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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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75話:兄弟の賭け

 ゴウと牙狗(ガク)、レイと華依(カイ)、ゲンと名無(ナム)。初代と今代の四天王が次々とぶつかる中、最後に当たったのは砕鬼(サイキ)とリゥだった。


 巨人族の族長である砕鬼(サイキ)の体は確かに大きいが、それでも凡そ二メートルほど。巨人と言うよりは、大男という表現の方が合っている。


「――俺は巨人族に会ったことねぇけど、ここの世界の巨人族はこんなに小さいのか? それとも、()()()の世界が大きく描かれてただけか?」


 自分より大きい砕鬼(サイキ)を、宙に浮いて上から見下ろすリゥ。そんなリゥを下から見上げた砕鬼(サイキ)は、無表情のまま拳を突き上げる。


「おぉっと……見下ろされるのが嫌なのか。まぁ、俺もお前と遊んでる暇はねぇ。さっさと片付けさせてもらう――ぜっ!!」


 突き上げられた拳を容易く躱し、もう一度攻撃をしようとした砕鬼(サイキ)の首に蹴りを放つリゥ。しかし、その程度で怯むほど巨人族はヤワではない。首への攻撃もお構い無しと、再び拳を突き上げる。


「ワンパターンの攻撃ほど、避けやすいものはないな。さっさと勝負を決め――て!?」


 直線的に突き出される拳を、喋りながら必要最低限の動きで避けるリゥ。そんな中で五発ほど攻撃を躱した時、リゥの左肩に砕鬼(サイキ)の拳が当たる。


「動きは変わらねぇ……俺の動きも変わらねぇ……なんで当たった?」


 左肩を右手で庇い、目を細めるリゥ。砕鬼(サイキ)の拳が届かないであろうギリギリの距離まで下がり、今度はより一層動きに目を配るリゥ。

 そして微動だにしない砕鬼(サイキ)の足元を確認していると、今度は顔面に飛んでくる拳を察知。届かない距離まで下がったはずのリゥだが、直感的にさらに後退し回避の行動を執った。


「今、避け無きゃ間違いなく当たってただろ……なんだコイツ」


「――兄貴!」


 再び距離を取ったところで目を細めるリゥに、後ろから呼び掛ける声。その呼び方と声から、リゥは振り向かずとも声の主が分かる。そして視線は砕鬼(サイキ)に向けたまま、後ろから自分を呼び掛ける人物と話を始める。


「どうした、レツ」


「シロさんが、そいつがそのサイズのままなのは有り得ないって!」


  「――! そういうことか!」


 シロからの伝言を受け、急いでリゥの所に駆けつけたレツ。そんなレツの報告に、リゥはハッと閃く。そして後ろにいるレツの隣まで下がると、その位置から砕鬼(サイキ)を再び見下ろす。


「やっぱりそうか。段々と変わっていく異様な間合いは、お前がどんどん大きくなってるからだな」


 最初と同じ角度で見下ろした時の唯一の相違点は、地面からの高さだ。地面から足までの高さが、初めと比べてかなり高くなっている。

 砕鬼(サイキ)の体が大きくなるに連れ、拳が大きくなり腕のリーチも長くなっていたのだ。


「サンキューな、レツ。俺はもう大丈夫だと、シロに伝えといてくれ」


「いや、兄貴。伝言はそれだけじゃないんだ」


「ん? まだ何かあるのか?」


 砕鬼(サイキ)に目を向けたまま、隣のレツと話すリゥ。しかし、伝言がそれだけではないというレツの言葉に、リゥは視線を砕鬼(サイキ)からレツへと移す。


「ここの戦いは、俺様たちがやる! 兄貴には他に、もっと重要な役目があるんだって、シロさんが言ってたぜ」


「俺様……たち?」


 ビシッと親指で自分を指して笑うレツの言葉に、違和感を覚えたリゥは僅かに首を傾げる。しかしそんな違和感も、レツの後ろを見れば直ぐに消える。

 綺麗な歯を見せて笑うレツの後ろには、十二人衆の全員が勢揃いしていた。


「ここの戦いは僕たちに任せて、お兄ちゃんはアキラくんたちの所に行ってあげて」


「彼らには、兄さんが必要なはずですよ」


「お兄は皆のお兄だから、皆に必要なのねー!」


「お前ら……」


 レツの後ろに勢揃いしていた十二人衆に、リゥは一瞬呆気に取られる。

 レツとの会話の最中にも砕鬼(サイキ)から目線を反らしていなかったリゥの意識が、完全に砕鬼(サイキ)から離れた瞬間。それを狙っていたかのように、風を切る拳がリゥの方へと勢いよく迫る。


「――リーに、危ない!!」


「おぁッ!? ――お?」


 鼓膜を劈くようなネイの声で、自分に迫る拳を察知したリゥ。しかし、呆気にとられていたリゥの反応よりも砕鬼(サイキ)の攻撃速度の方が早い。反射的に腕が出るが、やはり回避は間に合わない。

 直撃は必至だと思いある程度の負傷を覚悟したリゥだが、覚悟した衝撃は一秒待っても一向に来ない。

 改めて落ち着き直して確認すると、既のところで砕鬼(サイキ)の拳が止まっている。


「ネイ……と、ネスか?」


 よく見ると、リゥの目の前にある拳にはその腕から蔦のようなものが巻き付けられている。そしてさらに何か見えない力に押さえられているように、砕鬼(サイキ)の腕が小刻みに動いていた。


「ほら、ここは俺たちに任せて、はやくアキラくんたちのとこ行きなよ!」


「それとも、オレらだけじゃ不安だってか?」


「リゥ兄さんがいない間に、私たちも実力を上げてるんですよ」


「今度はぼくたちを心配するんじゃなくてさ、」


「オイラたちを信じて欲しいのなー!」


「兄ちゃんが心配するべきなのは、アキラくんたちやね!」


「にぃに、早くしないと皆待ってるでしよ!」


 十二人衆である彼らに太刀打ちできる相手かどうかは、予想でしか出来ない。そしてその予想には、もう少しじっくりと考えるための時間が必要だ。

 しかし、ネイとネスが砕鬼(サイキ)の動きを止めていられるのも、残り数秒が限度。早く決断して早く行動をしなければ、砕鬼(サイキ)による次の一手が来る。

 自分の取るべき行動が何なのか、普段のリゥなら少しだけ考えていたはずだ。しかし、ここに来る前に、シムから言われた言葉がある。


『自身の直感を信じる――』


 そしてさらに、リゥが無の空間で導き出した答え。何が正解で、何が正義で、何が義務で、何が役目で、何が使命なのか。

『それは全て――、』


「――『俺がやりたいと思うこと』」


 アキラを奪われ暴走した後、俺が放り込まれた無の空間。リゥに怒りを与えないあの無の空間で、既に答えは出していた。

 あの空間で出した答えは、正解も正義も義務も役目も指名も、その全てが自分のやりたいと思うこと。


「なら、俺がやりたいことはこれじゃァねぇな。分かった、ここはお前らに任せた。――でも、任せたからには何がなんでも帰って来ること。一人でも欠けてたら、俺は自分で自分の首を裂く」


「――ハッ、上等じゃねぇか! 首でも心臓でもなんでも賭けてろ。但し、オレらが全員で戻った時は、アニキは全員の要望に応えてもらうぜ?」


 十二人衆の面々と向かい合うリゥの目の前に、たった一人、金髪の少年――イルが指を指しながら仁王立ちで構える。


「ああ、いいとも。どうせイルは勝負だろ? 何百試合でも何千試合でもしてやる」


「よぉし。なら、アニキは早く向こうに行ってやれ。もう、ここはオレたちだけで十分だ」


 堂々としたリゥの答えに、くるりと踵を返しリゥに背を向けるイル。そんなイルに続き、十二人衆の全員がイルの向いている方――砕鬼(サイキ)へと目を向ける。


「分かった、任せたぞ」


「おう!」


 イルの頼もしい返事を聞くと、リゥはその場からシロたちのいるであろう方向へと跳躍。そのまま風を切るようにして、一直線に飛んで行く。


「――やっぱり、頼もしくなってんな」


 そう小さく呟き、リゥは少しだけ口角を上げた。

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