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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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71話:禁じ手と覚悟

 炎の落雷(サンダーブレイズ)によってそこが見えないほど深い穴の開いた地面を覗き込み、軽く笑みを浮かべたゴウ。しかし、笑っていられたのも束の間。頭の中にピーンと言う電気のようなものが一瞬流れ、自分の方へ迫ってくる気配を察知。若干青ざめた顔で呆れたように苦笑し、顔に流れる冷や汗を拭う。


「倒せてないだけならまだしも、なンで増えちまうかなぁ……」


 呆れ顔で苦笑いし、熟々自分の悪運を呪うゴウ。

 ザッと音を立ててゴウの前に着地したのは、明らかにモブではない三人。そして、先の攻撃で仕留めたと思った牙狗(ガク)だ。


「クラフトの消費量に比べて、血液の損失が大きすぎンな……このままで持久戦は辛ぇし、かと言って一筋縄でも行かねぇ。ったく、どンな試練だよ」


 現に、ゴウの失血量は約五分の一。量にして約一リットル弱といったところだ。今は体内のクラフトをフル稼働させてなんとか止血をしているが、それでも相当なダメージを負っている。


 さらに、牙狗(ガク)と一緒に立つ三人は、直属幹部クラスの実力者。気配から読み取れる力量から、ゴウはそう読み取る。


「直属幹部一人でも若干骨なのに、それが三人と初代一人か……絶望的にも程があるだろってぇの……」


 蒼白な顔で呼吸を荒くし、若干フラフラとし始めるゴウ。今の状態で目の前の四人を相手にして勝てる可能性は、ほぼゼロに等しい。

 それこそ天変地異でも起きない限り、ゴウに勝機などない。


「――でもよォ、やっぱ負けらンねぇンだよ。初代と戦うのは、俺が絶対にやり遂げたかった夢だ。ンでもってそれが現実になったンなら、やっぱり勝たねぇと意味がねぇ」


 そう言って、全身にグッと力を込めるゴウ。絶望的な状況でも戦いを投げ出さず、再び戦闘の意志を表明。精神と五感を研ぎ澄ませ、相手の一挙手一投足どころか、呼吸や脈拍にも注意を払う。

 そして僅かな息遣いの変化を察知し、相手の動きを見る前にゴウの方から仕掛ける。


炎壊(ディストラクション)ッ!」


 ゴウが詠唱と共に想術を地面に向けて放ち、周囲の地面が地割れと隆起を起こす。地形の変化に直線的な攻撃が困難になった牙狗(ガク)らは、牙狗(ガク)が正面突破、他三人が左右と上から迂回しての攻撃を試みる。

 が、それこそがゴウの狙い。牙狗(ガク)以外の三人を迂回させることで、四人の同時攻撃を避ける。

 案の定牙狗(ガク)が真っ先に突き抜け、ゴウは一対一(サシ)で対峙する。


「――炎烈アクティビティフレイム!」


 正面から突き抜けて来た牙狗(ガク)に向けて、ゴウは対人戦で有効な殺傷能力の高い想術を放出。牙狗(ガク)の前進する速度と重なり、その二つが衝突するのは一瞬。

 反応と対処が追いつかなかった牙狗(ガク)は、正面からその攻撃を受ける。


「ッ、牙狗(ガク)様!? ――ぐぁっ!?」


 炎烈アクティビティフレイムを受けた牙狗(ガク)に、迂回していた三人が反応。視線を牙狗(ガク)に向けて呼び掛ける三人に、ゴウは一発ずつ想術を打ち込んだ。


「――まだ終わらねぇ! 炎爆(バースト)ッ!」


 体勢を崩した四人に向け、計四つの炎の玉を投擲。それらは各々の対象に命中(ヒット)した瞬間、対象を巻き込み爆発を起こす。炎壊(ディストラクション)などに比べれば規模は劣るが、それでもゼロ距離で直撃すればダメージはかなり入る。


 ――が、しかし。相手も邪陰郷の精鋭。そんな数回の攻撃で倒せるほど、簡単な相手ではない。たしかに傷を負い血を流しているが、どれもゴウの食らった傷よりは浅い。

 致命傷と呼ぶには程遠い傷を負っただけの四人は、即座に反撃の体勢をとる。


「くっ、そが! 四人はキツいってぇの!!」


 一斉に距離を詰めてくる四人に、ゴウは咄嗟に炎幕(フレイムカーテン)を展開。しかしそれすらも容易く突破され、ゴウの後退よりも速く距離を詰められる。


「――んなら、オレが手ぇ貸してやろーか」


 後退するゴウと、それを追う四人。その二つの間に割って入った一つの影。

 そしてその影はゴウに背を向け、牙狗(ガク)ら四人に腕を伸ばす。


 影は天に向けた手のひらを下から上へすくい上げるような動作でクイッと持ち上げる。

 そして――、


「――炎土壁(ハイウォール)


 突然現れた影の詠唱により、影の前――影と牙狗(ガク)らの間に、土の壁が形成。地面から直接持ち上げられたその土壁は、持ち上げられると同時に炎を纏わせていた。


「――土壁(ウォール)灼熱業火スコーチングヘルファイアの併せ技……二種属性の想術を同時にこなせるのは、ある人物とある野郎を覗いてレイとリゥぐらいしか出来ねぇと思ったが?」


「ある野郎、については察しがつくわ。んでもってある人物もまた同じ――。そのある人物が、オレだっつー話だな」


 目の前の光景に、一瞬呆気に取られたゴウ。しかしその状況をなんとか飲み込み、ゴウは瞬時に何が起きたかを把握する。

 そしてそんなゴウの言葉に、ゆっくりと振り返った影が白い歯を見せながらニカッと笑う。そしてその影の顔を見たゴウも、血だらけのその顔に笑みを浮かべた。


「俺の言いたいことは、なンでアンタがここにいるのか、ってことなンスけどね。攻撃用主属性使い――またの名を、究極の攻撃者アルティメットアタッカー。先代四天王、ゲキさん」


 ――そう。ゴウの前に立ち、たった今ゴウの窮地を救った人物。火と土の二属性想術を同時に行った男こそが、数十年前に引退し『不老』の術式を解かれた先代四天王。

 クロの術式を解かれた先代は、それ以降普通の人々と同じように歳をとり、今では体の年齢が九十程になっているはず。

しかし今の彼の風貌は、艶のある橙色の髪を逆立て、ゴウと似た派手な衣装を纏う。顔にも皺一つ作っておらず、容姿から喋り方までゴウたちが代替わりした当時と同じ状態で立っている。


「死ンだはずの初代がいたり、老いたはずの先代がピンピンしてたり、何がどうなってンだか……」


 目の前の不可思議な状況に、全く理解ができないゴウ。ただでさえ血が足りずに頭が回らないゴウとしては、これ以上疑問を増やしたくない。

 かと言って、割り切って話せる状況でもない。そんなゴウが求めるのは、ただ一つ。やはり、当人からの説明だ。


 ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀


 時は遡り、初代四天王の気配が現れた頃。聖陽郷では、防衛班のレイたちが、これまでの詳しい状況を優輝たちに一から教えていた。

 そしてリゥの話にさしかかろうとした際、突如として現れた巨大な気配にシロとクロが立ち上がる。


「姉様、この気配は……」


「え、ええ。間違いないでしょうね」


 突然立ち上がったシロとクロに、優輝たちは目を見開いて二人を見上げる。そしてレイも驚きこそはしたものの、少し遅れてそれを理解。二人に続きレイもゆっくり立ち上がり、お互いに顔を見合わせる。


「この気配……数も質も、かなり酷似しているね」


「はい。おそらく、レイ様の予想通りの存在かと」


「そう、か。それはマズいな。こっちにはそんな手段はないし、あるとすれば向こうだけ。敵と考えるのが妥当だろう」


「――まさか。いくら元主郷とは言え、禁じ手を使えば命が無いはず。さすがに、そこまでのことはしないと思いますが……」


 顎に手を当てて下を向くレイに、シロとクロは眉間に皺を寄せる。

 そんな三人の言動を見る優輝たちの顔が示すものは、全くの無理解。三人が何の話をしているのか、優輝たちには皆目見当もつかない。


「――優輝くん。僕たちは少々用事が出来た。これからリゥたちのところに行かなくては行けないのだが、僕ら聖陽郷の主戦力は全員向こうに出払うことになる。その間に何かあっては困るから、一緒に来てくれないか?」


「あ、え? えっと……龍翔くんたちが戦ってる……?ところに?」


 三人の話が理解出来ず首を傾げている優輝らは、突然話を自分たちの方に話を振られて少し戸惑う。しかし、戸惑いながらも聞いていた事柄を頭の中で整理し、なんとか話を理解しようとする。


「ああ。大丈夫、向こうに着いてからも、僕たちが責任をもって皆のことを保護する。どうかな?」


「龍翔くんが皆さんは信じられると言ってたので。それが、俺たちに必要なことなら……」


「そう。よっぽど、リゥは君たちから信頼されているんだね。幸せ者だ」


 リゥたちが邪陰郷の本拠地へ出発する前、優輝たちにここでの待機を伝え、何かあった時はレイたちに頼るようにとリゥは言っていた。自分が傍にいてあげられない分、他に頼れる相手を紹介していたのだ。

 勿論、リゥが眠っている二日間も何度か言葉を交わしていて、優輝たち自身もレイたちとはそこそこ話せるようになっていた。そこにリゥからの太鼓判が押されれば、優輝たちは彼らをしっかり信用出来る。

 そうしてレイたちについて行って外まで出たところで、クロだけが別方向に足を運ぶ。


「――姉様、レイ様。万が一に備え、私は先代様の元へ向かいます」


「分かりました。私も、その覚悟はしておきます」


「先代の元……って、クロ! まさか二人とも……!」


 頭を下げて礼をするクロに、シロは覚悟を決めたような顔で頷く。そんな二人の行動に、レイは焦ったように声をかける。


「向こうの禁じ手に抗うことが出来るのは、同じく禁じ手を所有する私たちだけです。それならば、私たちは最後まで、四天王の皆様に……聖陽郷の皆様に……お仕えしたい所存です。――どうか、ご理解の程を」


 腹の前に右手を置き、深々と頭を下げるクロ。そしてゆっくりと頭を上げると、サッと後ろを向いてそのまま飛び立つ。

 そんなクロの後をシロもレイも追わず、ただ静かに見送っていた。


「――レイ様。今のが、クロの覚悟です。そしてその覚悟は、私も同様に持っています。最後の最後まで尽力させて頂きます故、どうか」


「分かった。君たちは、意外と頑固な所がある。今更止めても聞かないだろう。なら、僕たちはそれを無駄にしない。――行こうか」


「はい」


 そう言って、シロの周りにレイと優輝たちが立つ。そしてそのまま光に包まれ、シロたちは場所をノーマントへと移す。

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