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《封印解除4日前 封呪の町における唯一の高層建造物頂上にて》
「それで? ニア様は本当に封印の解除まで4日と申されたのだな?」
「うん! 私がキチンと聞いたから間違えないよ!」
封呪の町、ニアの上に作られた居住区の名称である。
主にニアの意思を尊重し効率良く、またニアの益が少しでも大きくなるようにと動く町だ。
例えば封印はニア以外を外に通すからとニアの食料を捕獲、また同時に養殖を行いニアへ常に新鮮で豊潤な海の幸を大量に捧げている。
ニアが今まで餓死しなかったのは彼ら封呪の町が食料を供給し続けたからに他ならない。
そして次にニアが封印を解き浮上したときに障害となるのが人間である。
彼らもその事は重々に理解していた。
ニアを決して悪者とは思わないが世間的に見たニアが少なくとも悪とゆう事は理解していた。
現に嘗ては底無しの食欲て数ヵ所の海域を生物のいない空白地点とし幾つもの国を間接的に滅ぼした経歴も有るのだ。
そこで彼らが考えたのは人間との交易である。
その為に数百年も巨大な海洋の魔物を捕獲し魔石を抜き取ってきたのだから。
魔石とは主に人間が生活で使うエネルギーの源だ。
物の動力として魔石をつかい魔術の為に魔石を使う、人間は魔石を基盤に社会を組み上げていると言っても過言ではないだろう。
そんな魔石の出所とゆうのが魔物の内部なのだ。
心臓の中心に魔石を蓄えるのだから。
そして大型の魔物は更に得が大きい、と言うのも魔物を食した魔物は魔石だけを別の臓器に蓄積する。
故に大型の魔物は解剖すると小さな魔石も落としてくれるわけだ。
彼らが養殖する魔物は魔物を餌として与えられ育つ。
故にニアへ渡すさい軽く解剖して魔石を取り除くとゆう手順で彼らは膨大な魔石を現在保有している。
それを貿易の道具とするのが彼らの相違であった。
「遂に先祖何代にも渡り受け継がれた宿願が叶うのです、早急に準備を執り行うよう各責任者に伝達しなさい」
「うん! 直ぐ取り掛かるね!」
「ああ、これは私達が初めてニア様のお役に立てる機会なのです。 万事整え万全の状態で何の心配もなくニア様に浮上していただけるよう全霊を振り絞りなさい」
「はい!」
アリスは元気良く返事を返すと早足で部屋を出た。
部屋に残されら20代後半に見える男は何か呟くと座っていた椅子を降り大きな机を避けて前に出ると1つの大きな魔石を持ち上げ魔方陣を築き魔術を完成させる。
と同時にアリスは関与できない町の最重要部隊、その部隊長に連絡が繋がる。
「封印の解除まで4日との事です。 浮上となれば今まで以上に食料が必要となるでしょう、大丈夫ですか?」
『おお、町長が直接連絡寄越すたぁ珍しいな! 了解だ、食料飼育捕獲チームも今まで以上に回収速度を上げる』
「それも良いが万一人間が浮上と同時に攻撃を開始した場合は分かっているな?」
『おう! ニア様へ攻撃が及ばないよう殲滅を優先するさ』
「そうだ、間違えても情など抱くな」
『おうとも! 俺が敵に情けを掛けると思うのかよ?』
「いや、杞憂だったな。 では滞りなく頼む」
『へいへい任せときな』
その答えと共に連絡が切られる。
男、封呪の町町長エレブは切られた通話を思い返し笑みを溢す。
「冷酷のメデンロールか、下らない。 一度は魔物に感情移入し天津さえニア様に救護された腰抜けがよくもヌケヌケと宣ったものだな。 ニア様の盾足り得る事が重要なのだ、間違いがありニア様を傷付けた時の始末は死をもっても足りぬと肝に命じよ」
エレブは呟くと冷徹な顔に笑顔を張り付けニアの家へよ向かった。
一応は確認したいのだろう、間違いが有った場合は早目に分かっている方が良いのだから。
と言うよりエレブとゆう男がニアへ抱く信仰心は封呪の町で見ても異常なほどに大きいのだから「御尊顔拝みたい」とゆう所だろう。
何にせよ、ニアの知らない場所で全ては迅速に行われるのだから魔術とは便利な物と言えるだろう。
「ああ、ニア様の足底に顔を埋めたい・・・ ニア様の眼球に出来ることなら頬擦りさせて頂きたい・・・ いや、ニア様の唾液を極少量頂けたなら残りは妄想で事足りますか・・・」
エレブはニアの家までブツブツと呟きながら歩を進める。
彼は歪んでいるのだ、それは湾曲し過ぎてニアへ伝わる事はない。
愛が重いとゆう範疇では既に無いのだ。