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4話 お弁当騒動

ポイントいただきました!ありがとうございます!

「1000円!」「1100!」「1200!」「1500!」

一気に上がった...。

なぜこんなことになっているのか・・・。


金曜日、我が2年3組の教室で、武人お手製弁当はセリ(競売)にかかっていた。

「1600」「1700」「2000」

セリに参加しているのは女子ばかり。

「2000か?2000でいいの? 『おいC、ヘルC、うつくC』の弟くん弁当だよ!」

委員長、煽りすぎじゃね? ほら、煽るからまた価格が上がった...。

セリ、は目の前で競わせるから『競り』という。メリットもあるけど、ヒートアップしやすい側面もある。


 モノを言うのは純粋に資金力。

現ナマを握りしめてのシバ(叩)き合い。

力(軍資金)無き者はドロップアウトするしかない非情の世界。

お弁当は2個あるので、同額で2人に絞る変則的なやり方をしている。


いくら高額を叫んでも、誰かがもう一人同額を入れないと落札できない。三人目が同額を出せば更にせり上がる。

「3000!3000!他にない? よし!山科さんと畑中さんに3000円!」

歓喜と怨嗟が交錯する瞬間。


 場に流されたのだろうけど、たかが男の子が作った弁当一個に3000円って...。ただただ呆れてしまう。

落札した二人がお金を出してお弁当を受け取ろうとしているところに、担任安原先生の怒鳴り声が響いた。

「お前たち何やってんだ~っ!」




 教室で正座させられている...。

セリに参加していた女子32名が、安原先生の怒りに触れて床に正座である。

32名って...。うちのクラス女子20人しかいないんだけど。

それはともかく、セリに参加してなかった私と浅子、ゆかりの3人が32名に含まれているのが納得できない。しかも最前列。

「...なんでこんなことに。私関係ないのに」

私のつぶやきに、隣で正座している浅子が返してくる。

「出品者だって」

「私が出したわけじゃないでしょー!」

冤罪である!教師の横暴である!私の無実を強く訴えたい!


 参加者が一人一人名前を控えられているうちに、

2組担任の田中さとみ先生(34歳独身)に連れられて武人がやってきた。

教壇まで行って、教卓に載せられた弁当を作ったのか聞かれている。


さて、構図を整理してみよう。

・教卓に載せられた2個の弁当

・教壇に二人の教師と並んで立っている我が弟

・それを教室の後ろから眺めているクラスの男子

・廊下から鈴生りで見ている他の生徒

・床に正座させられている32人の女子

いわゆる、さらし者だった。市中(校内)引き回しの刑が無い分まだマシかもしれない。



 弟はかなり背が高い。それが教壇に立っているから余計に高い。

正座している私たちとの視点の高低差がすごい。最前列だから思いっきり上を向かないと武人の顔が見えないし。

弟に見下されてる感がハンパない。

あれ? なんか、この感じちょっといいかも...。



「ゆかりさん。あれって俺がゆかりさんたちに作った弁当ですよね。なんでこんなことに?」

説明を求めてきた武人と先生にゆかりがいきさつを話す。

「いゃぁ、武人。迷惑かけてすまないねぇ。私らもな、月曜火曜は普通に食べてたのよ。美味しかったよ。ご馳走さん」

「ありがとうございます。それで?」

「それを見てた周りの女子がさ、自分たちも食べてみたいと言い出してさぁ。水曜日に、どうしてもと言うからみんなとおかずを少しずつ交換して食べたんだなぁ。そしたらメチャメチャ美味いと評判になって...」

浅子が引き継ぐ。

「木曜日には評判を聞いた女子の間でタケちゃんのお弁当の奪い合いになったわ。仕方がないから判りやすく決着をつけようと競売することになって、そこへ他のクラスの女子も加わったのが今日の話」


「昨日今日はゆかりさんたちが渡さなければよかったのでは?」

「あのね、タケちゃん。女の集団の美と食への執着に逆らうと、ひどい目に合うのよ?」

「そうですか・・・?」武人はよくわかってない感じで引き下がり、私の前にきた。



「ユキ姉...。なんで止めなかったの?」

武人の冷たい声が頭の真上から降ってくる。大声じゃないけど武人が怒ってる。滅多に怒らないし威圧感がハンパないんだけど...。

やっぱり矛先は私に向くのね。

「う、なんかごめん」

武人の顔を見るため顔を上げたが、すぐ前に立たれると顔がほぼ真上にある。今の私を横から見るとフォアグラとして餌を食べさせられるガチョウに見えただろう。

「気をつけて作ってるけど、違う人が食べるんだったらアレルギーとかあるかもしれないよね?」

「う、うん」

「それに食中毒の危険性は何処にでもあるよね?俺の弁当で他の人がお腹壊したらどうするの?」

「えーと、お腹壊すとかそこまではその、考えてなくて」

「考えないとダメだろう! ユキ姉、俺は弁当屋でも仕出し屋でもないんだよ。材料費タダってわけでもないけど、売っていいわけないだろ! まして競売で法外な値段つけるとか、いったい何を考えてんだよ!」


声の向きが変わったので、私に言いつつ周りに言ってるんだろう。隣で正座しているクラス委員長が下を向いたのが目の端に映った。まぁ、あんたが煽ったのも大きいよね。



「俺が作った弁当で問題が起きるんだったら、ユキ姉。俺はもうユキ姉の弁当も作らないよ?」

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