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《封印破壊直後 亀本体にて》
私が四日後と宣言した期日になった。
私も張り切って解除に当たった事もあり予定では今日の昼だったんだが午前2時前に終了してしまった。
私の上にある封呪の町で町長をしてくれてるエレブ君が確認に来て肯定すると直ぐに「では丁度終わるよう全ての仕上げを行いますね!」と言って出ていってしまった。
彼は二十代後半に見られ勝ちだが魔術で年齢を下げているに過ぎない、実年齢は300歳を優に越えるのではないだろうか?
と言うより私の町に住む住民は大半が魔術を幼少で覚え年の進みを極めて遅らせている。
事実として生け贄と沈められた原初の住民もちゃんと其々で生活していますからね。
『っと、雑念が混ざりましたね。 浮上するにも注意が必要なのですから慎重に波を計測せねばなりませんし雑念など取り払いましょう』
と言うのも私が計測を誤り浮上すれば海に面している地上は大きく陥没するでしょう。
私は仮にも数千キロ級の大きさを誇る亀なのだ、例えばタイミングを間違え勢いを付けて浮上してみた日には大きな津波が起きて複数の国が動くことでしょう。
そんな状況を作ってしまえば町民に陸を楽しませる処の騒ぎではなくなります。
有り体に言ってその瞬間から私含め町民は逃避生活が確約されます。
そんな状況だけは防ぐ必要があるのです、故に必要なのが波の計測です。
細心の注意を払い寸分の狂いなく割り出された波の計測結果と私の体躯で速度を計算することが安全の最短ルートです。
他に有るのかも知れませんが私は知りませんからね、選択肢に入れる余地がありません。
『ふむ、こんな物で良いですかね? 私が知りうる細心の魔術で計測しましたから大丈夫とは思いますが・・・』
私はその後、結局は30分も試行錯誤して納得のいくものを完成させます。
時間を要しただけに満足感も大きいですね。
「ニア様が遂に出港なさるそうだ、準備は良いな?」
『『『『『はっ!! 万事終了いたしております!!』』』』』
ニアの背から降り改訂で作業をしていた集団、その纏め役であるメデンロールが魔石製の『魔術的携帯電話』話し掛けると関白入れずに総勢8000人から同時に声が響く。
彼等は全員が500歳を越えている。
なかでも最年長がメデンロールで894歳と9世紀近くも生きる地球でなら化け物と畏怖される存在だろう。
しかし、それは結局別の世界で異常とゆう話だ。
この世界で10世紀生きる人間などざらにいる、それに彼らが凄いのは年齢じゃない。
その技術である。
彼等は技術だけで言うとニアへ追い迫る物を持っていた。
まあ根本として生物としての格が違うのだから技術云々言っても仕方ないのだが・・・
「1班、周辺警護の土塊人形は残り幾つだ?」
『残り86,784体です、所要時間は8分で事足りると思いますが余裕を持ち10分の時間が必要とさせて頂きます』
土塊人形とは自立人形のように自由意思をもつ存在ではなく命令を機械的に遂行する存在だ。
つまり臨機応変な対応がなく言われたことしか出来なく行動を終えれば崩れ去るが、変わりに命令以外の事は一切行わないがので兵力の少ない国では軍事力として重宝される場合も多い。
「2班は、確か時間倍率の制御であったか? どの程度進んでいる?」
『現在の時間経過倍率は1/560ですね、食料自給率が大幅に上がっています』
「そうか、引き続き3班と協力しニア様の役に立つよう勤めなさい」
2班及び3班の仕事は3班が生け簀での魔獣育成とニアへの提供である。
そして2班の仕事は生け簀に過ぎる時間を早めることとニアへ渡すため格納される巨大冷凍庫の内部で時間を遅らせる事である。
それにより異常な速度で魚は成長し保管されても異質に長い期間品質を落とさず存在し続ける。
「最後に4班例の準備は呉々も大丈夫だよな?」
メデンロールは言うと共に今までの張り付いたようなぎこちない笑顔を消し無表情になるとぶつぶつ呟いて電話を切り仕舞うと嬉しそうな顔を海の上に広がる空へ向けた。
「そえおそろ終了だな」