編集長豹変
翌日。
さっそく現場へ。
「なあ本当に来ると思うか? 」
奴らの狙いが何なのか分からない。存在さえも謎。
編集長はもうすっかり宇宙人による誘拐だと決めつけている。目を輝かせていて怖い。
登山開始。
登山は楽ではない。ここには熊だって狼だっている。下手に縄張りに踏み込めば襲われかねない。
やはり慎重に進むしかない。
ハアハア
ハアハア
「そろそろ休憩にしましょう」
ガムが仕切る。
「ちょっと用を足してくる」
編集長が草むらへ。
野ぐそかしら?
「ステーテルはいいの? 」
頬が熱い。
もうガムったら…… ド・ラボーは野ぐそなんかしませんよ。
ド・ラボーは野ぐそどころか大だって致しません。
ふふふ…… 信じてくれるかしら。
「ここに居てね」
ガムはお花を摘みに行くそうだ。
二人とも居なくなってしまった。急に心細くなる。
バラバラに行動してはいけない。敵に隙を見せることになる。
あーあ。私も一緒にお花を摘みに行けばよかったかしら。
ガサガサ
ガサガサ
殺気?
編集長が現れた。
まさかガムが離れる時を狙って……
「きゃああ! 」
編集長が変質者に。
もうダメだわ。ああなんてことかしら。ド・ラボーが惹きつけてしまうのね。
編集長の抑えていた感情が爆発。襲いかかるつもりなのか突っ込んでくる。
「来ないで! だめ! 嫌! 」
いくら拒絶しても意味がない。
「ダメよ! 私はド・ラボーなのよ! 」
「おい! 」
「もうダメ! 」
「後ろ! 後ろだ! 」
「ええっ? 」
ガサガサ
ガサガサ
繁みから子熊が二匹顔を見せた。
「何だ脅かしやがる! 」
それはあんただって。
「まあかわいい! こっちにおいで」
手招きをするといきなり……
「馬鹿野郎! 」
洗っていないであろう手で掴まれる。
ああ。何? 一体何なの? 私はド・ラボーなのよ。
「こっちに来い! 」
「ステーテル? 大丈夫ですか? 」
悲鳴に駆け付けたガム。お花畑の処理を誤ったのか下がだらしなくなっている。
「お前もこっちに来い! 」
編集長に圧倒される。
「何? 何? 」
「良いからすぐに来い! 」
男らしい一面を見せる編集長。ちょっとドキドキ。
「走るぞ! 」
その場を離れる。
「ふう。もういいだろ」
「どうしたの編集長? 」
「馬鹿野郎! 子熊がいるってことは親熊も近くにいるってことだ! 」
「まあそうだけどそれが? 」
「もしあのまま子熊とじゃれていたら襲われていたんだぞ! 」
「まさか! 本当かしら? 」
「ほらよく見てみろ! 」
遠くに大型の獣が見えた。母熊に違いない。
「さあぼやぼやせずに行くぞ! 」
登山ルートから外れてしまった。これは危険だ。
自然にも山にも詳しい編集長を先頭に頂上へ。
登山ルートに戻り危機を回避する。
「ところで何で頂上? 」
「良く見えるからだよ」
昼過ぎに無事頂上へ。
疲れた。足が痛い。
「さあお昼にしよう。ああピクニックは楽しいな」
完全に目的を忘れている編集長。
「はーい! 」
以下二名。
山に来たものの手がかりはない。変わった様子もない。
編集長の指示に従う。
下界を望むもこれといった変化なし。
ところで私たちここに何しに来たんだっけ?
「どうだ? 」
「問題ありません」
「うーん。失敗か」
ガムと編集長が話し合っている。
「いいか! 囮を使うぞ! 」
誰かを囮にして誘き出す作戦。少々危険が伴うが……
「さすがに奴らも一人なら警戒せずに何か仕掛けてくるだろうさ」
もう時間もない。編集長の案を受け入れる。
囮にふさわしいのは。やはりこの場合……
編集長だ。
「ちょっと待て! なんで俺が? 」
「多数決なんですからほら頑張って」
「そうそう。あなたが囮です」
「しかし…… 」
ごねる。
だがこの場合編集長以外有り得ない。
私たちはか弱い乙女。いざと言う時には守られる存在。
「さあ頑張りなさい! 下僕よ! 」
「まったくこいつらは…… 」
編集長は渋々受け入れる。
なるべく目立つように派手に動いてもらう。
続く




