ニッシー対ジャスラ 西の川の決戦
王子様が行方不明なものだから物語があさっての方向へ。
これは仕方ないこと。
主役の王子様が居なかければ脇役が盛り上げるしかない。
怪鳥ジャスラと伝説のニッシー頂上決戦。
始まり。始まり。
ジャスラの再来。
旋回を終えたジャスラが二人を目がけて急降下。
「危ない! 」
ガムの機転で危険を回避。
すれすれを通り抜けていくジャスラ。
ガムの素早い判断に救われた形だがわざと外したとも考えられる。
ジャスラは再び空高くへ。
もう次は外さないだろう。
これはまずい。
近くの草むらに姿を隠す。
低姿勢を保つ。
ふう…… これでもう安心。
ジャスラは目標を失い再び旋回。
このまま切り抜けれればいいのだが……
ぎゃあああ!
いぎゃああ!
今度はニッシ―が怒りを露わにする。
もっと歌えと。もっと踊れと。もっと敬えと言っているようだ。
ニッシーは向きを変え再び向かってきた。
どうする?
二大怪獣の襲来。
お互い相手にしていないのだから厄介だ。
共倒れを願うがそう簡単ではない。
ニッシーはお構えなし。
ジャスラは視界にも入ってないのか無視。
未だにお互いを認識していない。こんなこと果たしてあり得るのか?
まさか……
奴らは共闘していないか?
お互い化け物とは言え知性ぐらい持ち合わせているはず。
最悪の状態。悪夢でしかない。
「もう嫌! 限界! 」
「諦めてはだめです。切り抜ける方法を考えるのです」
「そんなこと言ったって…… 」
ガムはそう言うけどいくら考えてもこの状況は打開できない。それこそ奇跡でも起きない限り不可能。
まさかガムには切り抜けるとっておきの秘策でもあるのだろうか?
絶体絶命のピンチ。
修羅場と化した川べり。朝の清々しさはもうそこにはない。
早起きは三文の徳などと言うがやはり危険だってあるのだ。
早起きは地獄絵図と変えてもいいかもしれない。
ああ早起きなんかするんじゃなかった。いや徹夜で歩いてたんだっけ。
ニッシー探しなんて馬鹿なことしなければよかった。
ああもう遅い。あきらめるしかない。
「そうだ! 」
ガムが何か閃いたようだ。
「伝説のニッシ―は魚類や両生類などではなく哺乳類。もしかしたらクジラと同様毎日一度は陸に上がって空気を吸っているのでは? 知能も宿しているに違いない。後はニッシーを味方に付ければいい。ふふふ…… 」
ガムは嬉しそうにニッシ―の観察を始める。
しかしそれが何だと言うの? 今更そんなことが分かってももう遅い。
もう食われるのだから。もうバラバラにされてしまうのだから。
私には諦めるなと言っておきながら自分は現実逃避を始めている。
ガム…… 私だって……
「さあ来なさい! 私はここよ! 」
諦めの境地。
ついに自然に身を任せる決心がつく。
ああ楽でいい。さあ好きにすれば。
これが人間ならガムお得意の弁論術で切り抜けただろう。実際、何度もそうやってきた。
だが奴らは違う。何を言っても無駄。どれだけ粘り強く繰り返そうと伝わらない。
それが獣。化け物相手に戦うなど愚か者のやること。
私はド・ラボーなのよ。
ああ。いつの間にか後悔。
もう遅い。遅すぎる。
どちらが早く襲ってくるのか。
ニッシー? ジャスラ?
ふふふ…… ああこんな時助けてくれるのは勇敢な王子様。
そしてお礼のキスをするの。そしてそして……
妄想が膨らむ。
でも…… ここの王子様は行方不明。王子はいないのだ。どんなに待とうとも現れはしない。
「もうダメ! 」
運を天に任せる。
空を見上げる。
随分と明るくなってきた。
朝焼けが眩しい。
完全な夜明けだ。
その時だった。
ニッシーが動きを止める。そして叫びながら川へ戻っていく。
混乱したジャスラが開いた翼を閉じ攻撃を回避。
すると石がどこからか飛んでくる。
どう言うこと?
ジャスラ目がけて石が投げ込まれる。
ラッキー! 奇跡だわ!
急いでその場を離れる。
ジャスラは目標を失い去って行った。
西の川の伝説ニッシー対歌を取り締まる怪鳥ジャスラの戦いは人間様の勝利に終わった。
続く




