につけたあだ名。


ドッドも皆も私が太郎と言うものだからそうだと思っていたようだが実際はもっと立派な名がある。


ドッドは太郎の…… いや第三王子の情報を掴んでいるらしい。


「何か知らない? 」


「第三王子だったらお前らが言うように先月まで閉じ込められていたよ。でもちょっと遅かったな。イーチャットに戻されたぞ」


「それ本当? 」


「ああ。立ち会ったからな。それに食事も運んだ。間違いないさ」


「何でそれで太郎に気づかないのよ? 」


鈍感なドッド。太郎にも負けていない。


「いやあ…… 大きくなれば全然違うからな。あいつだって俺のことまったく気づいていなかったぐらいだ」


「ハイハイ。それで太郎は今どこ? 」


「だからイーチャット。呼び戻されたんだ」


「ええ? 許されたの? 」


「まさか。そんな甘くないさ。処刑するから戻されただけだ」


「何ですって? 」


ドッドの話ではもう間もなくだそう。一刻の猶予もない。


ああどうしましょう。これはまずい展開。


「どうして助けてあげない訳? 」


「知るかよ! 俺には関係ないだろう」


「太郎よ太郎。太郎なのよ! 」


「それは今知ったんだ! だがまあ、お前は太郎を可愛がっていたかもしれないが皆すっかり忘れてしまってるぞ。俺だって頭の隅にあった不確かな記憶しかないんだからな」


ドッドの言い分も理解してるつもり。でもなんか薄情なのよね。


短い間だったかもしれないけど太郎は存在した。否定することはできない。



「それで太郎は? 」


「まあもって五日ってところかな。実際は分からない。こればっかりは国王にでも聞くしかないな」


現実を突きつける男ドッド。


「ほらいいから落ち着け! 冷静に頼む。冷静にな」


太郎はイーチャットに戻された。


それは間違いない。


目的は処刑。


ああどうすればいい?



太郎の姿を思い描く。


「太郎! 太郎! 」


いくら呼びかけても答えてくれない。当たり前か。幻想でしかない。


太郎は別のところ。


生存は確認されている。無事なら何の問題もない。


あとは当初の予定通りお助けするだけ。


                  続く

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