ベイリーの行方
翌朝。
「ああ待ってましたよ。こちらです」
少年は心を入れ替えたのか案内役に徹する。
これでようやく王子の元に辿り着ける。
ゴミタワーからは離れておりここまではあの嫌な臭いも漂ってこない。
少年がそわそわしている。ガムはそれを見逃さない。
「どうしました? 何か問題でも? 」
「いや何でもない。ただ俺は警戒されているんだ」
「どう言うこと? 話して」
「俺の妹があそこに居る」
「妹? ああベイリーだったかしら? 」
妹ベイリーについて語りだした。
話は一年前に遡る。俺と妹は昔から仲が良く一緒に遊んでいた。
ある日男が現れて妹をド・ラボーの素質があると言いやがった。
ド・ラボーにならないかと強く持ち掛けられた。
ド・ラボーはこの辺りの子なら誰もが憧れる稀有な存在。
妹は同様に目を輝かせ断らなかった。
そして妹にはド・ラボーの適性が。
ほどなくして妹はド・ラボーとなった。
自慢?
「お前らとは違うのさ。ちょっときれいなくらいでは全然ダメだ」
「何ですって? この私が? 」
「いくらなんでも失礼ですよ。ステーテルは正真正銘のド・ラボーなのですから」
うああああ!
ガムを遮ろうとしたが遅かった。もうせっかく今まで隠していたのに。
「あんたもか? 」
「ですからその口の利き方はおやめなさい。本来であればあなたのような身分の低い者と言葉を交わすことさえも禁じられているのですよ」
ガムが諭す。
「おいおい本当かよ。冗談じゃないのか? 」
「無礼にもほどがりますよ」
「そうか本当なんだな? 」
「そうだとさっきから言っているでしょう! 馬鹿なの? 」
ついつい反応してしまう。
「これは願ってもないチャンス。ならば妹を取り戻してくれないか? 」
少年の願い。
両親が早くに亡くなり兄と妹の二人っきりだとか。気持ちも分からなくもないけど。
「ガムどうする? 」
「ですが取り戻すと言われても…… 」
「お願いだよ! 妹を取り戻してくれ! あんたらなら簡単だろ」
「しかし妹さんは自分の意思で行ったのでしょう? 」
「確かに。王子に憧れていたからな。でも妹はまだ子供だ。憧れだけで本当は嫌だったはずだ」
実際に会って聞いてみないことには判断がつかない。
「ではあなたの妹が王子の婚約者になったのは確かなんですね? 」
「ああ、もう早くしないと取り返しのつかないことになる」
妹を心配するのは分かるが考え過ぎでは? 妹思いの困った兄。
「分かりました。善処致します」
「よしだったら着いてきてくれ」
王子の元へ。
島の奥に進む。森を抜け一山超えたところにそれは聳え立っていた。
煌びやかな装飾を施された建物。お城だ。
島の奥にひっそりと建てられた巨大建造物。なぜか隠れるようにぽつんと。
これは敵の目を欺くためなのか?
山奥の奥にお城があるなど信じられない。
門番が警戒に当たっている。
「何の用だ? 用が無いなら立ち去るがよい! 」
外からの侵入を警戒。一応は王家の館。特に王子の婚姻が近い。警戒が厳重になるのは仕方ない。
「また君か」
「お願いします。妹に会わせてください! 」
「何度もしつこいなあ」
少年は引き下がらない。
「お願いします! お願いします! 」
「だからここには居ないんだって言ったろ! 」
「ではどこに? 」
「俺は知らない! そんなこと知らされていない」
門番は困ったものだとため息を吐く。
「いいかよく聞け! 君の妹は王子の求婚を受けたのだ。めでたいことではないか。もう余計なことをしないでくれ。俺の仕事が増えるだけだ」
「でも…… 」
「もちろん式には招待するつもりだ。その日までは我慢してくれ。王子もあんたの妹もやることがたくさんあるんだ。お前のように暇を持て余しているクズとは違うんだ! 」
少年は言葉を失う。
ベイリーは一体どこへ?
続く
④




