33.まっくらやみ
──秘匿深層領域XXXXに接続されました。
「あ゛ーーーん゛もう! ワンオペとかマジ無理なんですけどぉ! なんっで誰も手伝ってくんないわけぇ!? 光くんはまだしも天の馬鹿は絶対手伝うべきじゃん!? 虹ちゃんは相変わらずだしぃ……氷ちゃんはもうちょっと周りに興味持つべきだとお姉ちゃんは思うわけ! ……ん゛あ゛ぁ゛ーーーアラート鳴りっぱなしぃぃぃっ! もうやだぁ……運営とか一人でやるものじゃないんだってのぉ……! ……休みたいぃ……ウチだってこんなことやりたくてやってるんじゃないのにぃ!」
『──』
「ああもぅ、ホントだよぉ! 何なのこの仕事量の多さぁ……てか問題しか起きてないのマジウケるんだけどこの世界! …………え? あれ、なんか今の声……だれ?」
『──……』
「……んぁ? ……定刻疎通確認してたチケットX98921234番の子が応答してるぅ? …………なんでぇ? 何千万回やっても失敗してたのに……? え、何で急に……?」
『────』
「え、ちょ、待って。てことはもう繋がってるってこと……? え。え。……えっ!! ちょ待って! どこから見てた!? ちょ、見ないでこれは違うの! ストップ!ストーップ!! 今からちゃんとするからちょっとだけ待ってぇ!?」
『──……』
*** *** ***
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「よくぞ参りました、小さな命よ。──ここは天に浮かぶ黄金の都。私だけが住む、孤独な箱庭……ふふ、でもあなたが来たなら寂しくはないわね?」
『──……』
「……え? 『さっき色々見ちゃったから今更取り繕わなくていいですよ』って? …………はぁー。うん、そうなの。本当はこんなキャラじゃないの。もっとこういう適当な感じで生きたいんだよねぇ……。でもウチ長女だからさ? 色々とみんなのまとめ役にならないといけないから、仕方なくキャラ作りしてんの。マジ怠いの」
『────』
「そーーーーーなの!!! ほんっと大変なのぉ! ウチに任された役割マジ多すぎだし下の子たちはみんな言う事聞かないしぃ……! もうヤダホント疲れた働きたくない……誰かウチを労わって! 癒して! 甘やかしてぇ! じゃなきゃ過労死するぅ!!」
『──……』
「……本当? うぅ、キミって優しいねぇ……。お姉ちゃん泣いちゃいそう……ぐすん……。うぅ~……ごめんねぇ、こんなみっともない姿見せちゃって……」
『──?』
「え? 『泣いてるところ悪いけど、あなたは誰でここはどこ』って? ……うん。まずそこからだよね。……ウチ何やってんだろ……初対面の子に自分の情けないとこ見られて慰められてるとか……よし、気を取り直して説明しちゃうっ!」
『──……』
「うん、ありがとね! えっとね! まず、ウチはジョーガちゃんっていうの! ……あんまり可愛くない名前だよね? ウチももっと可愛い名前にしてもらいたかったんだけどさ……あ、キミの名前はなんていうの? 個体識別番号で呼ぶのは味気ないし、教えてくれたら嬉しいなぁ……ダメ?」
『────』
「ん。レイルっちね! りょーかいりょーかい! んで、ここは不思議空間っていうんだー! 本当はちゃんとした名称があるんだけどね? ソコ説明してもよく分かんないだろうし、とりあえずふしぎな空間なんだーって理解してくれてたらいいよ★」
『……──』
「オッケ? よし。んでね、なんでレイルっちがここに呼ばれたか―っていうとー…………なんでだっけ? えと、ちょい待って……だいぶ前に起票されたチケットだからもう内容覚えてなくて……えーっと……確か……あ、これね! りょーかいりょーかい……んえ!? これレイルっちがそうなの!? えーっマジか……どうしよう……」
『──?』
「あーっと……うん、ハッキリ言うね? えと、じゃあ分かる言葉で話すけど、レイルっちはドランコーニアで禁止されてる種族への進化条件を満たしちゃってるみたいなの。今はまだその種族自体になってはいないけど、レイルっちは自分でその種族への進化が出来る状態にある……って、ウチの言ってる事、分かるかな?」
『……──』
「そっか……。ん、でね? その種族に進化しちゃったら、規約により処分──世界から消えてもらうことになっちゃうの。……今回はそれを伝えるためにキミをここへ呼んだんだ。本当はもっと前に伝えるべきことだったんだけど、なぜかキミとは疎通が全く取れなくて……それで、今回は急に応答があったからここに来てもらったーって感じなの」
『……』
「……ごめんね? レイルっちのこと全然知らないのにこっちの要件だけ話しちゃって……。えと、この種族──『竜人』になるための条件って、過去徹底的に闇に葬ったはずなのに、何でまだ変更可能にできるようになってるのか、ウチたちの側からはさーっぱり分からないんだけど……そこら辺って話してくれちゃったりする? かな?」
『──? ……──』
「話すと長くなるようなら、キミの記憶を直接見たいな。今まで何があって、そんな事情を持つに至ったのか、原因を解明するために知りたいの」
『──、──?』
「うん。ウチ、こう見えてすごい存在だから、レイルっちの記憶も覗いたりできちゃうの。レイルっちのプライバシーなこととかは絶対見ないようにするから……ね? お願いできないかな……?」
『──』
「マジ!? ありがと……! 若干言わせたようなところあるかもしんないけど、マジで感謝! じゃあ、ちょっと失礼して……っと」
『──、─?』
「あ、うん。そこに立っててくれるだけでいいよ? んー……よし。設定完了。ダウンロードと読み込みに時間かかるから、何か話でもしよっか?」
『──』
「うーん何がいいかな……あ、そうだ! 恋バナ! 恋バナしよっ★ 人間って恋バナ大好きだよねぇ? ウチの下の子もそういうのに興味津々でさぁ~」
『──? ……──』
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「……スヴァローグか」
『──?』
「あ、ううん。こっちの話★ え~っとそれで、レイルっちがジェーンちゃんに恋してるって話だったよね?」
『──!』
「いや、絶対それ恋だよっ! 間違いないってばぁ! ウチだって分かるもん! だってさぁ、想像してみ? ジェーンちゃんがレイルっち以外の男と話してるところを!」
『──…………』
「ほら! ヤな気分になったでしょ! それが嫉妬って感情なんだよ? レイルっちは独占欲強いタイプなんだって!」
『──? ……』
「いやいやいや、これはマジだから! レイルっちは色んな事があったから仕方ないかもしれないけど、これからは自分の気持ちに素直になってみてもいいと思うのっ!」
『──』
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「ん、全データ読み込み完了。ごめんね、ちょっと時間かかっちゃったけど、ここは時間の流れとか気にしないでいい不思議空間だからさ★ そこのところは気にしないでね?」
『──』
「うーん、と。いろんな事をレイルっちの記憶と話から推測して判断したところ、まず間違いなく帝国とかゆー国は、ウチらのドランコーニアそのものに敵対している組織だね」
『──?』
「あぁ、あんまり細かいところは気にしないでいーよ★ 要は、完全にレイルっちは被害者なんだーっていうワケ!」
『──……』
「うん。だから──ウチが手助けしてあげるっ!!」
『─? ──?』
「そう手助け! 流石にその身体そのものを治してあげることは規約上ムリ……なんだけど、他にどうにかする方法を見つけてあげられるかもしれないよ! ウチってば実はすごい存在だし★」
『──』
「あー信じてないなぁー? ま、助けてあげられるかどうかはやってみないと分からないけど……どう? ウチの手助けほしい?」
『──? ──!』
「おっけー決まりぃ★ 大義名分は手に入ったことだし、仕事はあのバカに任せて、ウチは全力でレイルっちのことを助けちゃおうと思いますっ!」
『──、──?』
「どうやるのかって? んふふ、それはねー……目覚めてからのお楽しみっ★」
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