ヤ―チャットに到着 胸に秘めた想い
ハッシャの連中は姿を消した。
「うおおお! 」
「ラッキー! 」
皆大喜び。
ぶるぶる震えていたノラもさっきまでのことを忘れてはしゃいでいる。
ドッドもこちらを気にしながらも歓喜の列に加わる。
ダメだ! 俺も一緒になって騒ぐわけにはいかない。
俺は一の子分を失った。太郎を売ったのだ!
悔しい! 悔しくて仕方がない。だが俺にはどうすることもできない。
無力な俺では太郎が無事でいてくれることを願うぐらいしかない。
それから太郎が来ることも見かけることもなかった。
太郎の話をすることもない。もちろん皆太郎のことなど忘れている。
ただのお荷物。役に立つはずもない。
ただの新入り。影も薄かった。
十日も経たずに記憶から消された。
だが俺は忘れない! 絶対に忘れない!
ハッシャとはそれから関わることはなかった。
一ヶ月が経ち皆の記憶から完全に消された哀れな太郎。
今太郎はどうしているのだろう?
住み家を変えるタイミングで仲間と別れた。
こうして俺の一人旅が始まる。
太郎がどこにいるのか? 手掛かり一つ見つからない現状。
それから数年が経過。
イーチャットからニ―チャットへ戻っていた。
俺は、いえ私にはある出会いがあった。
『ド・ラボー』
たまたま通りかかった男が勧めてきた。
この当時もまだ貧しく金になるならと二つ返事で引き受けた。
別にプライドもないし金と食い物に釣られた結果。
そうしたらうまいこと運んで最終試験まで。
ついにド・ラボーの地位を得ることに。
奇跡だと思う。でも他の者はそうは思っていなかったようだ。
私には敵わないと言ってくれた。それが本当にうれしかった。
でも実際何もしていない。なぜドラボーに選ばれたのか不思議でならない。
これより国王挨拶。
ド・ラボーとなって最初の仕事はこれだ。
国王に認めてもらう。そうすれば晴れて立派なド・ラボーとなる。
そしてここでガムと出会う。
こうして今の二人の関係が出来上がっていった。
ここには太郎がいる。私の太郎が待っている。そう思うと胸がどきどきする。
大きく立派に成長した太郎との再会を夢見て。
「ステーテル? ステーテル? 」
邪魔が入る。
「どうしました? 着きましたよ」
現在に引き戻された。
優しいガム最後の姿。
もし太郎王子と結ばれればガムとは別れることになる。たとえ二人が愛し合っていたとしても。
昔の男とは訳が違う。厄介な関係だ。
太郎王子のことも気になるがガムと別れることも気が気でない。
ガムは落ち込んだり嫌がる様子を見せない。未だに私のことをどう思っているのか分からない。
はっきりと態度で示さない。いえ示せないのがガムの悪い癖。
ヤ―チャットに到着。
ついに始まる。最後の戦い? 最後の試練?
太郎王子の居場所を探し出す。それが今回の一番の目的。
だから国王がどうとか王子がどうとか関わっていられない。サクサクと行きましょう。
「おい! 」
野蛮な男たちが近づいてくる。この辺りを管轄する兵士。
「何をやっているお前たち! ここがどこか分かってるのか? 」
「ヤ―チャットでございます」
「お前らまさかコンプラの回し者じゃないだろうな? 」
探りを入れる抜け目のない奴ら。やはり噂通りいがみ合っているようだ。
「いえ…… ただの観光客でございます」
さすがのガムも男たち相手だと緊張するのか声が裏返る。
ここがやばいところだとタレイたちから聞かされていた。ガムだって分っているはず。
「観光客? こんなところに見るものなどあるものか! さあとっとと帰った帰った! 」
男たちは相手にしない。
「実は空飛ぶ馬車があると聞いたもので…… 」
「おお! 詳しいね。誰から聞いたんだい? 」
「ヤ―チャットの方から」
「まあいいや。じゃあ好きにしな」
観光客に違いはないがまさか太郎王子を探しているとも言えない。
空飛ぶ馬車の情報を得る。どうもクールシチャット側らしい。
まずとにかく落ち着く場所を探す。
コンプラ王国。
タレイの話では山奥にコンプラ族の町があるそうだ。
「では参りましょうか」
「まさか登るの? 」
「はい。挨拶がてら行ってみましょう」
「そんな呑気なとこ? 」
コンプラ王国は山奥の村でここからは山を登っていくほかない。
さあ登山開始。
続く




