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4話 ギフトの力

「ではこれから勇者殿たちがどんなギフトを授かったか確認させて頂く。水晶をここに」



 王様が言うとローブを身に着けた男が恭しく箱を奉げて持ってきた。男はその箱を王様と俺らの間に置かれていた机の上に置く。そして今度はテーブルにゴチャゴチャ服の1人が近づくとバスケットボールほどの大きな水晶を慎重に取り出し机の上にゆっくりと置く。



「綺麗」



 思わずといった様子で隣の勅使河原が呟く。確かにその言葉のとおり水晶は非常にきれいだった。あれだけ丁寧に扱ったのもうなずける。最も先ほどの発言を聞く限りあの水晶の価値は見た目ではなく能力にあるみたいだが。



「この水晶は鑑定の水晶と言ってな。手をこれの前に掲げるとその者が持っているギフトがわかるのだ。マリウスの真似をすればよい。では誰からやる?」


「ぼ、僕! 僕やりたいです」



 最初に手を挙げたのは意外なことに青木亮だった。いや先ほど特に興奮していた内の1人だからそれほど意外でもないかもしれない。普段のおとなしいキャラとは少し合わない行動というだけで。



「わかりました。では勇者殿お名前を聞いても?」


「青木亮です」


「では青木殿このように私を真似して水晶の前に両手を出してください」


「はい!」



 水晶の前まで進むと青木はマリウスさんの真似をして手をかざす。ギフトを確認しているのか水晶が強く輝く。俺はそれを見てここに呼び出される原因となった魔法陣を見て少し嫌な気分になる。しかし青木がどんなギフトに目覚めているのかが気になりすぐに集中してマリウスさんがなんというか耳を立てた。



「わかりました。青木殿が目覚めたギフトは治癒術です」


「おお治癒術か! 魔王との戦いで傷の癒しは必須。それも勇者殿ともなれば普通の治癒術の使い手とは一線を期すものになるだろう。勇者殿の中にいまどこかケガをしているものはおるか?」



 早速青木のギフトを試そうというのか王様が確認する。もしけが人がいなければナイフでも使って切るのだろうか。



「あ、わっ私昨日包丁で指切っちゃいました」



 手を挙げたのは佐藤加奈子だ。そういえば以前調理実習でも指を切っていた気がする。不器用なのかもしれない。



「うむ、ではこちらに。青木殿彼女の指に手を添えて傷が治るイメージをして集中してくれ」


「はい」



 俺たちはこれから何が起こるのか固唾をのんで青木の手をを見つめた。果たして……数秒後青木の手が光りだす。どこか温かい印象を抱かせる光だった。そしてその光が収まると佐藤が不思議そうに自分の指をよく見る。



「本当に治ってます。さっきまであった傷がなくなってます」



 その言葉にますますクラスが沸き立つ。ギフトが本当に存在して使えることを目の前で見せられたのだ。かくいう俺だって魔王やモンスターとの戦いを忘れて自分がどんなギフトを持っているのか想像を膨らましてしまった。



「一回で成功するとは流石選ばれし勇者殿。これでみんなにもギフトの力がわかったであろう。最初の1人になってくれた青木殿の勇気には感謝だな。では次は誰がやる?」



 ギフトの力を見たからか先ほどとは違いみんなが我先にと手を挙げる。



「みんなちょっと待ってくれ。ギフトを早く確認したいのもわかるが一度落ち着こう」



 もう完全に復活した様子の神宮司がいつものように仕切りだすとみんなが黙って話を聞く姿勢に入る。こういうところを見ると報恩寺とは違う意味で他者を動かす力を持っていると実感する。



「青木君は出席番号1番だった。折角だからこのまま出席番号順でいいかな?」



 この場でおそらく最も公平な順番に誰からも反対は出なかった。まあ先着10名しか確認してもらえないわけでもないし当然か。こうしてみんなのギフトの確認が始まった。





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