お別れさせていただきます!
『ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ』
選ばれし者 理想の王子様を求めて旅立つ。
旅立ちの時。
私はステーテル。皆さんよろしく。
こちらお付のガム。全て彼女を通してね。
自己紹介終わり。
私どう見える?
きれい? 当たり前!
かわいい? うん。
才女? そこまでかしら。
高貴な方? ブブー!
でも資格があるの。
何ってそれはね……
『ド・ラボー』
大変美しいって意味。
この資格がある者は王子様と結婚を認められる。
私の国では私だけがその称号を得ているの。
もちろん。結婚を果たしてしまえば用無しなんだけどね。
私は今悩んでいる。
なぜなら…… ここの王子は私の理想とぴったり一致。でも……
ああそうだ。王子の条件を教えてなかったわね。
王子様に求める十か条
その一 第三王子以降であること。 なぜなら後継者争いに巻き込まれたくないから。
その二 馬を乗りこなせる方。 白馬の王子様とまで行かなくても格好よくてかわいい方。
その三 富める者。 当たり前だけど貧乏王子では困ります。
その四 性格のいい方。 できれば家族もそうであって欲しい。
その五 浮気をしない誠実な方。 王子には無理な注文だって分かるけど。
その六 戦の無い平和な生活。 戦争はもちろん内紛もあってはならない。
その七 気候の良い過ごしやすい場所。 暑いのは嫌。寒いのはもっと嫌。
その八 夜の営みが下手な方はお断りします。
その九 息が臭い方はお断りします。 臭いにも敏感。
その十 おじさんは受け付けていません。
その他些細なことでもお断りする場合がございます。
ご注意願います。
ちょっとワガママ過ぎたかしら。
では今の状況を説明するわね。
私の生まれはここニ―チャット。
今この国の王子と婚約を結んだところ。
一ヶ月で結納って早くない?
もうあと十日。
十日後に王子と契りを結ぶの。
うふふふ…… 照れちゃう。
でも王子には一つ不満がある。
それはね。王子自身ではない。
ここの王様は非常に手が早いの。
無理矢理お相手させられそうになったわ。
話によるとここの城の者は全員毒牙にかかったって言うじゃない。
信じられない!
侍女たちのヒソヒソ話が聞こえてくる。
「ねえ聞いた? 」
「うんうん」
「私も混ぜてくださらない」
一人が噂話を始めたので私もつい輪に入る。
「これは秘密よ。絶対に秘密! 」
秘密? 何かしら?
「王様がね退位なされるんですって」
「ええっ! 王様が? 」
この国では王の好きな時に退位が許されている。
もちろん引き継ぐ者が正式に決まっている場合のみだが。
基本的には王子に子が生まれて引き継げるとなってだが。
「たいい? 」
「そうです。 退位です」
「ステーテル様。顔を赤くされてどういたしました? 」
「だって王のたいいって言ったら…… 」
「はい一大事でございます。ですがご安心を! 」
「たいいって 好きなんだからもう! 」
「勘違いされておりますね」
「いえ大丈夫。王様は困った人。体位が…… もう恥ずかしい! 」
「ステーテル! 」
私の理想の旦那様がお帰りになったわ。
「困ったことになった」
表情を曇らせ下を向く王子。
「どういたしました? 」
「実はな…… 兄上たちがいがみ合っている。このままでは我も巻き込まれてしまう。式を早めるとしよう」
えっ? 迷いが生じる。
私の理想とは違ってきてしまった。
ガムを呼ぶ。
「お願い! 」
ガムが引き受ける。
「王子様よろしいでしょうか? 」
「なんである? 申してみよ」
「このお話無かったことにしてもらいます。申し訳ございません」
「この無礼者! 」
「では失礼します」
何のためらいもなくお断り。
「待ってくれ! 我が何をした? 教えてくれ! 」
王子としての面目丸つぶれ。プライドの高い王子は怒りが収まらないご様子。
「ごめんあそばせ」
このままでは危険が及ぶのは目に見えている。すぐにでもこの国を脱出しなければならない。
故郷を追われるように急いで国を離れた。
こうしてステーテルの理想の王子様探しの旅が始まった。
続く