あるゲームミュージック
久々のゲームエッセイですが……ちょっと内容がニッチ過ぎて、誰にもとどかないかもしれません。
その際はご容赦を。
一時期、僕はテレビやネットの騒がしさに嫌気がさして、耳に優しい音楽を求め、中古ショップで安いCDを大量に仕入れていました。
だいたいはイージーリスニング、あとはクラシックなんですが、その中で、ときどきハッとさせられる、そしてものすごく癒やされる曲があります。
……特にびっくりするような話でもないんですが、「まったくの無音」でいる時より、音楽をかけている時の方が「静寂」を感じられる曲ってありますよね。
これ、どうやって作ったんだ? みたいな。
昔はそれほど気にならなかったんですが、創作を志すようになってから、僕は音楽を聴くときは「これが自分に作れるか?」と思いながら聴くようにしています。(どんだけ無謀なんだよ)
そのお陰でクラシックは昔以上に楽しめるようになったんですが、どうしてもびっくりさせられるのが、「静寂を生み出す曲」です。
文章は、というか表現は、たいていが足し算で、カラフルな魅力や交錯するストーリー、それともシンプルさやダイナミックさで盛り上げるものだと思うんですが、”積み上げながらマイナスの状態を構築していく”という静寂技が、とても羨ましいんですよね……
文章の大家でも、落ち葉を踏む足音だけが克明に聞こえてくるような表現や、削りに削った行動描写で”無口な人物を雄弁に語らせる行間”などはあるんですが、やっぱり音楽の「ハッ」とさせられる力はまた別というか……
……とまあ、ここまで持ち上げた所で、かなり強引ではありますが、ゲームの紹介に入らせて頂きます。
ーーちょっとねじ込み過ぎなのは先刻承知!
幾多の名曲、奇曲はこの世に生まれてきましたが、もちろん遊戯の世界にも、その「沈黙の業」は存在しております。
というか、もう語るほどでもないかもしれませんが、僕にとって他のゲームを取り上げてきたのにこれを書かないという選択肢がない!
その名は、(長くゲームをやってきた者なら誰もが聞いたことのある)『ヴァルキリー・プロファイル!』
そして『プロファイル2』!!
ーーこれが素晴らしかったのは、まずシステムですよね。
シリーズ「1」…攻略本無しには(当時、まだ攻略サイトなどという概念はなかった)ほぼ頓挫する、鬼のようなシナリオだったにも関わらず「これは、こういうゲームなんだ!」と分かった時には、鳥肌が立つような快感が味わえるソフトでした。
あまりにそのシステムが研ぎ澄まされているため、”2週目”という行為に意味がなくなってしまうクオリティです。
(セラフィック=ゲートという高レベルダンジョンは、クリア後に登場しますが)
こちらも色々語りたいことはあるんですがーーBOSSの音楽がめちゃ良くて、そこに主人公レナスの「死の! 先を行く者たちよ!!」の声がカブるとことか、大魔法詠唱とかーー今回は静寂の音楽ということで、『2』を紹介したいと思います。
作曲は桜庭統さん。
……ご存じの方も多いかもしれません。
そして問題の場所が、何とただのマップシーンなんですよね。
『1』で凄く評価が高かっただけに、期待値が尋常じゃないレベルに達してたんですが、僕はそのマップシーンが出現した所で、もうメロメロになりましたね……
ゲーム自体は、スキルシステムが大分ややこしくなってて、防具を複雑に付け替えないと有利に進められないんですが、その面倒臭さを差っ引いても、良作ではないかと思います。
……しかしとにかく、ストーリーを進行させていて、パッと地図が広がる瞬間があるんですが、そこで出てくるのはただのマップではないんですよ。
ミニチュアみたいにちゃんと世界が描かれていて、高山には雪が降ったり、深い森には雨が降り続いていたり、雷が閃いたりする。
そこに、まるで時間が止まったような「静寂の音楽」が流れて、もう得も言われない情景描写になってるんですよね……
大人になってからクリアして、そのマップ画面と、ラスト辺りの”アスガルド”の草原で、呆然と酒を飲んでいたこともありましたw
……まあ、未プレイで今やるにしてはめんどくさいゲームだし(何しろ取っつきにくい)、「ぜひ体感してみて!」とも言えませんが、自宅にPS2があって、”中古ゲームコーナーで見かけた。その上、自分はいま暇すぎる”くらい縁がある方なら、是非お勧めしたいと思います。
微妙な推しで、申しわけありません……
けど、癒される音楽……情報がどんなにあふれても、それだけは増え続けてほしいなあ……
ありがとうございました!
追記ーー
プロファイル『1』の、戦女神レナスによる
「死の、先を行く者たちよ!」
という言葉は、エインフェリア(エインヘリャル)ーー北欧神話における《ヴァルハラ》に集められる勇者ーーを鼓舞する言葉です。
このゲームは、それぞれの物語を携えた主人公を、神が選定して戦いに挑んでいく、北欧神話好きにはそれだけでクラッとくる内容なんですな……。