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番外2話 お昼休み(2年後)

武人視点のお話です。

♪キーンコーンカーンゴーン

時計は11:50

4時限目終了のチャイムが鳴った。毎日における最大イベント、ランチタイムが始まる。チャイムの最後の音程が外れるのはまだ直っていない。

教室内の約半数は急いで教科書やノートを片付け、購買へと急ぐ。

購買へ行かない者は自宅から弁当持参か、登校途中のコンビニで買ってきている。

うちの高校に学食はないので選択肢はそれくらいしかない。


 購買へ行かない者も動き始める。

グループで食べるために机を移動させたり、友人のいるクラスを訪れたり、部室や空き教室へ向かったり。

もちろん一人で食べる男子もいる。俺もその一人だ。俺は好きで食べているからボッチ感とか考えたことは無いな。


 俺は弁当持参派。毎朝、朝ご飯と一緒に自分のも含めて3~4人分の弁当を作っている。

母さんが1直なら弁当に詰め、2直や3直なら昼ご飯分として置いておく。

男なのにって? 趣味みたいなもんだな。長年の習慣だし。

早めに起きて弁当のおかずを作り、おかずを冷ます間にランニング。家に戻ってシャワーを浴びてから弁当を詰める。しっかり冷まして水気を抜かないと弁当が傷みやすくなるからな。夏場は特に。

弁当以外は小学生の頃からの習慣だけど、これがなかなか調子がいい。

その分、夜は早く寝るようになって、結果から言うと・・・、背が伸びた。

もともと低くくはない家系だと思う。加えて夜早く寝ることで成長が促進されたんじゃないだろうか。

何かの統計で、夜9時や10時に寝る女子は、その、お、おっぱいも大きくなる、というのを見た覚えがある。

『寝る子(娘)のおっぱいは育つ』!?

本当だったら『おっぱい革命』が起きるかもしれない。



 教科書を片付けながらそんなことを考えていたら後ろのほうがザワザワしだしたので後ろの入り口を振り返ると、廊下に妹がいた。

「失礼します」

教室内を見回していたが俺と目が合うと、教室の扉の境界で一礼して真っすぐこっちに向かってきた。

後ろからおっかなびっくりという感じで女の子が二人ついてくる。一人は知ってる。保育園の頃から愛美と仲良しの早紀子ちゃん、サキちゃんだ。もう一人は知らないけどサキちゃんが手を引いているから同級生だろう。


「愛美 どうした?」

「お昼をご一緒させていただこうと思いまして。こちらの机や椅子は使わせていただいてもよいのでしょうか?」

俺の前席の机について、愛美が俺の級友たちを見回しながら聞く。

俺はサキちゃんの方に話しかけた。

「サキちゃん こんにちは。そっちの子は?」

「お兄さん こんにちは。お友達のカナちゃんです」

「そか、カナちゃんね。愛美がいつもお世話になってます」

「い、いぇこちらこそ...」

小声で聞き取りにくいが1年生がアウェイの3年の教室にくれば普通はこういう反応だろう。堂々としている愛美の肝が据わりすぎである。


「今日はどうしてここに?」

サキちゃんに聞くと

「マナちゃんに一緒にお弁当食べようって言ったら、『私は男性と一緒にいただきますけど、良かったらご一緒しますか?』って聞かれたので・・・、ついて来ました!」

隣でカナちゃんが俺を見つめたままコクコクと頷いていた。

サキちゃんは笑っていたので、愛美の行き先がここだということは予想していたのだろう。


俺たちがそんな挨拶をしている間に愛美はセッティングを進めている。机2つを前後に合わせ、机を囲むように椅子を並べていた。

「用意できました。いただきましょう」

俺の正面に愛美が座り、右隣にカナちゃん、左隣にサキちゃんが着いた。まぁ無難かな。初対面のカナちゃんがデカい俺の正面で見下ろされるのはキツいだろうし。

みんなが提げてきた弁当箱を机の上に出す。俺も机の中から取り出した。

ん?なんだ? カナちゃんが、俺が開ける弁当を食い入るように見ている?

「これが、伝説の、お弁当...」

なにそれ? ドラゴンの串焼きも勇者の煮っころがしも入ってないよ?


「カナちゃん 普通に手作りのお弁当ですよ」

笑いながら愛美がフォローしてカナちゃんもハッと我に返るが、別の方向から弾丸(タマ)が飛んできた。

少し離れた前のほうで机を寄せて食っていた3人の男子が聞こえよがしに呟いている。

「て、手作り弁当だとぉ!?」

・・・俺の手作り弁当な。

「女の子とお昼とか」

・・・妹だけどな。

なぜか愛美が上機嫌だ。


 弁当を食べながら愛美たちと話をしていてわかったことだが、カナちゃんのお姉さんがユキ姉の学年にいたそうだ。

お姉さんから話を聞いていて、入学してクラスで仲良くなった子がたまたまユキ姉の妹であり、『弁当を自作する3年男子』の妹でもあった、と知ったらしい。



そうかぁ、俺って弁当屋のイメージなのかぁ・・・。ホームベーカリー買って、パン屋にでも転職しようかな。

でもパンも持ってきたら弁当ってことだしなぁ・・・。

そんなことをつらつら考えていると、目の前に玉子焼きが差し出されてきた。

「武人さん、はいどうぞ」

「「「「っっっ!」」」」

俺たちの周りがざわめいた。

いわゆる『あ~ん』というやつだ。愛美が『兄さん』と呼ばずにわざわざ名前を言ってきた。顔は俺に向いているが目線は俺の右下あたりをみていて、耳がちょっと赤い。


サキちゃんとカナちゃんも、ポカ~ンとした表情で俺と愛美を見比べている。カナちゃんはともかく、うちの家を知っているサキちゃんがなぜそんな顔をしてるの?

とりあえず食べる。いゃ、俺が作った玉子焼きを妹が寄越してきただけの話だし?

何故か、差し出してきた愛美本人が顔を真っ赤にしながら俯いてプルプルと震えている。サキちゃんとカナちゃんも赤くなっていた。

「「「ギリッ!」」」

何か、歯ぎしりのような音が前方から聞こえてきた。ふと見ると、さっきの男子3人が歯を食いしばって涙を流している。何があったのだろうか。



弁当も食べ終わり、箱を包みに戻しながら

「ご馳走様。じゃ、おれちょっと屋上で寝てくるよ」

と3人に伝えた。

毎日、朝が早いからね。食後に取る10分間の仮眠が体調管理の秘訣なんだよ。

「そ、それなら私も行きます。すぐ机も拭いて片付けますから」

愛美が慌てたように言う。

「いゃ、机は一緒に片付けるけどさ。どうした?」

「い、いぇ、横になるのなら、しますから。その、ひ、膝枕・・・」

そう言いながら愛美は俺に脚が見えるように椅子を後ろに引き、スカートをゆっくりと、股下ギリギリまでたくし上げた。愛美の白い太腿が露わになる。俯いた頬にははっきりと朱がさしていた。

「「「「「「っ!」」」」」」

教室中から注目された。

スカートを下ろしたままでも膝枕はできるだろ。してもらうつもりはないが。膝枕は要らないというと、

「わかりました。本日のところは兄さんの横に座っておりますが、明日以降も居ますからいつでも仰ってください」


「愛美 お前明日からも来るつもり?」

「もちろんです! 毎日参ります!」

愛美はスカートから手を離して立ち上がり、男子並みに高い視点から教室内を睥睨しながら左手を頬に当て、腕を組むふりをして右手で自分の豊かな左胸を軽く持ち上げる。

「兄さんに悪い虫がつくのではないかと! いつも心配で心配でたまらないのです! ですけど・・・」

睨むように周囲を警戒するように教室内を巡っていく視線がところどころで止まる先には女子がいる。男子のことは完全にスルーしているようだ。


「「「っっ!」」」教室にいる女子が息を飲むのがわかった。

男子は口を半開きにして愛美を見ている。半数は愛美の胸を凝視しているが。

それに気付いた女子が、男子を憤怒の形相でにらむ。

女子の視線に気づいた男子の目が泳ぐ。それでもまだ半数は愛美の胸を凝視しているが。

愛美はそのまま左腰の上あたりで両手を重ね、筋トレのサイドチェストのようなポーズに移った。今度は豊満な右胸がさらにググーンっと盛り上がって男子女子両方の視線を釘付けにする。


ふっ、と勝ち誇るように笑って周囲へ聞こえよがしに俺に言う。

「どうやら......、近くに敵は居ないようです(笑)」

「「「「「「ギリリィッッ!」」」」」」

ここの机以外の女子全員が歯を食いしばった...。


そりゃそうだろう。ここは教室でダンジョンじゃない。居るのはクラスメイトであって虫系のモンスターなんかいないはずだ。

なぜかサキちゃんとカナちゃんが周りに目を向けては怯える、という動きを繰り返している。

二人とも、虫が苦手なのかな。

次の番外編で今回のシリーズ完了します。

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