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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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1話:異世界の歓迎

「うわぁ……なにここ! すごー!!」


 子供のように、大声ではしゃぐ少年。初めて見た光景に目を輝かせて走るその少年は、龍翔と共に異世界行きを決意した晟だ。


 最初は本当に連れてきてもいいものかとも思ったが、ここでこのはしゃぎ様であれば向こうでも退屈はしないだろう。そう感じた龍翔は落ち着いた表情で笑っている。


「ほら、あんまり先行くなよー? 一本道だから迷わないとは思うけど、晟はゴウと同じでかなり目にそそっかしいからなー」


「えー、なにそれー!」

「ホントだよ! なンだそれ!」


 先走る晟と、その後ろを歩いていたゴウ。そして龍翔は、前を行く二人に後ろから煽りを入れる。煽られた二人は口を尖らせ、そんな二人に龍翔は「悪ぃ悪ぃ」と笑いながら謝る。


 今四人が歩いているのは、龍翔たちの住んでいた世界とゴウたちの住んでいる世界を結ぶ、通称『シークレットロード』と呼ばれる道だ。本来は、四天王や天使などの高い階級の持ち主でなければ使用することを許されない道であり、殆どの人がその存在すら知らないまま一生を終えることから、その名がついたとされる。


「そう言えば、こんな道今まで見たこと無かったけどなんで急にできたの?」


「そりゃまぁ、こんな道がいつでもあったら誰かが迷い込んだりして騒ぎになるからな。普段は見えないし、そもそも存在すらしてないよ」


「俺たち四天王や天使、他にも何人か通れるけど、通れる奴はかなり限られてる上に、そもそも俺たちでさえ滅多に通らない道だかンな」


 晟の質問に龍翔とゴウが答えるが、二人の説明には大事な部分が抜けている。晟の元の疑問に対する明確な答えを提示し忘れた二人をフォローするように、更に後ろからクロが補足の説明を入れる。


「ですから、必要な時だけこの道を作るのですよ。因みに今は安全ですが、十数年前に何者かがこの道を無理矢理にこじ開けようとしました。そして時空が歪み、四天王の皆さんが修復のために立ち上がったのです。その仕事の最中に、リゥ様が命を落としてしまったわけですね」


「時空の歪みって、そういう事だったんだ。結構危ないこととかしてきたんだね……あ、でもさ? 龍翔くんとかゴウさんも、やっぱり凄かったってこと?」


 クロの話を聞いて、二人の凄さを改めて認識する晟。補足ついでに話されたその事実に目を輝かせた晟の言葉に、龍翔とゴウは「フフン」と鼻を鳴らしドヤ顔。行動自体は幼い二人だが、その実力は本物らしい。


「まぁ、四天王の中でそんな風に無茶をしたりするのも、お二人だけですけどね」


「おい!」


 晟に褒められ優越感を満喫していた二人に、横槍を入れるクロ。そんなクロに、二人は声を揃えて突っ込む。


「そう言えば、残りの二人の四天王ってどういう人なの?」


「ん? そうだなぁ……『レイ』はかなり真面目で、いつでも落ち着いてる感じだ。力も勿論あるけど、それ以上に頭の良さが強みだな。四天王随一の策士で、個人戦よりも集団戦とかで力を発揮するタイプだ。ゴウとは対になる存在かな」


「ンでもって『ゲン』のやつは口数が少ないな。ポーカーフェイスというか、感情を表に出さない。で、思考も感情もイマイチ分かンねぇな。でも実力はかなりだし、直感が働くのか人の裏をかくのが得意だな。相性とかで不利になる事はまず無いし、誰もが苦手な戦闘タイプだ」


 残る二人の四天王であり、レイとゲンと呼ばれた二人の説明は、龍翔やゴウとは真逆なものだ。


「と、そうやって話してるともうすぐ着くぜ。あの光を潜れば俺たちの世界だ」


 そう言ってゴウが指を指した前方を見ると、出口らしき光が差し込んでいるのが見える。


「この光景も久々だな。全然変わってねぇ」


「う、わぁ……!! すごーい!」


 久々の帰還で目の前の故郷に懐かしむ龍翔と、新たな世界に目を輝かせる晟。

 今ここに、龍翔、晟、ゴウ、クロの四人が異世界に到着する。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「――お帰りなさいませ。お待ちしておりました」


 そう言って四人を出迎えたのは顔の右半分を長い白い前髪で隠し、肌の露出を限りなく抑えた白い服で全身を覆う、クロとは瓜二つの反面対照的な印象を齎す女性だ。


「少々遅くなりました。お姉様」


「えっと……」


「こちらの方が新しく来ると言っていた方ですね。自己紹介が遅れました。私は『場』を司る天使、シロと申します」


 そう言ってシロと名乗った女性は、洗練された立ち振る舞いで戸惑う晟に丁寧な自己紹介をする。

 会話と自己紹介からして、初めて会った時に言っていたもう一人の天使で間違いないだろう。そして、どうやらクロの姉に当たる存在らしい。


「待たせて悪かったな、シロ」


「いえ、とんでもございません。――リゥ様もお久しぶりです。お帰りなさいませ」


「おう、久しぶり。ただいま」


 そう言って四人全員と言葉を交わしたシロは、くるりと踵を返して龍翔ら四人を先導する。


「それでは早速ですが、宮廷にご案内します。皆さんもお揃いでお待ちですので、急ぎましょう」


「そしたら、私はこの道を消して向こうの時間を動かしてから行きますので。後程合流させていただきます」


 そう言って軽くお辞儀をしてから、一人シークレットロードに戻るクロ。そんなクロに手を振り、別れた三人はシロの後を歩き宮廷と呼ばれる場所へ向かう。


「さて、到着致しました。奥の食堂で皆様お待ちです。私はエントランスで皆さんが戻られたことを伝えてからクロと合流して行きますので、お先に向かっていてください」


「おう、わかった。ありがとな。――ンじゃ行くか」


 そう言ってシロは龍翔達と別の方向へ向かい、三人は宮廷の奥へと進む。


「ここが宮廷? めっちゃ広いね! 隠れんぼとかしたら楽しそー!」


「かくれンぼ? ってなンだ?」


 辺りをキョロキョロしながら楽しそうにはしゃぎ子供っぽい想像を膨らませる晟の言葉に、首を傾げるゴウ。そして晟が隠れんぼの説明をすると、「おお、楽しそうじゃンか! 今度やろーぜ!」などと言って超乗り気な様子を見せる。こちらもやはり子供っぽい。


 そんな話をしながら歩いていると、目の前に一人の男が見えた。その男は龍翔たちに気づくと深々と頭を下げて、再び顔を上げて龍翔たちに声をかける。


「ゴウ様にリゥ様、そしてお連れ様ですね。お話は聞き賜っております。皆様この奥でお待ちですので、御三方ともお揃いでどうぞ」


「おう、ありがとな。行くぜ」


「う、うん」


 大きな扉を目前にし、僅かに緊張し始める晟。そんな晟の手を龍翔が無言で握り優しく微笑むと、そんな龍翔を見て晟の緊張は次第に和らいでいった。

 そしてゴウが扉を開けると、扉の向こうには沢山のテーブルに山盛りの料理が数多く並んでいて、部屋の中には十数人の人が集まっていた。


「――お戻りになられたようですね。大変お待ちしておりました」


 そう言って声をかけるのは、食堂の最奥に座る白髪の老人だ。その老人に向かい、龍翔は一歩前に足を踏み出してスッと片膝を突き頭を下げた。


「四天王リゥ、ただ今戻りました」


「よく戻って来てくれましたね。こうして無事に再会出来たこと、大変喜ばしく思います。そして御身に辛い思いをさせてしまったこと、深く謝罪致します。本当に申し訳ありませんでした。しかし、御身のお陰でその後時空の歪みはしっかり修復することが出来た。それについては、心から感謝を。本当に、ありがとう」


「勿体ないお言葉。あの時の事故は全て私の能力不足によるものです。こちらこそ、大変なご迷惑をおかけました。そして、再びこの地に呼び戻して頂き、ありがとうございます」


 己をリゥと名乗り、堂々とした態度で老人と話す龍翔。その洗練された姿に、晟は確かに四天王と呼ばれるだけの風格を感じた。

 晟を優先し、向こうの世界に残ろうとした時の龍翔の目も確かなものではあったが、やはりそれはこの世界に来たくないからではなかったのだ。本心では、こっちへの帰還を望んでいたはず。しかし龍翔は、それよりも晟を優先した。それはやはり晟にとって、とても嬉しい事実だった。


「どうぞ、お好きなところへご移動下さい」


 龍翔と老人の会話が終わると、三人はテーブルの前に移動する。そしてその直後にクロとシロの二人も合流し、全員が食堂に揃った確認した後に奥にいる老人が目の前のグラスを持って口を開く。


「さて、皆様お集まり頂けましたね。それでは四天王リゥの無事な帰還を祝い、乾杯!」


「乾杯!!」


 老人の乾杯に合わせ、ワイワイとした楽しい立食が始まる。勿論中心は久々に戻ってきた龍翔と、初めて来た晟の二人だ。

 そしてその立食は、今までしてきた食事の中でもかなり楽しく有意義なものとなる。

 この世界に来て、本当によかったと思えるほどに。

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