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追手

がくがく

がくがく


王子と二人きり。


「どうしたんですか王子? 」


「済まないが黙っていてくれないか。今は何も考えられない」


ボンクラ王子に笑みと余裕が消えた。これが本来の王子?


「説明してください! でなければ言いふらしますよ」


「ステーテル! 」


「王子を見損ないました。まさか子供までいたなんて。でもご安心ください。あなたの意思は尊重します」


「うん? どういうことだ」


「ですからお二人。いえ赤ん坊も含め三人仲良く末永くお幸せに」


「待て! 聞いてくれ! 」


取り乱す王子。


今までちやほやされていい思いをしたのだ。いい気味じゃない。


こんな王子は最低。


「どうするおつもりですか王子? 」


「いや自分では決められない。どうすればよい? 」


自分では決められないんだから本当に呆れてしまう。


「だからあの女性と結婚すればいいでしょう」


「しかし位が。身分が…… 」



この国のルールでは子を授かった二人は自動的に結婚しなければならずそれは王家も守らねばならない。王子と言えど例外は認められていない。


一夫一婦制が基本。


これはどの国でも共通のルール。


まず婚姻をし子を産む。


これが昔ながらのやり方。


最近では疑問に思う国民も少なくないが古くて頭の固い現国王の元では変わることは無く次世代に引き継がれていくだろうと言われている。


もちろん国王も他に愛人がいるなどと噂されることのないお人で国民からも人気が高い。


一夫多妻などもっての外。


ハーレムなど論外。


もちろん陰でこっそりお盛んな奴もいるがそれは例外中の例外。


国は民に課すが民を裏切るようなことはしない。


国王が守らずに誰が守ると言うのだ。


それが国王制。


子を守るため。


国民の幸せのためである。


とまあガムの話は続くのだがどこから仕入れた情報なのか信用に値するのか?



「王子はどうするおつもりですか? 」


「だからそれをお前に問うているのではないか」


上からの態度。頭に来る。


「ではお答えしましょう」


王子のすがるような眼が向けられる。


「王子はやはりあの女性と結婚すべきです」


「はっきり言ったな。よし我も王子である。従うとしよう」


結局決められずに言われるまま受け入れる。


ちょっとだけほんのちょっとだけかわいいと思ってしまった。


情けなさよりもかわいさが勝るなんてさすがは王子。


「では私はこれで失礼します」


王子に別れを告げる。


もう二度と会うことはないだろう。


さあ旅支度を始めなければ。


もうガムったらどこに行ったのよ!


ガム帰還せず。


何かあったのかしら?



ざわざわ!

ざわざわ!


外が騒がしい。


もう陽もくれると言うのに…… まさか晩餐会の準備かしら。


様子を見に行ってみる。


執事の姿がある。


何か不穏な空気。どうしたのかしら。


「ステーテル様。こんなところにいらしたんですか探したんですよ」


そうだった。お付の者を一人借りていたのだった。


まあ館は危険が無いのだから単独行動も許されている。


迷った時には役に立ちそうだけどもう慣れて来たし……


「何を騒いでらっしゃるの? 」


「それが…… ニーチャット国の者だとか。人を探しているようですよ」


ニ―チャット? まずい…… もう追手が来るとは想定外。


はやく逃げなければ。


「いいですか。そのような方はここにはおりません。お引き取り下さい」


執事が対応する。


「本当だな? 」


「はい」


「後で分かって関係が悪化してもいいのか? 」


追手の男に見覚えがある。ニ―チャット王子の専属部隊。


確か名前は二―ドルフ?


しつこいんだから。


王子の婚約者に求婚してくる人がどこにいるのかしら。


王子のプライドを傷つけたのは間違いないけれど。あの男だって王子を裏切っているじゃない。


本当にしつこい。まさか王命でもなく勝手に探し回っているのではないかしら?


あの蛇のような執念深さが気持ち悪い。


舌なめずりするあの感じとかも生理的に無理。


顔も体つきも悪くないのに女癖だけはどうにもならない。


ああ。近づかないで!


「では本当に良いのだな? 」


「ええ。お帰り下さい」


「分かった。ではこのニードルフ伝えるとしよう」


しつこいニードルフの追跡をかわすことに成功。


だがそこにガムが……


                  続く

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