2話 召喚された勇者たち
「準備は出来ているな」
「はい。滞りなく。薬の散布も完了しております」
豪勢な玉座に錫杖を持って座るファイン王国の国王パラディーは近衛隊長のゲイツ伯爵に召喚前の最後の確認をした。最もただの確認で準備が出来ているのは知っている。しかし万が一というものを考えるとパラディ―は手を抜くことなど絶対に出来なかった。何故ならこれから呼ぶのは異世界の人間。それも召喚時に強力な能力を付与されてくる危険な存在なのだ。
「ではこれより召喚の儀を始める。手筈通り行え」
「承知いたしました」
ゲイツの返事を合図に宮廷魔術師たちが床に描かれた魔法陣の上に立ち集中し一語一句違えることなく同時に呪文を詠唱し始める。そしてそれと同時に徐々に魔法陣が輝いていく。その輝きが最高潮に達し直視できなくなった瞬間、一際強く輝く。光が収まった後魔法陣の上には
「ど、どこだここは」
「痛ーい」
「だ、誰だよあんたら」
氷室達20人の姿があった。椅子に座っていたものは突如床に投げ出されたので痛みに呻いたり尻をさすったりしている。元々立っていた氷室や神宮司は突如教室からまったく知らない場所に移動したことに驚きキョロキョロとあたりを見回した。
部屋の奥には一段高い所に設置されている玉座に座るパラディ―。その周辺には貴族が並ぶ。氷室たちの足元には既に輝きをなくしただの模様になった魔法陣とそれを囲むようにローブを纏った魔術師や全身甲冑を身に着けた騎士が立っている。
自分たちは教室ではないどこか別のところに何故かいる、その事実を氷室達が認識しパニックになる寸前パラディ―は口を開いた。
「突然召喚してしまいすまない勇者殿。どうか我らを、いやこの世界を救ってはくれぬか」