手掛かりを求めて
死の接吻。
「気をつけるのだぞ! 接吻されたらもうどうにもならない。一時間以内にこの世界を脱出しないと永遠に閉じ込められてしまう」
恐ろしい。
「では元国王。橋にはどのように行けばよろしいのでしょうか? 」
爺をおだてていい気分にしてから話を聞く方が有益な情報が得られるはず。
「それが儂にも…… 」
「ちょっと元国王! 」
今度は厳しく対応。爺を追い詰める。
「良かろう仕方がない。まず川を探すのだ」
川? この近く川など存在するの?
「川の流れる方を南。要するに北から南に川は流れているはず。大体だがな。南の終着点まで行き東に折れる。そこから北に戻って最後に西に行けば橋だ。」
「えっと…… 」
ガムが素早く書き取る。
「大雑把過ぎる! 」
「仕方がなかろう。儂も話に聞いただけ。実際に行ったこともなければ考えたこともなかった。目印があるはず。よく探すのだ! 」
まだ大事なことを隠している気がするが…… もっと追及すべきだろうか?
「まずいですよ。そろそろ夜明けです」
ガムが騒ぎ出した。
「どうしよう…… 」
「心配するな。誓いの接吻までに探し出せばいいのだ。王子を拒絶し続ければ危険はない」
まだ完全には信用できないけど言ってることは間違っていない。
「さあ早く戻るのだ! 悟られては元も子もないぞ」
爺と別れる。
「ここの鍵も頼んだぞ」
抜け目のない爺。いや国王様か。
夜明けになる前に部屋に戻る。
ふうう…… 助かった。
もう眠いよ。
コンコン
コンコン
疲れと緊張から解放されたせいかよく眠れた。もうお昼近く。
王子がいつものブランチのお誘いにやって来た。
「ステーテル。どうした具合が悪いのか? 」
「いえ。申し訳ありません。今すぐに支度します」
「あれ君は? 君も行くの? 」
ガムが同行。王子と二人っきりは危険と判断。お願いして着いてきてもらった。
王子に気付かれないように探すのは不可能。ガムの協力が不可欠。
「王子様」
村人からの信頼は厚い。まだ子供だと言うのに見かけによらず惹きつけるものがあるのだろう。
「さあここだ」
昨日とも一昨日とも違った家。
「これは王子様。いらっしゃい」
「いつものを頼むよ」
「俺の料理は大雑把だからな…… お嬢さんたちのお口に合うか心配だ。ガハハハ! 」
豪快に笑う主人。
仕込みを終え準備完了。
なぜか皿を持ち出す。
「あの…… 」
「ああ心配ないよ。ちょっと歩くけどね」
「さあここだ。ここ」
リバーサイドにシートを敷く。
目の前の白い花を見ながらのブランチ。お洒落と言うか派手と言うか。
「春にはこの辺は桜が咲き誇りそれはきれいだよ。今はまあこの白い花でも愛でるるといいよ」
男が手料理を振る舞う。
意外と几帳面なのか手を川で洗う。だがその後がいけない。濡れた手をポケットに入れ、服で拭くのだからを見ていられない。
これでは大胆な料理にも期待はできそうにない。
「王子! 」
ガムが王子の相手をしている隙に単独行動を開始。
ちょうどいい具合に川がある。
急いで脱出方法を探さなくちゃ。
川の流れる方に沿って歩みを進める。
「おーい! ステーテル! 」
王子の声。
どうやら迷子になったと思っているらしい。急がなければ。
こっちでいいのよね。それから……
流れが緩やかになった。
近い。
どう言う構造かは不明だがせき止められている箇所に辿り着いた。
ここだ。ここで間違いない。
終着点。
後は東の方に行けばいい。
何か目印のようなものがあればいいのだけど。
像?
河童の銅像がある。
頭には皿を乗せこちらを睨んでいる化け物。全体的に緑なのが特徴。
一匹二匹……
親子の像だろうか。
これが目印? まさかねえ……
あの元国王の言っていたことが本当ならもう間もなく出口にぶち当たるはず。
どうする?
「おい! そこで何をしている? 」
銅像にばかり気を取られ近づく者を警戒していなかった。
「あれ…… お前は脱走した…… 」
「ええっ? 」
見覚えがあるような無いような……
シーンジャット初日に世話になった女性。
「ステーテルだったか? さあ戻りなさい! 」
まずい! どうしよう……
再び捕まってしまうのか?
続く




