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backup  作者: 黒い映像
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124.未来に触れる

「なんっっっで止めなかったんだよ!?」

「あうあうあう」


レイルと会えない喪失感で一日を過ごした後に親友から告げられた事実は、私の脳を沸騰させるには十分すぎた……!


「知らない女がお手伝いさんとして一緒に住み込みだぁあっ!? 何だその唐突な展開は!? 私は聞いていないぞ!?」

「そりゃ唐突な展開ですもん。私の目の前で急にポップしてきて、ビックリしました」

「ビックリしました。じゃねーーーんだよ!! 止めろよぉおお!!」

「あうあうあう」


なんで目の前に居てそんな展開をみすみす許すんだ……!


「だっていい人でしたもん、ミーシャさん。それに、聞けばジルアより先にレイルさんと親交があった人みたいですし、チャンスは平等に与えられるものだと思いませんか?」

「お……オマエまだ私の邪魔をする気なのか……!? そんなにも私とレイルを引き離したいのか……!?」

「大げさな」


大げさじゃない……!

絶対コイツは私とレイルを引き離そうとしてる……!


「はあ、まったく。ジルアは相変わらずですね。ジルアがそんな調子じゃ、レイルさんも愛想付かしちゃうんじゃないですか?」

「──」


レイルが、私に、愛想を付かす……?


「あ……うああ……!」

「あっ泣いちゃいました」

「うぁ……! ひぐぅ……っ!」

「……ちょっと言い過ぎましたかね。ほら、泣き止んでください。よしよし、ジルアちゃんは泣き虫でちゅね」

「やめろぉ……! あたまなでるなぁ……!」


なんなんだよぉ……! 私をどうしたいんだよぉ……!


「ふえぇ……」

「どーしてこんなに弱くなっちゃいましたかねぇ。レイルさんがジルアを裏切るわけないじゃないですか」

「ぐすっ……」

「あれだけの事をしたジルアを放って、他の女に乗り換えるほど薄情な男だと自分で思ってるんですか?」

「思ってないぃ……!」

「だったらもっと自分に自信を持ってくださいよ。ジルアはとっても強い女の子でしょう?」

「ん……」

「まぁでもちょっと勇ましすぎてミーシャさんに女の魅力で負けてるかもしれませんが」

「わああぁん!」

「笑」


もうなんなんだコイツ……!

慰めるか突き放すかどっちかにしろ……!


***


「落ち着きました?」

「……」

「そろそろジルアも今後の事考える時期だと思うんですよ。レイルさんはジルアの為に新しい道を見つけました。それに対してあなたはどうですか。レイルさんが居ないと腑抜けてふにゃんふにゃんの病みまくりガールになってるだけ。レイルさんに今の自分が相応しくないとか思いませんか?」


グサリグサリと言葉のナイフが突き刺さってくる。

その通り過ぎて何も言えないし致命傷過ぎて死にそうだった。


……前と一緒だ。レイルに甘えてるだけの自分が……いた。

結局私はまた同じことを繰り返そうとしてる。

レイルを支えるという役割で、自分を満たそうとしていた。


「……私はジルアの親友ですからね。ジルアが自分の足で立って、歩けるようになるまで、支えてあげます」


放りだした右手に、熱が触れた。

思いが伝わるくらいに、ぎゅっと強く握られる。

信頼と愛情が、その手から伝わってくる。


「あなたを、信じてますから」




*** *** ***




一人きりの部屋で、私はベッドの上で膝を抱えていた。


「……」


結局今日もレイルは来なかった。

なんでも屋敷の掃除とミーシャとかいう同居人の女の荷物運びを手伝うのだそうだ。


……こんな女々しい感情、醜すぎて嫌になる。

確かにこんなことばっかり考えてる女なんて、レイルに嫌われたって仕方がない。


──『そろそろジルアも今後の事考える時期だと思うんですよ』


前に進まないといけないのは分かってる。

冒険者の時のように、何も考えず戦って金を得るだけの生活には戻れない。

私は、王国の第二王女としての責務を果たさなければならない。


「……うぅぅ……」


今与えられている、山のように積み重なった決裁書類を捌くくらいの仕事はできる。

姉さんみたいに、皆の前に立って指示を出すことだって、頑張ればきっとできる。

性分に合わないという理由だけで逃げていた過去の自分とは、決別しなければいけない。


全部、全部、レイルの為だと思えば、耐えられるはずなのに。

レイルが近くにいないだけで、どうして私はこんなにも弱くなってしまうんだろう。


「ジル、入っても大丈夫かしら」

「──! ……うん」


控え目なノックがした後に聞こえてきた声で我に返り、目元の涙を咄嗟に拭った。


「こんな時間にごめんなさいね、ジル」

「ううん、大丈夫」


姉さんは部屋に入るなり、申し訳なさそうな顔で謝ってきた。


「どうしたの?」

「ちょっとジルとお話がしたくて」

「……何の話?」

「ジルが、この先どうするのかっていうお話」


図ったようなタイミングで現れた姉さんに、内心動揺してしまった。

……毎回こんな感じだ。

私の考えなんて見透かされてるんじゃないかと思うほど的確に、姉さんは悩んでいる時に声を掛けてくれる。


「ジルがこれからどうしたいのか、ジルの考えを聞いておきたくて」

「…………もう我儘は言わないよ。あれだけ好き勝手したんだから、本来の立場に戻る」

「……そう」


これ以上、子供でいることなんてできない。


「私ね、ジルの事、とっても凄いと思ってるの」

「……え?」


唐突にそんなことを言われて面食らってしまった。

急に一体何を……?


「ジルは昔から何でもできたわよね。大抵の学問は成績優秀で、魔術は言わずもがな。皆を惹きつける人望も有って……」

「な……何言ってるの……?」

「今回の件だってそう。ジルは帝国の悪い人を倒して、その上レイルくんまでその身を呈して救ったのよ? 本当に凄いことを成し遂げたのよ、ジルは。誇るべき偉業だわ」

「……それくらいしないと、私がこれまで受けてきた恩恵に報いることができなかった。私は皆の好意の上に胡坐をかいて生きてきたようなものだから」

「そう思えるのなら、ジルはもう立派な大人ね」


姉さんは嬉しそうに微笑んでくれた。

けれどそれは、今の私にとっては苦痛だった。


「私は……全然大人なんかじゃない。成長できてないんだ。レイルがいなくなってから、ずっとうじうじしてるだけの弱い人間なんだよ。……姉さんみたいな大人には、なれない」

「私みたいになりたかったの? ジルは」


姉さんの問いかけに、私は黙り込むしかなかった。

憧れていないと言えば嘘になる。

姉さんはいつだって自信に満ち溢れていて、理路整然と話せて、皆から頼られていて、誰からも愛されている。

王女としての在り方の正解だ。

私は……そういう風になれたらいいなって思ってた。


でも、早々に無理だと気付いた。

私は組織的な関わり合いが苦手で、誰かを引っ張っていくようなカリスマ性もない。


だから、自分にできることをしようと、自分だけにできることを探そうとして躍起になっていた。


「私はね、ジルみたいになりたかったわ。あなたのことが羨ましくて仕方なかったのよ」

「……え?」


姉さんが、私を……?


「私はね……自分の事を優秀だなんて思ってないし、何かの才能があるとも思ってないのよ。昔はそんなこと気にしてなかったんだけど、あなたが成長して頭角を現す度に、自分には全然才能が無いんだって気付いて、惨めに思えてきちゃって」


「醜い感情よね。でも、こんなこと誰だって思うものよ。人と比べてないものねだりして、勝手に劣等感を抱いて、卑屈になって……」


「失敗して挫折して、それでもって立ち上がって……そうやって確固たる自分というものを作り上げていったの」


姉さんの言葉には、重みがあった。

経験してきた者だけが語ることのできる説得力が宿っていた。


「昔はずっと皆に迷惑かけてたわ。ジルが可愛く見えるくらいには我儘だったのよ、私」

「……いや、嘘でしょ。姉さんがそんなわけ、」

「本当なのよ。スヴェンに聞いてみたら分かるわ。……あの人にはずっと我儘ばっかり言って、特に迷惑を掛けたわね。挙句の果てに騎士を辞めるとまで言わせるような失敗もしちゃったし……」


姉さんが左眼を覆うスカーフに触れた。

あの時の事件の事だろうか。


「そういう失敗もして、今の私になったのよ。……幻滅したかしら?」

「……するわけないよ。私の中の姉さんは、いつでも優しくて強い人だったから」

「ありがとう、嬉しいわ。……でもね、一皮剥けば皆そんなものなのよ。自分が特別優れた存在だと思い込んでる人は、まずいないわ」


……皆同じ。

だから、そんなことで悩まなくて良いって言いたいのかな……。


「私がジルになれないように、ジルも私にはなれない。人にはそれぞれ適した役割があって、それに合った生き方をするものなのよ」

「……」

「ジル、これが何か分かる?」


唐突に姉さんが何かの用紙を私の前に出してきた。

それを受け取って見てみると、そこには何者かの名前がびっしりとリストアップされていた。

……誰だ? 全く記憶にない名前ばかりだ。


「これは?」

「ジルが冒険者の時に倒してひっ捕らえた悪人のリストよ」

「……は?」


全然理解できなかった。

私たちが倒して捕らえた悪人……?

いや、意味は分かるけど、何でこんなものを見せてきたの……?


「凄いわよね。たった一年でこれだけ捕えたのよ? ジルの頑張りがどれだけのものだったのか、数字に表れると分かりやすいでしょう?」

「別に悪人を捕まえるのが目的だったわけじゃないんだけど……」


冒険中の事故のようなもので、偶然遭遇してしまったものを仕方なく退治していただけだ。

けれどその数が思いの他多かった。

市井には悪知恵の働く者が多く、目に付いた端から捕まえていたら、いつの間にかこんな数になっていたようだ。


「えっと……姉さん、一体何を伝えたいの? 褒めるためだけに持ってきたんじゃないんでしょ?」

「ええそうよ。この話の本題に戻るけど、ジルにはこういうお仕事が合ってるんじゃないかって思って」

「私に……?」


姉さんがもう一つ用紙を渡される。

それに書かれてあったのは……『特務憲兵隊の再編要綱』……?


「特務憲兵隊……何コレ?」

「簡単に言えば国の治安を守る部隊、といったところかしら。普通の衛兵さんと違うのは──」

「国家機関所属の人員を対象にした内部の犯罪捜査権を持つ部隊、でしょ?」

「言われちゃったわ……。ジルには詳しく説明するまでもないわよねぇ」

「いや、これくらいは皆知ってるでしょ。聞きたいのはコレをどうする気なのかってところだよ」

「ええと、そうね。まずはどうしてこんな話を持ってきたかから説明しましょうか」


どうにも謎だった姉さんの話の流れは、その説明を聞いてようやく納得できた。

要するに今回の騒ぎで元々あった特務憲兵隊は、全て帝国に与した貴族派のメスが入っており、既に機能していない状態だったのが発覚したそうだ。

組織再編が急務として挙がり、そこで姉さんの案として提案されたのが、なんと私をトップにした部署を新規創設しようというものだった。


「ジルの経歴はこのリストから逆算して、十分な資格を持ってると判断できるように多少脚色するわ」

「いや……ちょっと待って急すぎて何が何やら……! まず何で私が!?」

「理由はこのリストで十分でしょう? ジルは悪人を取り締まるための能力が特に優れてると思うのよ。冒険者時代の活躍には皆感心してたのよ? 特にあの有名なトロン盗掘団のアジトを一人で突き止めて壊滅させた時の話は私も興奮したもの」

「トロン盗掘団って……いや、あんなの偽装工作が雑すぎて、誰だって分かるよ!」

「でも気付いて手を出したのはあなただけよ、ジル。あなたが動かなかったら、あのまま彼らはまた悪事を働いていたはずよ」

「それは……」


確かに、あの時私は動いた。

使命感……なのかな。

私には力が有って、悪事が許せないという強い思いがあった。

だから、心の赴くままに戦った。


「でも……それとこれとじゃ全く話が別じゃない? 内部犯罪って……」

「そうかしら? 同じようなものでしょ? 悪事を働く人は内にも外にも等しく存在するのよ。今回だって帝国の甘言に乗ってしまった内部の貴族のせいで、多くの血が流れてしまったのよ」

「いや……それは、そうかもしれないけど……うぅん……」

「内部犯罪の調査には強力な権限が必要よ。そこを王家の人間であるあなたが直々に指揮を取ることで、最善の一手になるはずだわ」

「そんなものなの……?」


姉さんの説明に思わず首を傾げてしまう。

正直ピンとこない。


「それと、今回の再編に従って新規創設する部署には、自由な人員の配属が許されるわ」

「!?」


自由な人員の配属……!?


「そ、それって、それって!?」

「ええ。王国騎士からでも、王国軍からでも、民兵からでも、自由な人材を好きなように引き抜くことができるわ」

「マジでっ!?」

「マジよ」


それは、つまり──レイルと一緒に仕事が出来るってことだ!!!


「や、やるっ! レイルと一緒にお仕事するっ! 姉さんっ! 私にそこの席ちょうだいっ!」

「いい返事だわ、ジル。任せておきなさい。あなたのお願い、絶対に叶えてあげる」

「姉さん好きっ! 大好きっ!!」

「きゃっ! もう、ジルったら現金なんだから」


やっぱり姉さんはすごい……! 私の喜ぶことをちゃんと分かってくれてる!

思いもしないところから天職が舞い降りてきた……!


「ちゃんと結果は出さなきゃダメですからね? 公的な場での仕事ということをちゃんと自覚しないとダメよ?」

「分かってる! 絶対何とかする! 悪人をバンバン捕まえていっぱい結果出す!」

「そういうことじゃないんだけど……まぁ、今はとやかくは言わないわ」


これで全部解決する……!

ありとあらゆる悩みが晴れやかに消えていく……!

本当に姉さんは凄い。メンタルケアの達人か何かかもしれない。


──レイルと一緒に悪人をぶっ飛ばす仕事って、つまりこれまで通りということだ!




*** *** ***




翌朝、いつも通りアルルの手を借りながら身支度を整えていた。

この日はレイルがちゃんとやってきた。


「ジェーン!」

「わっ!?」

「あっ!?」


私の着替え中にノックもせずに……!


「も、もう、ノックくらいしろっ」

「ご、ごめんっ! ついっ」

「ガン見しながら謝ってんじゃねーですよ。とっとと出てってください、このむっつりスケベ」

「ゴメンッ!」


バァンと扉を閉めて、そのままレイルは走り去ってしまった。


「……別にレイルなら見られてもよかったんだけど」

「何言ってるんですかこのむっつりスケベズは。トラブる的なスケベハプニングなんか私の目が黒い内は許しませんよ」

「だって今まで全然無かったんだぞ!? 新鮮なんだよ! 顔真っ赤にして恥ずかしがるレイルとか超レアだろ!」

「ダメですこの王女様……早くなんとかしないと……」


だってホントになかったんだぞ……一度も……!

一年も一緒に過ごしてきたんだから、一度くらいそういうハプニングあったって良かっただろうが……!


***


「……そんで? ダニーの家での生活はどうなんだ?」

「楽しいよ。ダニーは毎日酒盛りしてるし、ミーシャさんのご飯は美味しいし。でもまだ色々とやることがあってさ。ダニーの屋敷はほったらかしだったから掃除中なんだよ。昨日はミーシャさんの荷造りと荷運びで大変だったし」

「ふ、ふーーーん。そうなんだ。へぇー、そうなのか」

「うん。あ、昨日は来れなくてごめんな」

「べ、別にそんなの気にすんな。わ、私は一人でも平気だし」

「そ、そっか。ジェーンは強いな……。俺は早くジェーンと会いたかったんだけど……」

「んッ……! わ、私も、本当は会いたかったぁ!!」

「──! ジェーン!」

「レイルぅっ!」


腕を広げるとレイルが駆け寄ってくる。

まるで尻尾を振って飼い主に駆け寄る犬みたいだ。

もうたまらんかった。


「はいダメー。なに私のいる前で抱き着こうとしてんですか。イチャイチャ禁止です。イチャイチャ禁止ゾーンですここ」

「邪魔すんなバカッ! あとちょっとだったのに!」

「あんたは今から仕事でしょうが。イチャイチャしてる暇はありませんよ。レイルさんも姉の言う事はよく聞いてくださいね」

「ご、ごめんなさい……」

「姉!? オマエいつからそんな……ってアレか! 偽装の家名のヤツか! もう必要ないだろがオマエッ!」

「ぶぶー。まだ必要でーす。設定生きてまーす。私はクオデリス家の長女であり、レイルさんと家族の立場にあるのです。あっ、ジルアより先に家族になっちゃってすみませんね」

「オマエッ!! それはやっちゃならんことだろうがッ! 戦争だぞ!」

「ジェーン落ち着いて……」


明確に私の敵と化したぞ……!


***


「もう足がだいぶ動くようになってきた。婆やには完治には半年が目途って言われたんだけどな」

「そりゃこんだけ暴れてたら治りも早くなりますよあいたたたもうちょっと優しくしてください」

「じぇ、ジェーンもうそれくらいにしてやってくれ……!」


婆やにも積極的に動かそうとした方がいいって言われてたけど、これなら全快する日も早そうだ。

アルルをベッドに引きずり込んで腕ひしぎ十字固めを極めたまま、そんなことを考えていた。


「……ふふっ」

「ねぇ笑いながらアームロックするのやめてくれませんか怖いので」

「なんか楽しくなっちゃって」

「えっ怖」


別に腕を極めるのが楽しくなったわけじゃない……。


「レイルもこっちこい。ほら、いいからここに」

「う、うん……」

「ちょっと。ジルア」

「違うよ。そんなんじゃない」


私の隣にレイルを並べて、アルルを放っぽりだして、三人横並びでベッドに寝転んだ。


「足治ったらこの三人で何か楽しいことがしたいな。何でもいいから」


そんな未来を口にした。

相棒と親友の二人が居て、今が十分に楽しいと思える日々を送れている。

だけど、もっと楽しいことがあるんじゃないかと、ふと思ってしまった。


「今だって十分じゃないですか?」

「私の足が動かないのはヤダ。できることが限られる」

「三人で冒険にでも行くか? りっちゃんが居たらどこにでも一瞬で行けて便利そうだ」

「人を便利道具扱いしないでくれません?」


レイルの提案は魅力的だった。

アルルも冒険者だし、三人とも実力者だから、きっと頼りになるだろう。


「それに、あなたたち二人はもう冒険者じゃなくなっちゃうじゃないですか」

「……」

「……」


レイルの方向を向いたら、同じようにこちらを向いていた。


「なぁレイル。オマエ本当に王国騎士(・・・・)になるのか。また戦うことになるんだぞ?」

「──なるよ。ジェーンを守れるなら、俺が戦う理由はそれで十分なんだ」

「……そっか」


私の為と言ってくれるなら、もう何も言わない。

私だってオマエと居られるように頑張るだけだ。


「なんか私だけ関わりがなくて仲間外れになっちゃいますね。ちょっと悲しいです」


そんないじらしいことをアルルが言ったので、ぐいっと引き寄せてやった。


「あぅ」

「オマエはいつだって私に会いに来ていいんだ。親友なんだから遠慮なんてするな」

「……ちょっとムラって来ちゃいました。イチャイチャ禁止ゾーン撤廃して三人で一線超えますか?」

「ヤるかバカ! 初めては二人でに決まってるだろ!」

「えぇんやっぱり仲間外れじゃないですかー」

「ジェ、ジェーン! 何するか分からないけど仲間外れは良くないと思う!」

「ほらやっぱり3Pですって。今なら押せばいけますよ」

「バカッ! もうオマエらホントバカッ!」


……今だって十分楽しいけど。

これから先。未来だって、もっともっと楽しくなるはずだ。




***




そんな騒がしくも幸せな日々を過ごして……一月が経った。

私たちが冒険者を辞め、新しい道へと進む日がやってきた。

次で終わります。

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