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敗北こそが魔王の誉れ

最近の悪は「私には私なりの信念が~」とか「これでやっと逝ける・・・」みないなのが多いってなんか違う気がするのですよね。

それこそ「ギー〇・ハ〇ード」(落下芸人)や「ベ〇」(バイト)みたいな分かりやすい悪って言うのが減っているのも原因かと思いました。

でも好きな悪役は天野〇リュウ〇イ

歴史にも残らないほど昔に起きた天界と魔界との戦いから数千年。当時の大天使と魔王の間にできた条約により相互不可侵という取り決めが生まれた。その後、両界の発展を目的とし人間を作り境界線とすることにした。天から人を守護り育てる天使は知恵、勇気、節制、正義、信仰、希望、愛を与え、地の底から人を襲い育てる魔物は高慢、貪欲、嫉妬、憤怒、色欲、貪食、怠惰を与えた。それからというもの人間は驚くべき速度で知識を蓄え新しいのものを生み出し進化していくのである。

与えすぎた故、とてつもなく愚かしい存在へと至ってしまった人間。だがそれも愛おしい。






「あれが魔王の城・・・」

「とても禍々しい力を感じる。」

「なぁにビビってんだよ。あんなもん、僧侶様にとっちゃ屁でもないくせによ。」

「あなたはもう少し緊張感を持つべきですよ。」


先頭に立つ剣と盾を持ったこげ茶の髪の男がマントを靡かせている。その後ろには白をベースに金色の留め具がされているフードを身に着けた僧侶。赤いビキニアーマーをつけた紫髪の胸の大きな女剣士。一番後ろには大きな三角帽と緑色のドレスの似合うオレンジ色の髪の魔法使い。


「みんな。これが最後の戦いだ。魔王を倒して必ず帰るんだ!行くぞ!!!」


勇者の合図で一斉に眼下の魔物の群れに襲い掛かる4人の戦士。各々がまさに一騎当千。下級、上級問わず数多の魔物が一撃のうちに倒されいく。勇者の振るう剣はオークやミノタウロスといった巨大な魔物を両断。女剣士の剛剣は堅牢なゴーレムの外殻と核となるコアを砕き、その一撃の余波により周囲の魔物は千切れ飛んでいく。魔法使いと僧侶は互いに協力して魔物を次々と薙ぎ払っていく。僧侶が祈りを捧げ二人の周囲に強力な聖魔法の結界を生み出すと、魔法使いの詠唱が必要となる高威力の魔法があたり一面に広がる。巨大な火柱が何本も並び、それぞれが竜巻のように回転しながらその威力を際限なく増していく。

四人の戦闘は局地的な天変地異が起きたようにも見える光景であった。


―――――パチパチパチパチ


あたり一面に魔物の亡骸が転がる最中、空から響く乾いた拍手。

いまだに数も勢いも収まることを知らない魔物たちは一斉に動きを止め、次々とこの場を去っていった。


「勇者とその仲間たちよ。よくぞここまでたどり着いた。」


白い肌と対照的な黒く長い髪と全身を覆う甲冑。紫のマントが靡くたびに内側の赤が目立つ。ゆっくりと上空から降り立つ魔王に勇者たちは武器を構えなおし警戒を続ける。


「さて、勇者よ。かつて貴様に問うたな。私に仕えれば望むものを与えよう。と、その答えを聞かせてもらおうか。」


「確かに俺はお前に一度は誘われた。魔王の膨大な力に憧れたこともあった―――」


「なら・・・」


「―――でも今は違う!俺には仲間がいる!帰る場所がある!お前なんかに屈するわけにはいかないんだ!!!」


勇者は答えるのと同時に魔力を乗せた斬撃を飛ばした。


轟音と共に地面を抉りながら突っ込んでくる一撃は魔王に直撃。マントを翻し防御をするが破魔の力が宿る勇者の剣によってマントの右半分が焼け落ちる。


「破魔の剣を手にしていたか・・・なるほど、私の精鋭の部下が倒されたのもよくわかる。然らば本気で相手をしてやろう。」


魔王が手を伸ばすと地面に闇の穴が出現し、そこから禍々しい剣が出てくる。


「あ、あれは、魔剣ダーインスレイヴ!!?」


「知っているのか賢者!」


「はい。あの剣はかつての天魔大戦の時に多くの神様を葬ったとされる一本。穢れた神秘の力を蓄えたそれは勇者様の持つ破魔の剣と対極に位置するものです。」


「よもやこいつを使うとは思わなかったぞ。さあ来い!全力を持って貴様らを滅ぼし、人間界をこの手にしてくれよう!!」


「そんなことさせるか!」

「ああ!お前に殺された者たちの仇の為に!」

「待ってくれている皆のために!」

「まだ見ぬ明日を取り戻すために!!」


「「「「負けられない!!!」」」」


勇者たち四人の思いと力が一つとなり対魔の剣が見た事の無いような光を放つ。


「ま、まさか!ここにきて目覚めたというのか!」


「うおおおおおおおおおおおお!!」


溢れ出る力のままに勇者は駆け出し、魔王に斬りかかる。

賢者の魔法によってその身を強化した一撃は真の力に目覚めた対魔の剣の力の恩恵を受け通常よりも遥かに強力なものとなり魔剣を徐々に押し返している。


「ぬうぅ・・・・舐めるな!!」


対する魔王は底なしとも思える魔力を上乗せした腕力にものを言わせ、対魔の剣ごと勇者を弾き飛ばす。だが、それこそが狙いだった。弾き飛ばされた勇者の陰から女剣士の鋭い一撃が跳び込んでくる。とっさに守りの体勢ををとるも魔王の足元に複雑な魔方陣が展開される。


「こ、これは!!」


「今だ!」

「はい!ヴォルカニック・ガイア!!!」


「な、なにいいいいいいいいいい!!」


女剣士の合図と共に魔法使いが唱えた最上級魔法が魔王を包み込む。巨大な溶岩で出来た火柱が魔王を守っていたマントを消滅させ、鎧を徐々に溶かしていく。


「まだだ・・・まだ終わらんよ!!グアッ!!」


魔力による力業でヴォルカニック・ガイアを打ち消すと同時に女剣士の一撃が魔王の左腕に突き刺さる。貫通こそすれど、切断までは至らず女剣士は武器と引き換えに魔王の片腕を封じることに成功した。


「おのれ・・・おのれ、人間ども・・・」


魔王は勇者の対魔の剣から伸びる光の柱を見て叫びだした。


「覚えておけ!光ある所に闇は生まれる!私は滅びぬ!何度でも蘇る!貴様らがいない世界を楽しみにしているぞ勇者よ!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!天魔封殺剣!!!!!」


「全ての魔物に栄光あれえええええええええええええええええええええ!!!!」


全てを飲み込むような光に包まれながら魔王は散り散りになり消滅した。


「勇者様。まもなく魔界は消滅します。はやく人間界に戻りましょう!」

「あ、ああ・・・」

「さあ、早く!!」


魔王の底なしの魔力が肉体の消滅と共に暴走しようとしている。それにいち早く気が付いた魔法使いは『門』(ゲート)の魔法で人間界との道を作り出した。そこを潜るとき、勇者は地面に刺さった『魔剣ダーインスレイヴ』を一目見て「さよなら。魔王。」と一言つぶやき去っていった。





それからというもの魔界と人間界をつなぐ門はほぼ完全に閉ざされた。その「ほぼ」というのはこの戦いによって荒れた土地を復元するために人間と魔物。種族の壁を越えた復旧がされていたからである。かつてはいがみ合いの果てに命のやり取りをしていた者同士ではあったが、今はこうして手を取り合っている。いつの日か再び魔王が復活することでこの平穏が崩れるかもしれない。だがこうして今を生きる人にはその日をできるだけ長く、永遠と思えるくらいに長く先の話にしてほしい。
















「魔王様。此度の戦い。お疲れ様でございます。」


杖を突いた小柄の老人は目の前に鎮座する禍々しい玉座に腰掛ける若そうな風貌な男性に頭を下げつつ労いの声を掛けた。


「面を上げよ魔老人。お前の爆破演出には毎度のことながら驚かされる。だが流石にあれだけの規模で爆破するのはやりすぎだ。思わず私も結界の強化に加わるほどであったぞ。」


「ふぇっふぇっふぇっ、ですがそのワシの魔法を咄嗟の強化魔法だけで抑え込む魔王様も人のこと言えませぬ。」


「そう褒めるな。お前の演出には毎回助かっているのも事実だ。私ができるのは力押しでの一点突破ぐらい。高位の魔法に関しては未だに詠唱が必要な程に未熟なのだからな。」


「安心なされよ。魔王様の実力ならば直ぐにでも御父上と同じレベルになれます。」


魔物。特に魔王に関してはその寿命というのがとてつもなく長いため、人間でいうところの150年ほどを「直ぐ」という節が多々存在する。なお、魔物の寿命は種族によって文字通り天と地の差があるため一方的な種族の常識を当てはめてはいけない。


魔王と魔老人の談笑の最中、王の間の扉が開かれ黒のワンピース、フリルの付いた白いエプロンを組み合わせたエプロンドレスに、同じく白いフリルの付いたカチューシャといった王道メイド服を着こなした糸目の女性が入室してきた。


「魔王様。魔老人様。お食事の用意が整いました。本日はここでお召し上がりになりますか?」


「おお、もうそんな時間だったか。この際だからアークにも聞いておこう。」


アークと呼ばれる彼女は八本の節足をカタカタと動かしながら玉座へと近づき首を垂れる。


「魔王様。いかなる御用でしょうか。このアーク。いかなる要望にもお答えいたします。」


アークは股間部分を境界線に上半身は人間、下半身が蜘蛛のアラクネ。彼女は4本の前足を折りたたみお辞儀をする。アラクネ仕様の特注メイド服がゆっくりと沈むと魔王は手を前に掲げた。


「別にどうもしない。ただ此度の演出について聞きたいことがある。」


「魔王様の爆発演出のことでしょうか?」


「察しが良くて助かる。地盤の方を担当していたアラクネ部隊からはどうだった。打ち合わせの時より爆発が大きかったあろう。やりすぎだと思わないか?」


アークは顎に手を当てて少し考えてからこう答えた。


「そうですね。確かに少々やり過ぎな点はございました。人間界にいる同胞からも爆発の余波でパニックになった地域があると連絡を受けております。現に私たちも粘性のある糸を大量に生産することになり、かなりの消耗になった者たちが数多く出ております。糸が出せさせなくなるだけで、遅れが生じる作業も少なくはありません。できるなら予定通りの爆発でお願いしたですね。」


「ほら見ろ!やはり魔老人のやりすぎではないか!!」


「ですが――――これも魔老人様が魔王様を信用して行ったことと思われます。なのでそう怒らないでくださいませ。お二人が喧嘩をしていると私は悲しくなります。」


オヨヨ・・・と表情だけでも泣いて見せるアークを見る二人は何となくお互いに何も言えるような雰囲気ではなくなり言い争いになりそうな空気は自然消滅した。女の涙は流せばいいというものではないが、時と場所を選べば物凄い力となりえるが乱発しすぎるのも考え物である。

魔王は一度玉座に腰掛け足を組みアークに尋ねた。


「アークよ。お前は先ほど『食事の準備ができた』と申したな。それに『部屋で召し上がりますか?』と、我が行かずしてこの場を仕切れるものは居るまい。」


「ええ。ご承知の上で申し上げました。お気に召しませんでしたら、なんなりと罰を・・・」


アークは頬を赤らめて、メイド服を肩が露出するまでズリ下げた。基本的にアラクネ種は日陰にいることが多いため肌が白い。こうして王の間に入ることのできる数少ない魔物とはいえどアークも例にもれず肌白である。彼女の肩と胸元にはうっすらを赤色が差し込み、その大きな胸は両腕で支えているとは、今にも外気に晒されてしまうほど。まるで『魅了』(チャーム)を振りまく娼婦かサキュバスのようである。


「やれやれ。男が欲しいのであれば人間界に行けばいい。お前ほどの女なら入れ食い状態だろう。」


「ふふ。私がこうして肌をお見せするのは魔王様くらいのものです。」


「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。」


まるで毎度のことのように軽くあしらう魔王は玉座から立ち上がり指を鳴らす。すると、その姿は禍々しい鎧甲冑を身に纏ったではないか!マントを翻しながら王の間の扉を魔力の飛ばしで勢いよく開くと赤い絨毯の惹かれた廊下をアークと魔老人を連れて歩き出した。


「これから戦後処理の時間だ。」






魔力チャージ3回!

フリーエントリー!

ノーオプション魔方陣バトル!

チャージ!イン!!!

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