5話 この世界の主人公
この話の前に1話投稿しています
「エコダ殿のギフトは上級魔術ですね。魔術は水風炎土の基本四属性に加えて光闇の6属性あります。上級魔術は基本四属性全てを上級まで扱うことが可能です。王国の宮廷魔術師でも持っている者は少ない強力なギフトです。カトウ殿の守護者は盾などの防具の扱いがうまくなりまた味方の傷を肩代わりできるギフトです。おそらく加藤殿の仲間を想う気持ちがあってこそ授かったスキルでしょう」
マリウスさんが○○に役立つから頑張ってほしいや、こんな素晴らしい人格だからこのギフトを神が授けたなどと1人1人褒めながらギフトを確認していく。そしてそれを横で羽ペンを持っている男が手元の紙にメモをしていいる。
すでに自分のギフトを確認したものは興奮気味に周囲の確認済みの人間と話し、まだの奴はそれをうらやましそうに見るというのが広間のそこかしこで確認できた。
「サトウ殿のギフトはアオキ殿と同じ治癒術ですね。一度の召喚で同じギフトを授かるのは珍しいのですが治癒術の使い手は常に不足しております。佐藤殿のおかげで救われる命がまた一つ増えます。では次の方どうぞ」
「神宮司と言います。お願いします」
神宮司の番になると先ほどまで騒いでいた全員が静かになる。それも当然だろう。地球にいた時からリーダーとして俺たちを仕切っていた神宮司が一体どんなギフトを授かるのか。さぞや強力なものになるだろうとみんなが自然と考えていた。普通ならそれは大きなプレッシャーになるのだろうが一切それを感じさせないのも神宮司らしいと言える。
「ジングウジ殿のギフトは……おお!!」
今までのクラスメイト同様に神宮司が水晶に手をかざすと明らかに他の奴らよりも強く大きく水晶が輝いた。思わず目をそらしてしまう俺だがマリウスさんの続きのセリフは当然聞こえてくる。
「最上級光魔術!! 光魔術の使い手は非常に希少なのですがその中でも最上級とは。記録によると前回魔王を討伐した勇者殿のリーダーも光魔術を使えたとか。流石ジングウジ殿です」
「すげー」
「流石神宮司だな」
「やっぱりここでもあいつが主人公か」
主人公……誰かが言った言葉に思わず同意したくなる。容姿と頭脳と人格と三拍子そろっていた神宮司だがこれで四拍子になるわけだ。ますます遠い存在になった。そう考えずにはいられない。
「凄いね壮太! 魔術ならあんまり前で戦うこともないだろうしよかった」
「なあなあ光魔術ってどんなことできんの? なんかやってみてくれよ」
「ワタシも早くギフト確認したいナァー。アメリカ式ならエミリーでもっと前のほうなのニ」
「落ち着けよみんな。それに隆吾、青木君の治癒術と違って危なくて試せないよ。あとで王様たちから詳しい説明があるだろうしその時にな。翔も笑ってないで言ってくれよ?」
「そうだな。下手に使ってみんなが青木や佐藤の世話になるわけにもいかないし。まあ壮太ならそんなへまはしないだろうが」
俺の発言に確かにーといつものメンバーが頷く。神宮司ならすぐにでもギフトを使いこなせる。何故かそんな確信めいた思いを俺に限らずみんなが持っていた。