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新・魔風伝奇  作者: ronron
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第一話 うしろの僕①

 白稜堂は超自然現象を扱う事務所である。


 この日、出張から帰って来た事務所を主宰する新堂武志は、郵便物の中に異様な念の込められた手紙を発見したのであった。

 大阪市都島区にある京阪京橋駅を降り、JR京橋駅側に向かって改札を抜けると、すぐ左手が小広場になっている。


 昔はタクシーの待合場所になっていたが、20年ほど前に広場に整備し直され、今はイベントが行われたりしている。


 そこを左に曲がり小広場を右手に見ながら、駅の建物に沿って国道一号線側に歩いて行くと、正面に六階建ての雑居ビルが見えてくる。

 建物の右端一列は六階までテナントになっていて、左側は一階の店舗を除いて賃貸マンションになっていた。


 一階のホールに入ると、すぐ右側に地下へと続く階段があり「珈琲貴族」と書かれた看板が出ていた。一階が不動産屋。二階から五階まではローン会社やダンス教室が入っていた。

 

 

 そんな雑居ビルの六階に、新堂武志の事務所。

白稜堂はくりょうどう」はあった。


 

 事務所の名前から業種を推察するのは難しい。

 白稜堂は警察でも病院でも、神社仏閣でも扱ってもらえない・・・俗に言われる「超常現象」を扱っている事務所であった。


 超常現象と言えば聞こえが良いが、実際に来る依頼は、ただの肩コリ・失せ物探しから動物の供養まで千差万別。

 大抵、丁寧に断らなければならない物が多かった。


 しばらく出張で四国に行っていた武志は、この日は午前中の用事を済ませて、久しぶりに事務所へ顔を出したのであった。


 郵便受けには郵便物が溜まっていた。

 今朝、出てくる予定であったアルバイトの事務員の葛城真美が出社していないのは明白であったが、何時ものことと、武志は苦笑しただけであった。


 武志の友人の吉岡玉彦からは「不定期アルバイト」という、あだ名を付けられている。


 白稜堂と達筆で書かれた板が貼ってあるドアを開け、武志は事務所に入った。


 事務所の中は殺風景である。

 入って正面にはカウンターがあり、その向こうには不定期アルバイトの机が置かれている。

 左手には黒いカバーの応接セット。右手は簡易厨房。一番奥の駅前広場が見渡せる窓際に武志の机があった。


 武志は郵便物を自分の机に置き、カーテンを少し開けた。時刻は平日の十四時過ぎとあって、窓から見える駅前広場に人影はまばらであった。


 武志は椅子に座った。


 年齢は三十代の後半に見える。普段はノーネクタイのスーツ姿である。長身で体格は着やせするので細く見える。

 少し白髪の入った髪は短めで、優しげな眼差しは、初めてあった人にも安心感を与えてくれる。


 郵便物の山に手を伸ばした武志は、ふと何かを感じた封筒を取り上げた。

 先に述べた通り、武志の事務所には様々な内容の依頼があり、手紙も荒唐無稽な内容が書かれた物もある。しかし、本物は封を切る前から分かるものである。


 手に取った手紙には、明らかに異様な念が込められている気がした。


 ・・・手紙には切手が貼ってあり、宛先の住所も間違いない。しかし消印が無かった。

 と言うことは、直接ポストに届けに来たことになる。


 裏側を見たが、送り主の住所も名前も書かれていなかった。中に書かれているのであろうか。


 武志は封を切って、数枚の便箋に書かれた手紙を読み始めた。


 武志の直感は当たった。それは異様な体験の話であった。

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