シーンジャット
結婚前日。
ドンドン
ドンドン
「ステーテル。明日のことなんだけど。お前が決めてくれないか? 」
王子が勝手に入ってくる。
「失礼する。どうだろう? 俺は良く分からない。だからお前に全て任せたいんだ」
「王子…… 」
「良いだろ? 」
翌日に迫った婚礼の儀。今更拒否などしようもない展開。
「すみません。王子お話が」
ガムが間に入る。
まさかこの後婚約を解消されるとは夢にも思わない王子は笑顔で応じる。
「何だ? 早くしないか! 」
「ではさっそく。実はですね…… 」
ガムがこちらを見て何かつぶやいている。
いつも嫌な役は私に押し付けて自分はそっぽを向いている。ああ損な役回りだこと……
「王子! 王子に申し上げます! 」
「だから何だ? 」
「ステーテルより婚約を解消したいとのことです」
「はああ? 何を言っておる」
「ではお伝えしました」
「な…… 」
言葉にならない。
「お…… 俺を振る気か? 」
「はい。すみません。ステーテルの我がままをお許しください」
「えーい黙れ! 黙れ! 勝手にしろ! 」
怒りからステーテルへの興味を失った?
「王子…… 」
「もう顔も見たくもない! 出て行け! 今すぐここから立ち去れ! 」
王に挨拶する時間も取れずに屋敷を後にした。
「さあステーテル行きましょう」
念のために用意しておいた馬車で国境付近に向かう。
用意がいい。薄々感づいていたのかしら?
ああまた迷惑をかけてしまった。
二人は再び理想の王子様を求めて旅に出る。
どうして私はこうなのかしら?
マリッジブルーなんて言い訳。
私すごく怖いの。
未だに一度も殿方とご一緒していない。
当たり前だけれど。
でも男性を知らなすぎる気がするの。
もう少しだけでも身近にいてくれたらよかったのに。
ガムは怒っているのかしら?
もしかして私、ガムと離れたくないだけなのかな。
たまに優しい時のガムと一緒に過ごす。
いつもならいいのだけど。ガムは気まぐれだから。
私どうしちゃったのかしら?
小さい頃はよく遊び歩いた男の子もいて身近だったのに。
ド・ラボーになんてならなければよかった。
王子様なんて求めなければ私、幸せになってたかもしれないのに。
その辺の男ではいけないのかしら?
ああ何を言ってるのか自分でも分からなくなる。
ステーテル! 自信を持ちなさい! まだ理想の王子さまに巡り合えていないだけ!
諦めてはダメよ! 焦ってはダメ!
自分に言い聞かせる。
もう疲れた。
おやすみなさい。
「ステーテル! ステーテル! 」
ガムに叩き起こされる。
「眠ってしまったみたい。私ったらどうしたのかしら? 」
「旅の疲れで眠ったんですよ」
「ガム…… 」
「着きましたよ。いつまで寝ぼけてるつもりですか? 」
「ええっ? ここはどこ? 」
「国境を越えました」
「ここはシーンジャット」
馬車を下りて宿を探す。
もう辺りも真っ暗。
馬車でどれほど走ったのかしら?
急がなければ!
夜道をひたすら歩き回る。
明かりが見えた。
これは橋? シーンジャットロード?
「ガムどうしましょう? 」
「私に聞かれても…… 」
もちろんガムも私も初めてくる場所。
どうすればいいのかよくわからない。
「まあいいんじゃないですか。橋を渡ってしまいましょう」
「そうね」
橋の向こう側はずいぶんと明るい。大きな町があるに違いない。
橋を歩き始める。
「お嬢さん方。ハアハア」
息を切らし何事か喚いている男。無視するわけにもいかない。
「お待ちください! そちらはシーンジャット」
「分かっております」
老紳士が止めに入るもガムは先に進もうとする。
私はガムについて行くのみ。
「お待ちください! 私の話を! 」
「もう何なのよ? 」
「それ以上行ってはいけません! あと一歩でも踏み込めばもう戻れませんよ」
変な老紳士と言うか爺に絡まれた。
続く




