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生物の進化は環境によって起こる といいなぁ

殴れば骨が折れ、斬れば血が出て、首を絞めれば窒息する。

そう考えるとスケルトンよりナーガの方が気楽になる。


魔物と呼ばれる生き物の中には独自進化を遂げることで環境に適応してきたものが多く存在する。例えばハーピーと呼ばれる腕が鳥の羽で下半身が鳥の様なかなり姿が人間に近い魔物だ。安定した気候にいるハーピーは柔らかい羽根と鋭い爪を持つが、砂漠のように乾燥している場所にいるハーピーは羽根と羽根の隙間に砂ぼこりが入ってもすぐ落ちるようにとてもスベスベしている両翼をしている。生活に関しても大きく違う一般的には巨大な大樹にいくつものツリーハウスを建て20~30匹で暮らしていることが多い。だが、樹木が生い茂り湿気の多い地域に住むハーピーは、なるべく木々が密集している場所を選び徐々に幹をしならせながらドーム状の屋根を作り枝同士を組み合わせることで頑丈な寝床と生活スペースを確保している。湿地帯のような場所では羽が濡れてしまい上手く飛べないが、代わりに地上で生活することが多いので下半身が大きく進化している。


今回はそんな魔物の進化のお話




「魔王様。一体に何をお読みになられているのでしょうか?」


魔王城の大図書館

そこに存在する書物は未熟児や幼子を対象とした本から大賢者御用達の古代魔法大全、果てには一目見ただけで発狂するネクロノミコンまでもが揃っている世界最大級の図書館である。

本日はこの大図書館にて魔王に声を掛けたのはゴースト系の魔物。名前はエコー。


「ああ、とある世界の魔王が生物を従来の進化の過程を無視して成長させる術というのを組み立てたというのを思い出してな。それに関する文献を虱潰しに探しているのだよ」


「生物の進化ですか。まあ、私は見ての通り死んでいますので関係ないですね。」


「いや。あながち関係がないとは言えないな。」


「ほえ?そうなのですか?」


先ほどまで、ニヒヒ。と笑っていたエコーが突如驚いた顔を見せる。


「記憶では生物を進化させると記していた気がするが、もしそれがあっていたとすれば・・・」


「合っていたとすれば・・・・」


突然のシリアスっぽい雰囲気にエコーはつばを飲み込む。それと同時に魔王はこう言った。


「つまりその秘術こそ、生物誕生を解き明かす鍵だったんだ!!」


「な、なんだってーーー!!!」


まるでこの世の終わりのような発言を聞いたかのようなリアクションを取ると、ただでさえ幽霊特有の白肌が徐々に顔が真っ青になっていくのが見てわかる。


「驚くのはまだ早いぞ。もし進化が魂を基準とするのなら幽霊であるエコーだって進化することもできる。もしかしたら人間以外にも憑りつけるようになるかもしれない。」


「それはすごいです!私、ドラゴンに憑依して飛び回って『ドラゴンファイヤー』ってやりたいです!!」


がおー!。と、すでにドラゴン気分であるエコーの顔色は元々の青白い色に戻っていた。


「いや。しかし魂が進化するのなら肉体が耐えきれなくなって崩壊する可能性もあるな。」


「ヒ、ヒイイイイイイイイイ・・・・」


再び真っ青になるエコー。幽霊なのに顔色がよく変わるあたり、ほんと可愛げがあるというか他のゴースト系の魔物とは違った感じがまた保護欲を駆り立たせる。もしかしたら生前からこんな感じだったのかもしれないという考えが頭をよぎった。


「肉体の崩壊と言っても魂の進化に肉体が追い付かずに内側から爆発して二度と復活できない可能性もある。それとも肉体がドロドロに溶けて骨だけになるかもしれない。正直にいって段階を踏まない成長は気が進まないな。なにより過程の段階でも結果におけるリスクが大きすぎるかならな。」


「やっぱりちょっとずつレベルアップしないといけないんですね・・・」


オヨヨ・・・。とちょっと時代遅れのような落ち込み方をするエコーを軽く慰めてやると、魔王は禁書を管理している区画へと足を進めた。







禁書区域

その名の通り、数多の禁書を一括保管している魔界でもかなりの危険度を誇る場所。仮に並大抵の魔物が興味本位で呼んでしまえば本自体の魔力に押しつぶされ取り込まれてしまうことになる。あくまで一例に過ぎなかったが大変危険な代物を扱っているのだ。


「おや?これはこれは魔王様。禁書区域にまでくるとは、なにか新しい魔法でもお創りになられるのですか?」


「似たようなものだ。で、ジャック。ほかの二人はどうした?」


「いえいえ。ホムラとウィルは奥で書物の整理(戦闘中)です。」


「それなら問題はないと思うが、念のため確認はしておこう」


一般の魔物も閲覧できる大図書館とは違いかなり危険な場所の為、管理している魔物もかなり上位種を複数人で配置している。現在、魔王と話をしているのは黒いマントに身を包み、目と口になるように繰り抜かれたカボチャのマスクを被った女性。口の部分から垂れ下がる二つ結びは、青い炎のように明るく柔らかい光を放っている。


「どうしたのだい?私のことをじっと見つめて・・・」


「どうしたと思う?」


「そうですね。魔王様の年頃の男性ですから―――」


ジャックは僅かに笑みを浮かべると両端に本の積まれたアンティークの机に腰掛け、短いスカートから伸びる生足魅惑の太ももと彼女の髪と机の上のランタンの淡い光によって出来た絶妙に影となって見えないその奥の暗闇を見せつけるように足を組んだ

「―――ここでホムラとウィル、そして私を含めた4人で組んず解れずドロドロになるまで交わろうと思っていた。なんてどうでしょう。」


「そう言われれば無性に気になってくる。」


「どうですか?ムラムラしてきたましたか?私はいつでもお触り上等ですよ。」


「エコーといいウィルといい。ゴースト系の魔物の構造が気になってきた。」


「つまり私たちの内側が気になるのですか?もう。内臓が見たいだなんて魔王様ったら大胆。種族によってはプロポーズになるって知りませんでしたか?」


「そんな遠回しなプロポーズはしないさ。好きな相手には直線的に思いを告げる。私はそういう男だ。」


「なるほど」と何か納得したようなジャックはゆっくり机から降り魔王の前に立ち、まるで侍女のように右手を胸にし一礼。すると暗がりの禁書区域に「ポワァ」っと青白い光の球体が点線のように二人のいる地点から奥へとゆっくり出現する。


(群生霊を使った道標か。なかなかありだな。確かに群生霊なら全体の使用魔力も抑えることができる上に、光の中から出てくるタイプの演出の幅が増える。)


ジャックは魔王が何かしら考えているという非常に珍しい表情を不思議そうに覗き込み、またも意味ありげな笑みを浮かべた。


「ご安心を。魔王様が何のことで悩んでいるかは分かりかねますが、いまこの瞬間は―――」


ジャックは魔王の左側に立つと片腕を両の胸を押し付けるように抱き着いた。


「―――私だけを見ていてください。」


ジャックの素顔は幼く見えるが、その体は成熟した女性そのものであり程よく膨らんだ乳房に、実際のサイズよりもバストを大きく見せるくびれ、キュッと締りのいいお尻、まるで人間界の出来る女秘書のような出で立ち。もっと彼女の場合は秘書ではなく司書の方が正しいのは言うまでもないだろう。


城のモノたちからは、カボチャの被り物のせいで素顔の見えないが気遣いの出来るオッパイの付いたイケメンとまで揶揄される彼女であるが、魔王と二人っきりの時ではないと自身の本性を見せることはないのだ。


私だけを見て。と言われた魔王は鋭く背筋の凍りつくような突き刺さる視線をジャックに向けると、彼女は腕を話して両手で高揚して真っ赤になった両頬に手を置いた。


「だ、ダメです。魔王様。そのようなお顔を私の為にだなんて・・・幸福のあまり絶頂してしまいそうです。」


トロンと蕩け媚びるような顔を見せるジャック。脳から背骨を通り全身を、髪の毛一本から蘆の先、全ての臓器を駆け巡る落雷にも似た快感に気を失うことがなかったのは種族の中でも上位に存在する彼女だからこそだろう。もしこれが特別な力を持つことのない一般の魔物であったら、気絶するだけではなく全身の穴という穴から体液を垂れ流し異性を刺激するフェロモンを無差別にばら撒いた挙句、盛りの付いた獣のような

交尾が其処ら中で行われる。かつての魔王(現当主から5代程前)が起こしたある事件がきっかけで、特定の条件下でしか、その目をしてはいけないのだ。


「ほらジャック。案内をしてくれるんじゃないのか?」


「ふぁ、ふぁい・・・」


肩で息をしながら全身の疼きを抑え禁書区域の奥へと歩みを進めるジャックと澄まし顔で案内をさせる魔王。この後、暴れていた魔導書を力業で抑え込んだのはまた別の話。





好きなカブトボーグのBGMはセンチメンタルアウトローブルース

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