冷たい食事
翌朝。
王子が起こしにやってきた。
「ステーテル! 」
「お姉…… 」
いけない。元のガムだ。
「どうしました王子? 」
「いや散歩にでも行かないか? 」
「お食事は? 」
「それはまた外で食べればいいさ」
「ですが…
「不満か? 」
不満があるに決まっている。昨日と同じでは敵わない。
まあ子供に言ってもしょうがないんだけど。
「ははは! 心配するな! 昨日とは別の家だ」
まったく王子ともあろう御方が村の者に恵んでもらおうなどと浅ましい考えは止めて欲しい。
「さあ行くぞ! 」
元気過ぎる王子には困りもの。もう子供なんだから。
断わるに断れない。
有無を言わせない王子。子供ながらに引っ張てくれる気がしていい。これくらい幼くてもいいかもしれない。
ああ! 王子!
理想の王子様像に近い。
ド・ラボーも見納め?
ちょっとずつ惹かれ始めている。
まあ当然かもしれない。ここに男と言えるのはこの王子ぐらいなもの。他は卑しい者。
国王に興味はないし。もし兄たちが戻って来れば選択肢も増えるだろうけど。
あらあらはしたない。私は何を考えてるのかしら。
ド・ラボーのプライドがないの?
やっぱりガムとのことがあってまだ興奮しているみたい。ああ恥ずかしい。恥ずかしい。
「どうした顔を真っ赤にして? さあ行くぞ! 何をしている? 」
「はい王子」
今日はガムは同行していない。どうやら安全だと判断したようだ。まあちょっと出かける分には問題ないか。
歩いて十分。
花のアーチが特徴的な一軒の家に立ち寄る。
「いらっしゃい! 」
大歓迎を受ける。
「王子様。お待ちしておりましたよ。さあこちらにどうぞ。」
さっそくご馳走になる。
何か恥ずかしいし情けない気がして落ち着かない。
王子は嬉しそうにフォークでお皿をたたいている。我慢できずに騒ぐなんてまだまだ子供。
「今日の食事は何かな? 」
「王子絶賛のサーモンのマリネ。それから鳥刺し。王子は通ですからね」
げげ…… また体が冷えるのばかり。
「最期にドライフラワーのステーキ。特製のソースをかけてお召し上がりください」
デザートはチョコをコーチングしたストロベリーのアイス。
「うん。うまい! また腕を上げたね」
「有難き幸せ! 」
大げさなんだから。こんなガキ相手にさ……
「どうかなステーテル? 」
「寒! 冷た! 」
「うん何だ? 」
「いえ。さっぱりしていていいですね」
「ははは! そうだろそうだろ」
あーあ。これならガムを連れてくればよかった。まあ昨日よりはましだけどさ。
目を瞑って寒さを誤魔化す。
「またどうぞ! 」
外へ。
「うーん。食べた食べた。どうだ? 」
「寒い! 寒い! 」
「うん? 」
もう限界。昨日もこのパターンだったじゃない。
「そうだ。面白いところに案内してやろう」
王子のお勧め。いまいち信用できないけどまあいいか。
後を追う。
王子は迷ったのか道を行ったり来たりを繰り返す。ようやく足を止めた。
「ここは? 」
声がする。それも一人や二人ではない。
「ほらそこ違う! 」
「す…… 済みません」
「またやり直しね。もう不器用なんだから! 」
「はい…… 」
「あの王子…… 」
「ああ、ここは採石場だ」
確か…… ガムが送られたところ。
「ほら急ぎなさい! 時間は無限にあるけど手は抜かないの! 」
嫌なところに来てしまった。
「ちょっといいか? 」
「これは王子様」
「忙しいか? 」
「いえまったく」
「彼女はステーテル。私の婚約者だ」
「王子! 話が飛躍しています」
「いいからいいから」
婚約者などと言いふらされては後が大変。今のうちに訂正しておく必要がある。
「興味があるそうだ。教えてあげてくれないか」
「はい! もちろん喜んで! 」
さっきまで大声で叱っていた女性。どうやらここの責任者のようだ。
威張り散らしていたさっきとは態度がずいぶんと違う。
採石場。
「固すぎず柔らかすぎず。欠けている物は除いて選別。理想を言えば大きさも形も同じぐらいがいい。後は汚れをとり、よく磨いて完成。それらを一つずつ積み上げていくのが大変。
一つずつ丁寧に。重ね方にもこつがあってね…… 」
長くてつまらない説明を聞き流す。
「どう、やってみる? 」
王子の顔を見る。
「分かりました。お願いします」
なるべく形のいい石を選び重ねていく。
続く




