魔王様のお仕事 世界再生編
新しい武器とかあったらとりあえず使ってみるよね。
結局、イベント専用武器が一番強くなるって王道展開。
勇者たち5人は色の失われた影の世界でラスボスである魔王と対峙している。
その体躯は上半身だけで一国の首都に立つ王城よりも巨大である。下半身が蛇、背中に三対の蝙蝠の羽根、耳は魚人のようなギザギザとしたヒレ、腕は世界有数の大木の様に太く、全身を鱗に覆われ、動くだけで大地を均し、その鋭い爪を振るえば山を抉り削り、その咆哮は空気を激しく震わせ海を大荒れにする。
「GuGiaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
もはや人の言葉を発することのない怪物は目の前に対峙する羽虫を全力で叩き潰さんと行動する。メテオに匹敵する拳を一直線に叩きこむ。
「光よ。厄災より我が身を守りし盾となれ。」
女神官が神への祈りを言霊にのせ、杖の先端を迫り来る怪物の拳へと向ける。
すると半透明の水色の六角形がいくつも展開し、彼女の前面を結界がドーム状に囲む。
結界と拳がぶつかり、その衝撃で土煙が巻き起こる。
「くぅ・・・ま、負けません!」
歯を食いしばり、衝突の衝撃で地面に転がり落ちた聖水のビンを足で踏み壊し魔力ブーストを施す。
「GYAAAAAAAAAA!!!!!・・・・・!?」
真正面に見えている半透明の結界越しに女神官が1人であることに怪物は驚愕した。
「いくぞ!!!」
勇者の掛け声と共に女神官の結界を中心に土煙が十字状にそれぞれ尾を引き、魔法使いが後方、剣士と勇者が左右に、武闘家が正面に飛び出した。
「絡み付け!アイビィ・ルート!!」
歴戦のパーティがこの油断を見逃すはずもなく女魔法使いの呪文が詠唱される。
「!?!?」
「させません!天よ。光の楔を打て!ホーリー・スパーク!!」
地面から何本も巨大な木の根が生え、蔦のようにしなやかに怪物の腕に絡みつくと地面に縫い付ける。
怪物の腕に縄のような筋肉が浮かび上がり力任せに脱出しようとするも、女神官の祈りで5つの光の鎹(子の字状の釘)が怪物の手首から肘までを地面に固定した。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!ここは俺に任せろ!」
武闘家が地面に縫い付けられた腕を駆けあがり、肩から怪物の顔面目掛けて跳躍。
「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
それをカウンターするように怪物の口から魔力の奔流が放たれる。
「ぶち抜くぜ!!剛力!剛砕!!剛腕!!!」
魔力砲の中を突っ切る武闘家の腕が闘気と気力により三段階に大きくなる特大サイズの拳が具現化。勢いそのままに怪物の左頬を殴り抜ける。
しかし!!!
「ぐわああああああああああ!!!」
怪物は右手で空中の武闘家を掴み、ギチギチと拳を握りしめていく身動きの取れない武闘家の取れる行動は握りつぶされないよう必死に抵抗するだけしなかい。だがしかし、いくらパワーが秀でていようと、その巨大な手に握り込まれれば圧死が免れないからだ。
それは武闘家一人の場合に限る。
「させるかあああ!!!!!」
ズバシャッッ!!!
戦士はその剣に竜の炎を宿し怪物の手首を切り落とした。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
断面からは破裂した水道管のように濃い紫の血液が吹き出しながら、ぐちゅぐちゅと泡のように肉が再生していき元通りになる。
「助かった!」
「油断するな」
落ちていく拳から抜け出した武闘家はその手を足場に跳躍。僧侶の近くまで下がった。
ちょうどそのとき
「天地昇龍斬!」
怪物の懐に潜り込んだ勇者の必殺技が左の脇腹から右肩にかけて切り裂かれた。同時に左腕の拘束を力ずくで破壊した。
「勇者!受け取って!!エレメンタル・クロス!!」
魔法使いの杖から火、水、風、雷の4属性を含んだ魔力の光線が空中の勇者に向かって一直線に放たれた。勇者はそれを相魔の剣[エデン・ブレード]で受け止めると剣が黄金に輝き出した。
「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
その眩い光に相対するかのように怪物の全身からどす黒い闇の魔力が噴き出す。
「なんだこりゃ!近付けねぇ!!」
「魔法使いさん。みんなを近くに!」
「ええ!フレン・ループ!!!」
魔法使いの呪文で勇者を除く3人を自らの傍にワープさせる。
「天よ。わが身、我が同胞を、その加護によりお守りください。ハーピスード!!」
文字通り紙一重のタイミングで巨大な天使が光の両手が包み込み、闇の魔力から奔流からで四人を守った。
一瞬でも気を抜けば即死は免れない緊張感の中で研ぎ澄まされた感覚は、たとえわずかな時間でさえもゆっくりと感じるようになる。そのせいもあり視界は黒一色で染まり、魔力に包まれたせいで体は宙に浮いている感覚になっていた。
4人は時間の感覚がおかしくなり始めたとき、キラリと輝きながら落下した流星が闇を切り裂いた
ズバシャアアアアア!!!
「GuoaaaaaaaaaaaAAAaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!」
一筋の光が闇を切り裂くと同時に大地を引き裂かんとばかりの大咆哮が響き渡る。
勇者による必殺の一撃。4つの属性と勇者の持つ光の力。そして世界を包む闇の力。それらを吸収した相魔の剣は更なる進化を遂げ天魔葬送の剣となり魔王を一刀両断した。
だが、その力はあまりにも強すぎた。その一撃をもって天魔葬送の剣は砕け散った。火と水、風と地、光と闇、属性剣の限界を幾度と越え、幾度となく戦地を切り抜けた相棒ともいえる剣は、その役割を終えたかのようであった。
「――_ーーーー ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄___ー___ ̄ ̄ ̄ ̄!!!!」
もはや肉体を維持できずどろどろに溶けた様に魔王の身体は天魔葬送の剣の完全相殺の力により白い煙を上げ始めた。
「勇者様!はやく影の世界から出ないと!魔王を倒したせいで表の世界に繋がるゲートが閉じちゃいます!!」
「んぎぎぎぎぎ!!おおお、おい早く来い!そんなにもたねぇ…からよぁ!!」
勝利に浸るまもなく魔法使いの声が響く。魔王が倒させたことで影の世界と表の世界をゲートが徐々に小さくなっている。剣士と武道家が神官のサポートにより手足に纏った保護の力で吊り天井を支えるように力業でゲートの収縮を止めていた。
こうして、二つの世界の繋がりは消え、表の世界に残った魔物たちは人間との共生の道を選び長い長い平和を築き上げていった。
???
「……様。……王様。」
「――――――――――」
???
「もう終わりましたよ。勇者たちも元の世界に戻って、こちらの世界の隔離に成功しました。」
「ホントに?」
???「ええ。本当です。」
倒れた巨大な魔王の身体は陽炎の様にゆらゆらと波を描きながら消滅すると、一人の男性がうつ伏せで倒れていた。
そのすぐ横で佇む執事姿の長身で病的なまでに白い肌に尖った両耳が目立つ優男がまるで幼い主人を起こすかのように優しい声で話しかけた。
うつ伏せの男が目を開けると、身体についた土を叩き落としながら優男に尋ねた。
「あの剣はどうした。」
「若様。こちらにございます。」
執事服の男は刀身のなくなった天魔葬送の剣の柄を膝をつき献上する。
オーダーがその柄を手に取り、一振り。
刃の嵐を巻き起こすを魔力の奔流が影の世界に雲一つない灰色の空を作り出す。色を失ったかのような光が大地を満たすと同時に、禍々しい闇の魔力が大会の底から噴き出す。
まるで全ての生命を絶滅させるかの如き大火山の噴火を彷彿とさせる闇の魔力は、天災とされるドラゴンの力をもってしても御しきれない力が灰色の世界を黒く染め上げていった。
「あそこか。」
「ええ。魔老人様の話では均衡を保つべきの世界で、あれだけの魔力の淀みを蓄えるのは文字通り希望が存在しないパンドゥーラの箱と同じ。とのことです。」
本来、独立した世界のバランスを保つのは個々の世界の無意識で行われている。
風邪をひけば白血球が活動するのと同じく、世界という巨大な生命体が勇者とオーダーを生み出しバランスを整えようとする。だが、今回の件は世界を徐々に蝕み異常を感じさせないほどに鈍らせていた。
大きく膨れ上がった淀みはシステムとしての勇者では太刀打ちできず、最悪の場合、その力の取り込まれた勇者たちが全ての生き物を滅ぼすことになる。
そうなってしまうと、いくら世界創造の力を持つ存在だとしても修正が困難になることは必至。世界ごと破壊し、他の世界への影響を確実に潰さなくてはならないのだ。
「若様。どうやら急がなくてはいけないようです。形を作り始めました。」
執事服の魔物は双眼鏡という魔法の水晶を埋め込んで作られた遠くを見る道具を使い闇の渦を監視している。その報告の通り、闇はゆっくりと人型を作りあげ海岸へと歩みを進めていた。
「?????」
黒い人影は本能的に何かを感じ取ったのか。オーダーの方へと顔を向けた。かろうじて頭とわかる部位には、まるでそこに眼、口、鼻、耳と人間と何一つ変わらないパーツが存在しているかのように見えた。
人影は不意に足元を見ると魚が腹を見せて浮いているを見つけると、その場に膝を抱えたまましゃがみ込み突いたり手に取って観察し始めた。
「まるで子供みたいですね。どうします?お情けで保護とかにしますか?」
「可哀想だけど、野放しにはできない。ここで消す。」
それだけ言って、オーダーは姿を消し人影の目の前にワープした。
「・・・・・・・・・・・・?」
いつの間にか顔のパーツが出来上がり、何も知らない真っ黒の瞳がこちらを向く。一瞬の煌めきと共に跳ね飛ばされた首は数拍の間をおいて「ホワアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」と耳を劈く悲鳴を上げる。頭を失った身体はただ暴れる子供のように周囲を叩き始めた。その一振り一振りの衝撃は波を作りだす。
右腕は異常に膨れ上がりブクブクと泡を立ち上げながらハンマーの様に振り回され、左腕は鞭のようにしなりその余波は海面を走り海岸を破壊させていく。
オーダーの振るう不可視の天魔葬送の剣はオーダーと人型の闇の魔力を吸収し、黒き聖剣とし蘇った。
あまりも鋭すぎる聖剣は振り下ろされる右腕を黒い軌跡を描きながらいともたやすく斬り落とし、孤を描くかのように胴体を袈裟切り。頭部が悲鳴をあげた。
聖剣を横薙ぎに振るう。胴体が上下に斬り分けられる。頭部が悲鳴をあげた。
返す刀で人影の太ももを切断する。頭部が悲鳴をあげた。
V字を描くかのように聖剣を振り上げ反対側の太ももを内側から切断する。頭部が悲鳴をあげた。
胴体を脇から腰に掛けて二撃目と反対側から袈裟切りにする。頭部が悲鳴をあげた。
X字に切り裂かれた胴体を修復しようと断面同士の影が伸びる。
修復より早く切断される影。頭部が悲鳴をあげた。
聖剣に力を吸われて徐々に修復力と魔力を失い、まるで干からびた老人にようになった人影は既に立つことすらできない程に細くなり倒れ伏した。
「・・・・・・・・!!・・・・・・・!!!」
人影の頭部は口をパクパクとさせてはいるが声を発することができていない。
虚ろな目でオーダーのことを見ている頭部は、生まれながらに絶対的に力を持ち世界を支配するべき存在だと本能的に感じとっていたが、自身より圧倒的な力を持つ存在に恐怖を感じた。誕生の喜びはいともたやすく絶望に塗りつぶされてしまった。
「恨んでくれて構わない。お前は生まれてきちゃいけない存在なんだ。」
柔らかいバターにナイフを突き入れるかのようにいともたやすく頭部に突き刺さる聖剣は、世界を包み込むほどの闇の魔力を全て吸収した。
「帰りましょう若様。あの影のサンプルは確保しましたので。」
執事服から飛び出した巨大な蝙蝠の羽根を羽ばたかせながら、音もなく静かにオーダーの横に舞い降りた。
その腕の中にある特殊なガラス瓶には淡い光を放つ真っ黒い球体がふわふわと浮いている。
「若様。これは一体なんなんでしょうね。」
「わからん。だがそれがエルフの研究所に持って行ったところで万が一があると困る。隔離施設で分析するとしよう。それとこいつは・・・・持って行こう。」
オーダーは聖剣を自らの影に沈めると執事服の魔族と特殊なワープゲートで元の世界へと帰還した。
どこまでいっても灰色の世界は、数刻前までの天変地異のような戦いの痕だけを残し、本来の静寂を取り戻していた。風が吹けば木々は揺れ、海は寄せて帰す小さな波を作り、どこからか運ばれた種が大地を灰色の植物で覆われる。そこに住まう生命はいつしかその地に根付き繁栄し、やがて滅ぶ。そうしたサイクルは永劫に続いていくのだろう。
簡単な魔物紹介
闇の影
魔力が循環されず海の底にたまったもの
新しい生命を生み出すのではなく、魔力そのものに命が宿った。
海は子を育む胎となり、やがて人を人ならざる者にする。
命を刈り取ることを躊躇えば、物言わぬ躯になるだろう。
人は皆、狩人たりえるからだ。




