地獄の社会科見学
まずは一階から。
えっとこれは何かしら……
「くっさ! もう耐えられない」
「何を言ってるんですか? この程度のことシーンジャットに比べれば辛くも何ともありませんよ」
確かに前回の旅が過酷だっただけに今回はこの臭いと目を覆いたくなるゴミを直視しなければいい。
ただそれだけ。楽勝だ。臭いだってハンカチを強く当てれば何とかなるだろう。
それに直視しないだけでなくぼやけさせればいい。
「ガム? 」
「うーん芸術的ですね」
「どういう趣味をしてるのよ! もういい? 」
「お待ちください。これなどゴミと呼ぶにはもったいない。完成された芸術作品です」
ガムの趣味は置いておくとして眼が腐っているのは間違いない。
「では参りましょうか」
「ほら早く出ましょう。冗談はこれくらいで…… 」
「何を言ってるんですか。二階に行きますよ! 」
もうこれ以上付き合いきれない。ガムには失望した。
「一人で行きなさいよ! 」
「これもこの町を知る良い機会ですよ。この町がどうなっているのかどうしてこうなったのか。
情報があるとないとではこの後にも関わってきます」
「もう知らない! 勝手にしてよ! 」
「勝手にします。さあ二階に行きますよ」
らせん階段を登る。
「すごい! 」
ガムは驚いている。私はそのガムに驚いている。
ゴミのオブジェが一階を突き抜け上にまで続いている。
これはまずい。まさか三階まである?
これ以上は地獄。もう耐えられない。
二階に到着。
やはり作品は独特で表現のしようがない。
これがシュールレアリズム? これはキュビズムだとでも言うの?
ガムの目が輝いている。
『ゴミはゴミ箱に! 』
ガムにもこの町の人にも捧げたい。
私が間違っているの? 間違っていないわよね。
趣味って人に言えない物もあるでしょう。
でもこれは果たして……
うう……
純白のハンカチが穢れていく。
ちょっと待って!
このような場所にド・ラボーである私がふさわしい訳がない。なぜガムは勧めたのかしら?
「ガム! ガム! 」
ダメだ。ガムはゴミのオブジェに夢中で話しかけても反応が無い。
ガム…… 私はもうダメ。すぐにでもここを離れたい。
早くお風呂に入りたい。ふかふかのベットで横になりたい。
乙女の偽らず気持ちよ。
さあガム早くここを離れるのよ!
しかしガムはとんでもないことを言いだす。
「ステーテル。三階もありそうよ。行ってみましょう」
はいはい。
どこでコントロールを誤ったのかしら?
興奮したガムは信じられない暴挙に出る。
何と鼻に当てていたハンカチを外してしまう。
これはどういうこと?
自殺行為ではないか。戦場に丸腰で突撃するようなものだ。
鼻だって腐ってしまう。
全体にまで行き渡りでもしたら氷漬けになった時よりも悲惨なことに。
それが分からないと言うの?
ガムは馬鹿じゃない。さあここから脱出しましょう。
このごみ溜めの魔王城から逃げるのです!
「どうしたんですか? 体調が優れないようですが」
「ええ…… 気分が悪くて…… 」
「それは大変! 急いで回りましょう! 」
迷惑も省みずにガムは最後まで粘る。
どういうこと?
これは夢よ! 私が見ている悪夢よ!
ゴーチャットなんてない。少年とも出会っていない。
ゴミ屋敷なんてあるはずがないじゃない! これは夢。夢なのよ! 」
「さあ次の階に行きましょうか」
ガムが現実に引き戻してしまう。
衝撃の一撃。立ち直れそうにない。
とりあえずハンカチで防御。
汚染された空気を吸わずに済む。
ガムは四階へ。
ついて行くしかない。
私はド・ラボーなのよ。こんな仕打ちないじゃない。
もう一秒もここに居たくない。歩いて階段を下りるのも嫌。いっそのことこの窓から飛び降りてしまいたい。
大丈夫。下はゴミの山。問題ないでしょう。
しかし問題はなくてもゴミまみれになる。それはここでは死を意味する。
ああ……
ガムは飽きたのかさっさと下へ。
私をこのゴミ溜めに放置するつもり? 冗談じゃない!
急いで外へ。
ゴミタワーから無事に生還。
生きているのが奇跡のようだ。
続く




