ニッシー
魔女に連れられて山奥の洋館へ。
暴動が何なのかは分からないが何かがあったのは間違いない。
隠れるように森の奥深くに立てられた洋館。お城と言えば聞こえはいいがただの隠れ家でしかない。
謁見。
「その方、ステーテルだったかな」
「はい。それでお伝えしたいことがあります」
魔女がなぜ国王と関係が深いのか。その辺は直接尋ねるのがいい。
「国王様こちらは聖女でございます」
「ほうそれはそれは」
魔女の言い方が古臭いものだから何のことだか分からなくなる。
「聖女とな。本当であるな? 」
「いえそのような立派なものではなくド・ラボーでございます」
「ド・ラボー? それは丁重に扱わなくてはな」
「改めましてステーテルです」
深々と頭を下げる。
「ステーテルよ。よくぞ来てくれた。さっそく王子を紹介したいところなんだがその肝心の王子が見当たらなくてな。困っておる」
やはりまだ帰っていなかった。どうやら連れていかれたのはここの王子で間違いない。
「王子が居なくなってしまった。懸命に探しているのだが一向に見当たらない。お前たちは何か知らないか? 」
「いえ…… 」
「そうか。ではゆっくりしていくといい」
まだ話せない。王子が連れ去られたなど。
挨拶を終え部屋を案内される。
王子が行方不明。明日にはこのことが町中に広まるのは必至。
旧知の仲の国王と魔女。今後について相談を受ける魔女。
「困った。本当に困った…… 」
「この老婆が占って差し上げましょう」
「ああ頼む。できれば今どこにいるかを教えてくれると助かる」
「うーん」
「どうだ? 」
「それが良く分かりません」
「見えんのか? 」
「はい。暗くてまったく見えないのです。こんなことは初めてです」
「では何も分からないと」
「いえ。方角と距離ぐらいは何とか」
「どこだ? 」
「ええ…… 東に一時間と言ったところかの」
「本当か? 」
「東はいいんだが距離は適当さ。国境辺りと予想できますな」
「国境? 」
「それ以上はまだ何とも…… 」
「では何か分かったら知らせてくれ! 」
国王はおやすみになった。
王子が行方不明。その噂が昼には広まっていた。
「まさか王子様まで。かわいそうに」
「馬鹿言うでねえ! 」
王子がいない以上止みようがない。
「やっぱりね」
ガムと共に話を聞いて回る。
「実はさ私見ちゃったんだよ。あの黒い影。それから強烈な光を放った何か」
「何かって何だい? 」
「それはもちろんニッシ―さ。ニッシーの仕業だよ。間違いない! 」
「ニッシー? 」
「ああ。奴が王子を…… 」
「その話本当なんですか? 」
ガムが輪の中に入る。
「馬鹿言っちゃいけないよ。王子がさらわれたなんてあるものか! 」
「あんたら観光に来たんだろ。楽しんでいきな! 」
取り合ってくれない。
やはりよそ者はよそ者なのだろう。疎外感を感じる。
「忙しい! ああ忙しい! ほらお前ら戻るよ! 」
無駄話はもうお終いらしい。行ってしまった。
ニッシ―とは一体?
もう少し話を聞く必要がある。
一軒ずつ当たっていく。中には口が軽い者もいるはずだ。
「何だい? 」
「王子のことなんですが」
ガムが前に出る。
「ああ。行方不明だってね。怖いねえ。うちも子供が小さいから心配なんだよね。
ニッシ―? さあね。聞いたことないよ。どうせまたつまらない噂話さ。信じても良いことないよ」
「ああ、王子についてか。うーん。ああ女の子が一人いるだけ。男子は王子一人だけさ」
「王女? 」
「ええ。五歳離れた可愛い王女様さ。一度会ってみるといいよ。ご病気だとか。
もし今回の失踪が本当ならお二人ともついていないわね。呪われてるのかしら」
呪い? いやもう耐えられない。聴いているだけで寒気がしてきた。
情報は集まった。後は動くのみ。
王子がいない以上ここに留まる意味がない。次の国に行くのも手。
しかし目の前での消失。やはり放っておけない。
とにかく王子を探さなければ。
王子救出作戦開始。
続く
②




